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第84回 ショッピングセンターは全て単館SCであるべき理由

単館ショッピングセンター(SC)とは、1企業1SC、1つのSCを1つの企業が所有、管理運営しているSCのことを言う。言い換えると1つの企業が複数のSCを保有したり、同一名称で複数のSCを展開したりせず、1つのSCを生業的に運営する経営形態である。単館SCについては本連載75回で取り上げたが、その時とは違った視点で、それ以外のSCについて解説したい。

Explora_2005/istock

コロナ禍をむしろチャンスに変えた単館SC

 単館SCではコロナ禍をピンチではなく、チャンスと変えたところも少なくない。彼らは地域と共に歩む姿勢を持ちながら運営してきたことでコロナ禍でも集客がそれほど衰えず、収束後の客足の戻りも早かった。これは日頃、地域住民の意見を尊重した運営やテナントミックスに取り組んできたからに他ならない。

 SCは不動産である。不動産とは動けない資産であり可動産ではない。したがって営業成績が悪くても、設計に問題があっても、テナントリーシングに苦労しても、そこから動くことはできず、引っ越すことなどできるはずもない。要するに立地する地域の特性に合わせるしかない。戦略も行動もすべて地域が前提になる。

 では地域の特性とは何か。それは住民の数、職業、年齢、年収、ライフステージ、民度、地域の歴史、文化、慣習、風習、ならわし、土地の持つ歴史(地歴)、地位(ぢぐらい)、思い出など住む人々が紡いできた歴史や地形や気候風土である。この特性をいかに取り入れ、合わせていくか、そこにSCの成否はある。

経済成長とSC業態

 戦後、物の無い時代に登場した総合スーパー(GMS)はマスマーケティングが最も奏功した流通業態だった。生活必需品を総合的に扱い、それも安価で多くの国民に安定的に提供し成長した。

 その後、呉服屋から発展した百貨店や私鉄が始めたターミナル百貨店も都市への人口集中、国民所得の増加、生活様式の多様化に合わせ成長した。1990年代に入り、住宅の郊外化とモータリゼーションの進展に合わせモール開発が活発化、都心では、ファッションビルや駅ビルが隆盛を極めた。しかし、スマホが登場した2008年以降、事態は一変する。SCを取り巻く環境は、コロナ禍もあり、極めて先行き不透明なものとなった。

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