ペルノ・リカール・ジャパン代表取締役社長 ノジェム・フアド
プレミアム志向のトレンドを追い風により高付加価値の商品に注力していく
「シーバスリーガル」を筆頭に、世界的に名高いワイン・スピリッツブランドを多数展開し、プレミアム&プレステージスピリッツ部門で世界No.1の地位を誇るペルノ・リカール グループ。その日本法人であるペルノ・リカール・ジャパンの代表取締役社長に2019年1月、新たに就任したノジェム・フアド氏に同社の成長戦略について聞いた。
聞き手=阿部幸治 構成=室作幸江
業務用と家庭用の相乗効果で好調に推移
──まずは、日本の酒類マーケットをどのようにとらえているかを聞かせてください。
フアド そもそも日本市場は、ペルノ・リカール グループにとってきわめて重要な市場と位置づけています。確かに酒類マーケット全体は縮小傾向にありますが、当社の主力商品群であるウイスキーやシャンパンは、拡大傾向にあります。加えて、より付加価値の高い商品を求めるプレミアム志向も顕著です。こうした市場動向は、まさに当社のポートフォリオ(保有ブランドの組み合わせ)に合致するものであり、おかげさまで業績は好調に推移しています。
日本のお客さまは「より質の高いものを求める」志向性をもち、そうした商品に対する理解度も高いと感じています。スピリッツやシャンパンが伸長している要因は、そういったところにもあると思いますね。
──御社は業務用と家庭用の両方でビジネスを展開していらっしゃいますが、その相乗効果はいかがでしょうか。
フアド おっしゃるとおり、両者の間にはシナジーがあり、それはブランドの構築という点において重要な意味をもつと考えています。
私どもが保有するスピリッツやワインのラグジュアリーブランドというのは、お客さまが店頭で見つけたからといって、すぐに購入するというようなものではありません。レストランやバーなどで体験してみて、気に入れば家庭用として購入するというパターンが一般的でしょう。それゆえ、業務用と家庭用の両方にお客さまとの接点をもっていることは、ブランドの認知拡大を進めるうえで非常に優位に働くと考えています。
昨今、日本では家飲み需要が増加していると聞いております。そういう意味では日本の家庭用市場はまだまだポテンシャルが高いと思っています。レストランやバーで私どもの商品をご経験いただき、さらに家飲みでも楽しんでいただく。業務用と家庭用の双方に複数のタッチポイントを持っている当社としては、十分に強みを発揮できるのではないかと思っています。
日本の文化に寄り添ったプロモーションを実施
──御社の家庭用酒類市場における商品戦略について教えてください。
フアド 商品戦略を語るうえで重要なキーワードとなるのが「プレミアム化」です。当社が手がけるポートフォリオの中で横展開や縦展開しながら、高付加価値商品へのシフトに力を入れていきたいと考えています。
たとえば「シーバスリーガル」の場合、「シーバスリーガル12年」をベースに、「シーバスリーガル ミズナラ12年」のようなユニークな商品をご紹介する一方、よりプレミアム志向の「シーバスリーガル18年」もご案内するといった具合に、高付加価値商品のすばらしさをご理解いただくプロモーションを行っていきたいと思っています。
──具体的にはどのようなやり方でしょうか。
フアド 試飲会やグラス付き限定品の販売、お試し用の小容量ボトルの展開などが挙げられます。日本に着任する前は、グローバル・トラベル・リテール部門、すなわち小売(免税店)の世界におりましたので、試飲販売や推奨販売が有効であることは身をもって経験済みです。とはいえ、もっとお客さまに寄り添った文化的なプロモーションも必要だと考えています。
というのも、日本のお客さまは自らの文化や習慣に関連したモノやコトにはとくに目を向ける傾向があります。「シーバスリーガルミズナラ12年」が成功した要因も、まさにそうしたところにあるといえるでしょう。伝説のマスターブレンダー、コリン・スコットが日本のためだけに手がけた特別なブレンドであり、日本原産ミズナラ樽から生まれたブレンデッドスコッチウイスキー。そんなストーリーが日本のお客さまの心に響き、成功につながったのだと思います。