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成城石井に学ぶ! 食品ロスを減らすウマい商品提案

 11月13日、成城石井(神奈川県/原昭彦社長)は、同日開業の複合施設「グランベリーパーク」(東京都町田市)に「成城石井南町田グランベリーパーク店」(以下、南町田グランベリーパーク店)を開店した。同店で新たに行っているのが、工場での商品の製造過程でどうしても生じてしまう不揃い品を商品化し販売する試みだ。廃棄ロスを削減しつつ、消費者にお買い得感を巧みに訴求している。

成城石井が11月13日にオープンした「南町田グランベリーパーク店」

コンセプトは
「南町田プレミアム」

 「グランベリーパーク」は、東急田園都市線「南町田グランペリーパーク」駅直結の複合商業施設で、成城石井の「南町田グランベリーパーク店」はその施設中央部にある、食の専門店を集積した「ギャザリングマーケット」内にオープンしている。
 実は、成城石井が総菜やデザートなどの商品を集中加工しているセントラルキッチンは、「南町田グランペリーパーク」駅から東へ約300mという至近に位置している。
 成城石井はこの利点を生かし、通常の品揃えに加えて、同店限定商品の提案に挑戦している。具体的には、商品コンセプトに「Minami-Machida PREMIUM(南町田プレミアム)」を掲げ、①「FRESH(新鮮)」、➁「BARGAIN(掘り出し物)」、③「LIMITED(限定)」という3つのキーワードの商品を販売している。

「南町田プレミアム」というコンセプトを打ち出し、「プレミアム感」や「お得感」を訴求。POPには洗練されたデザインを採用している

 ①の「FRESH」では、セントラルキッチンで製造した商品を、短い配送距離で同店に届けられることから、鮮度の高さを訴求するとともに、商品の包装を簡易化してコストを低減し低価格を実現する。
たとえば、食パンカテゴリーで人気ナンバーワンの「成城石井自家製 パン職人のこだわり湯種食パン」を、1.5斤サイズで販売(399円:税抜、以下同)。通常はスライス5枚入りを355円で提供している商品だが、包装やスライス加工をしないことでお得な価格での販売を可能にしている。
 また、店頭にガラスのショーケースを設置しオリジナル総菜のコーナーを展開する。通常はパック売りしている商品だが、同店では量り売りにして容器のコストを削減するほか、価格を100g129円で統一してオペレーションを効率化。これらの工夫により通常よりも10~20%ほど低価格を実現している。

「成城石井自家製 パン職人のこだわり湯種食パン」。セントラルキッチンから焼きたてを店舗に運ぶ
ショーケースを設置し展開するオリジナル総菜の量り売りコーナー

不揃い商品を
消費者向けに販売

 今回とくに注目したいのは、「BARGAIN」と「LIMITED」の取り組みだ。
 「BARGAIN」では、セントラルキッチンで商品の製造過程で生じてしまう不揃い商品を低価格で販売している。
 具体的には、焼成の工程でカラメルが浮いてしまったり、表面に皺ができてしまったりした焼きプリン「不揃い焼きプリン」(1個170円)や、いびつな形状やスモークの色がムラになってしまったウインナーを1kgの詰め合わせにした「不揃いポークウィンナー」(1袋1490円)、形がいびつだったりや焼きムラのあるパンを約10個のセットにした「不揃いパンセット」(300円)などがある。いずれの商品も、見た目に少しバラつきがあるだけで品質は変わらない。「ポークウインナー」は通常180g/税込431円で販売しており、見た目さえ気にしなければ消費者にとって非常に買得な商品と言える。
 成城石井ではこれまで、これらの不揃い品は社内の従業員向けに販売していたが、「長年、御世話になっている地元・町田市の皆さまに何か恩返しがしたい」という想いから今回初めて一般消費者向けに商品化したという。

焼成の工程でカラメルが浮いてしまったり、表面に皺ができてしまったりした焼きプリン「不揃い焼きプリン」
いびつな形状なほかスモークの色がムラになってしまったウインナーを1kgの詰め合わせにして「不揃いポ―クウィンナー」として販売する

余剰素材を生かし
敏腕シェフが商品開発

 「LIMITED」については、数量限定で製造にこだわった商品を販売する。なかでも「パン職人のこだわり湯種食パンラスク」(税抜299円)は、前述の「パン職人のこだわり湯種食パン」のパンの耳を使用し製造した商品だ。これまで余ってしまっていた素材に成城石井が着目し、同社のヒット商品である「プレミアムチーズケーキ」を手掛けた敏腕シェフが、隠し味に「三河みりん」を効かせるなど工夫を重ねて商品化。これまで余っていた素材にもかかわらず、チープ感を感じさせない、新たな商品として生まれ変わらせている。

「パン職人のこだわり湯種食パンラスク」。製造工程で余剰になっていたパンの耳を活用し、敏腕シェフが味にこだわって開発した

 近年、食品ロス削減への関心が高まっている。そうしたなか成城石井が秀逸なのは、食品のロスを削減しつつ、商品の訴求方法を工夫して「プレミアム感」や「お得感」を演出し、巧みに消費者の購買意欲を刺激している点だ。
 成城石井ではこれらの施策は、南町田グランベリーパーク店のみで行い、その他の既存店に導入していく予定はないという。しかし食品ロス削減が社会全体の課題となるなか有効な施策として、ほかの食品スーパー各社が成城石井から学べることは多い。