ヤマダイ代表取締役社長 大久保 慶一
少量多品種のものづくりで独自の道を築く
新工場増築!ねらいは生産性向上と働き方改革
──昨年、本社工場の敷地内に、新工場を増築することを発表しました。今回の増築のねらいは何ですか。
大久保 ねらいは2つあります。1つは、「凄麺」シリーズを中核としたノンフライ製品の生産性向上と品質管理の強化を図ることです。工場は設備や規模をどんどん更新していかないと、おのずとつくれるものに制限ができてしまいます。また、市場での競争がますます厳しくなるなか、新規商品の開発を積極的に行っていくためには、新しい課題に挑戦できるようなスペースが必要です。今年5月に完成予定ですが、新工場が稼働すれば、ノンフライ製品の専用工場としては日本最大規模となり、生産数量も倍増する見込みです。
──今後、ノンフライ製品へ注力していくということですか。
大久保 そうですね。インスタントラーメンは、油で揚げたフライ麺からスタートしましたが、最近では油で揚げないノンフライ麺が主流となりつつあります。というのも、ノンフライ麺のほうが、品質の差別化や付加価値の向上において可能性が高いからです。
メーカーにとって大事なのはイノベーション。従来にないものをつくっていきたい。そう考えたときに、ノンフライ麺のほうが描ける目標がはるかに大きいのです。
──なるほど。では、新工場増築のもう1つのねらいは何ですか。
大久保 昨今、働き方改革が叫ばれていますが、今回の増築は社員の負荷を減らすことにも重きを置いています。そもそも私のミッションは、いかに社員の働きがいをつくるかということ。商品づくりにはいろいろな人が携わります。研究開発、製造、販売、物流。そうした人たちに、自社の商品に対してどれだけ愛着を持たせられるか。自社の商品が好きかどうかは、ガバナンス上、最も根本にあるものです。だからこそ、商品を大事にしたい。コモディティ化させたくない理由はここにあります。
“いい原料が使える”商品づくりで差別化
──これから取り組んでいきたいことについて教えてください。
大久保 われわれの強みは、少量多品種に適応した商品づくりをしていること。これは従来のメーカーとは逆の方向といえるかもしれません。その分、原価率は高い。しかし、最終的には差別化につながると考えています。
安い原料でいいものをつくるのは難しい。いいものをつくるには、いい原料を確保しなければなりません。原価が抑えられていると、たとえいい原料があっても使うことはできません。
いい原料が使えるような商品づくりが、私のやりたいこと。売上第一主義ではなく、品質と価値を重視するものづくり。パワーで競争するのはわれわれには不向きです。こうした考え方が社員にも浸透し、意識を変えてきたと思います。理想とするのは、自分たちがつくりたいもの、自分たちが生活者に食べてもらいたいものをつくることですね。
──具体的にどんな商品が考えられますか。
大久保 現在、全国のご当地ラーメンをつくっていますが、その地域の人に食べていただきたい、扱っていただきたいという思いで取り組んでいます。営業もその地域ならではのやり方で行っており、おかげさまで大変好評です。生活者に支持され、評価していただける商品を今後もつくっていきたいですね。
日本はもちろん、世界にはいろいろな麺文化があります。即席麺の業界で、まだ世に出ていない商品群はたくさんあると思います。そうした未開の分野にもトライしていきたいと考えています。既存のラインではできるものに限界がありますが、新たなプラントを導入すれば、実現の可能性は広がるでしょう。日本で唯一、世界で唯一という商品をめざしていきたいですね。