業績絶好調のカクヤス、低価格競争に巻き込まれない独自の戦略とは?

構成:西岡 克(フリーランスライター)
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さらなる利便性・配送効率の向上へ

 今後の課題は、営業利益率の引き上げだ。24年3月期の通期業績の見通しから算出した売上高営業利益率は2.2%と、ほかの小売業に比べるとやや見劣りする。

 この主因は、飲食的向けの売上高が多くを占めることにある。同社は店舗や小型出荷倉庫などエリア内に拠点を設けて、そこに配送人員を配置。受注した商品を自社スタッフによる物流網に乗せて配送するというビジネスモデルであるため、販管費(販売費および一般管理費)のうち、売上高や販売数量にかかわらず発生する固定費が多くのウエートを占めている。

 そこで人員の確保や設備の整備を通じて、現在はお客の要求に十分に応えられていない時間帯の配達枠を新たに設定することで、サービスレベルをさらに向上させ、売上を高めるとともに、利便性の向上によって非価格競争力を強める。また前述のPBの強化も合わせて、売上総利益率を引き上げ、営業利益率の向上に結び付けたい考えだ。

カクヤスグループでは1店当たり半径約1.2㎞圏内の顧客に商品を配送している

 配送効率もさらに高める。「飲食店や家庭までの距離を短くすることが効率化の要だ」(大谷課長)として、繁華街を中心に小型出荷倉庫を増設している。これは主に個人飲食店向けだが、家庭にも一部宅配する。21年3月末に32カ所だった小型出荷倉庫は昨年12月末には60カ所に倍増した。今年も浜松町、神戸、東新宿、下北沢に新設した。

 家庭向け配送では、配送員が持つハンディターミナルの補助システムとして同社オリジナルの「配達割り振りツール」を23年11月から試験的に導入した。従来は「毎日配達するメンバーの職人芸」だった配達ルートの設定を一方通行なども識別して最適化し、指示してくれる。今後は建物構造や建物への入り方なども考慮される機能を加える。

 そのほか自社アプリやEC(電子商取引)のUI(ユーザーインターフェース)/UX(ユーザーエクスペリエンス)の改善も検討しているという。

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