第78回ショッピングセンターが「長期の賃料ビジネス」の終焉を迎えつつある理由
ショッピングセンター(SC)事業では、テナントと建物賃貸借契約を締結する。賃貸人は自らの大切な資産を賃借人に委ね、賃借人は安定した借家権を期待する。この担保は相互の信頼関係が基礎となるように、SCビジネスもこの高度な信頼関係によって成り立っている。しかし、2000年に定期借家制度が登場し環境は一変する。そして、今は、ECやAIなどのテクノロジーの進化が著しく、一方で戦禍や感染症まで登場し、3年先すら分からない不安定な時代に突入した。この環境にあって、これまでのような建物賃貸借契約と賃料ビジネスが継続できるのかについて、今回は考えてみたい。
「SCとテナントは親子も同然」時代は終わった
建物賃貸借契約は継続した契約が前提であり、そこには賃貸人と賃借人相互の信頼関係を必要とする。住宅をイメージしやすいが、貸す側はどんなトラブルを借家人が起こすか不安では貸すことは出来ない。借りる側もいきなり「出て行け」と言われるのは困るし、隣にどんな人が住むのか分からないのも不安である。この双方の不安を払拭するためには高度な信頼関係が必要になるのは当然である。
時は遡り江戸時代、立てられた長屋を管理する大家、今で言うプロパティマネジメント業務に近いが、この時代、借家人(店子)のトラブルも大家が連帯責任人を問われるほど大家と店子の関係性は強かった。そのため大家と店子は親子も同然と言われたわけだが、この文化・慣習を日本のSCに導入したものが今の運営管理の原型となり、デベロッパーとテナントはイコールパートナー、SCとテナントは親子も同然と言われていた時代もあった。
そこに定期建物賃貸借制度が登場した。この制度は、法定更新と正当事由の強行規定によって契約は継続せず、約定の期間で確定的に終了する欧米型の契約主義に近づき、賃貸人と借家人の関係性を大きく変える。そして時を同じくしてもう一つの環境変化が起こる。それが不動産の流動化(証券化)だ。それまで現物を売買していた不動産を小口化して売却したり、不動産投資法人を組成し、投資家のお金で不動産の運用を行ったり、不動産ビジネスのスタイルが変わることで賃貸人と賃借人の関係性も変わり、この流れにSCも飲み込まれていく
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