わさび離れ進むなかチューブわさびで連続売上増!万城食品のマーケティング戦略とは
消費者とのタッチポイントをECで拡大
万城食品の成長期は、スーパーマーケットが日本市場に広まり、定着していった時期と重なり、鮮魚売場でパックの刺身を気軽に買えるようになったことが飛躍の要因だった。鮮魚売場への御用聞き営業を基本とするBtoBのビジネスモデルで、取引先である小売店と信頼関係を築く中、これまでに200種類を超える小袋わさびを開発し、シェアを拡大していった。万城食品の商品には、わさびや香辛料に限らず、鍋つゆなどのラインナップもあるが、『蒲焼のたれ』の開発・販売も「うなぎのたれはないの?」といった鮮魚店からの要望がきっかけだったという。
その一方で、消費者とはこれまでBtoBtoCで間接的につながってきた程度であり、三代氏は「関係性として希薄だった」と振り返る。しかし以前から、お客さまセンターには万城食品の小袋わさびのファンだという消費者から「同じものはどこで買えるのか」というお問い合わせや「これを市販してほしい」という要望が寄せられていた。欲しい商品を小売店の棚で見つけることが難しいという声に応えてタッチポイントを増やすためにECサイトを立ち上げ、大手ECモールの楽天市場に出店した。
三代氏によると「私たちが本当に売りたいのは、わさびのフレッシュな風味をお伝えできる冷蔵の商品」であり、最近では内容量25gながら標準的なチューブ状のわさびと比べて約50円高い商品が好調だという。ECでのみ限定販売している『潮山葵(USHIOWASABI)』は伊豆産本わさびと瀬戸内の塩をブレンドしたプレミアムな万能調味料として人気を博し、絶大な支持を獲得している。
また、以前からコツコツと続けてきた、社内外の多方面の人とつながるクロスファンクショナルな取り組みから、新しい動きが見られるようにもなってきている。2015年、万城食品では新しい部署として「農業事業課」を立ち上げ、静岡のわさび生産農家の協力を仰ぎながら、自社で本わさびを栽培してきた。そして収穫シーズンの4~5月には毎年、営業を中心に有志の社員が全国から集まって本わさびの収穫を体験することが、会社の恒例行事として定着している(コロナ禍では休止)。昨年は静岡産本わさびを使った『夏のクワトロ・産直ドミノ』でドミノピザとコラボレーションするなど、マーケティング部門などとも連携して横串を通し、組織の壁を取り払って横断的に進めるプロジェクトも生まれている。