成城石井原昭彦社長が教える 原料調達×商品開発で独自性を磨く方法

ダイヤモンド・チェーンストア編集部
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グローサラントの導入で来店頻度、客層に変化

──新規出店も積極的に行っています。

 1997年の駅ビルへの出店を機に、それまでと異なる店舗開発をスタートしました。路面店だけでなくデパ地下やオフィス内などさまざまな立地への出店を可能にしたことにより、年間10~15店のペースで店舗数を増やせています。近年はワインバー「Le Bar à Vin52」や売場面積が20坪未満の小型店「成城石井 SELECT」などの新たなフォーマット開発も進めています。

 毎年、新しい都道府県に進出しており、17年には群馬県に、18年には滋賀県に初出店しました。初進出の店舗は地元の方々に支持してもらい揃って好調です。

──店舗の改装についてはいかがですか。

 18年から積極的に改装を進めています。単なる老朽化のためではなく、消費者のトレンドに対応するための戦略的な改装です。とくに売上が伸長している総菜やデザートを拡充するべく冷ケースを増設したり、店によってはレイアウトから大きく変更したりします。また、売場面積に余裕があれば店内厨房を増設しています。

 19年2月に改装した「名古屋駅広小路口店」では、専用出口を新たに設けて導線をワンウェイにしたほか、総菜を強化しました。これにより売上高が改装前比で2ケタ伸長しています。19年度も大型店も含めて改装を積極的に行う予定です。

──「トリエ京王調布店」(東京都調布市:17年9月開店)と「アトレ新浦安店」(千葉県浦安市:18年10月増床オープン)の2店舗で、飲食スペースを設けてバイオーダー商品を提供するグローサラント型の店づくりを始めています。

 お客さまの来店頻度が向上するとともに、客層が拡大する効果が出ています。加えて店舗フォーマットに広がりができ、新たな出店のお声がけもいただいています。メニューの品質向上や、食品スーパーへの相互送客に磨きをかけ、物件の条件を見極めながら今後もグローサラント型の店づくりに挑戦していきたいと考えています。

成城石井アトレ新浦安店
グローサラントを導入した「アトレ新浦安店」。セントラルキッチンをフル活用し、対面カウンターでサラダやデリ、ピザなどを販売する。一部の素材には成城石井で販売する商品を使用している

シェフの技を効かせた柔軟な商品開発体制

──独自商品を開発するうえで、セントラルキッチンが強みを発揮しています。

 広い厨房が確保できない店舗でも、セントラルキッチンで材料をキット化して納品するといった工夫により、小型店での総菜の販売や、バイオ―ダー商品の提供を可能にしています。

 当社のセントラルキッチンでは、調理に関する専門的な知識・技術を持つシェフたちが活躍しているのが大きな特徴です。キッチンはオートマチック化をあまり進めておらず、レストランの調理場を大きくしたような場所をイメージしてもらうとよいでしょう。手作業だからこそ、売れ筋にあわせた柔軟な対応が可能になるのです。

──“食のSPA(製造小売)”企業ともいわれるようになっています。

 人件費が高騰するなか、小売業はあらゆる部分を自社でマネジメントしていかなければ利益が確保できず、生き残っていけなくなるでしょう。

 加えて、自分たちの価値を創造していかなければならないと思います。自社の得意なものにフォーカスをあて、さらに組み合わせることで他社との違いを出していくのです。たとえば、当社では原料の調達力を生かしてイタリア産の24カ月熟成パルミジャーノ・レッジャーノを直輸入する。そしてセントラルキッチンのシェフの技とメーカーさんの技術をかけ合わせて、オリジナル商品のハヤシライスソースをつくるといった具合です。自社で商品を開発することで、バイヤーもメーカーに任せきりにならず、原料調達から製造ラインの稼働計画、在庫管理まで自身で責任を持って行うようになります。

 当社は1980年代という早期から輸入会社を設立し、駅ビルへの出店を見越して96年にセントラルキッチンを立ち上げました。道のりは容易ではありませんでしたがこれらが今の武器になっています。今後はSPAよりももっと深くまで入り込み、独自化に磨きをかけていきます。

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