メニュー

マックスバリュ北海道 代表取締役社長 出戸 信成
負け組SMから一転“既存店は成長して当たり前!”に変えた方法

北海道内に89店舗を展開するマックスバリュ北海道。道内人口が減少し、競争が激化するなかで、快走を続けている。直近まで96カ月中、既存店売上高が前年実績を割ったのはわずか2カ月だけという驚異的な強さを見せつける。その強さの源は何か、そして今後のさらなる成長戦略について、出戸信成社長に尋ねた。

主要6都市に2業態でドミナント

──マックスバリュ北海道は食品スーパー(SM)とディスカウントストア(DS)の2業態を展開しています。それぞれの特徴と店舗展開エリアについての考え方を教えてください。

でと・のぶなり●1965年生まれ。94年札幌フードセンター(現マックスバリュ北海道)入社、99年取締役総合企画室長兼監査室長。2002年常務取締役営業本部副本部長兼商品部長、08年常務取締役経営管理・人事・総務担当兼人事本部長、12年代表取締役社長兼開発本部長、13年代表取締役社長、同年いちまる取締役。14年代表取締役社長兼営業統括本部長、16年3月、代表取締役社長(現任)

出戸 8月末日現在、北海道内にSM、DS業態のザ・ビッグの計89店舗を展開しています。当社の強みのベースとなるのが地域対応。エリアごとに本部のサポート機能があることで、本当の意味で地域密着ができます。そのことを前提にドミナント展開をしています。

 具体的には、一定以上の人口があるエリアにドミナント出店しています。人口534万人を抱える北海道のうち、195万人の札幌を軸に、周辺エリアも含めて15~30数万人程度の都市にドミナント出店していきます。旭川市、函館市、苫小牧市、帯広市、そして釧路市です。

──各エリアに2業態を展開していくわけですか?

出戸 SMとDSを両方出店するのは人口の多い札幌エリアだけです。旭川と釧路がDS、それ以外の3エリアはSMをドミナント展開しています。2業態を展開するほどの人口がないためです。これら5都市では、1つの業態を多店舗化し、1エリアで100億円単位のドミナントを構築していきます。一方、札幌は2つの業態を用いて、将来的には1000億円ぐらいのドミナントを構築したい考えです。

──SMとDS、それぞれどのような基本戦略で展開していますか?

出戸 一言で言えば、DSはベースとなる地域対応をしたうえで、節約志向を前面に押し出し、このニーズに当てはまる方を全員ターゲットにするという考え方です。一方SMは立地に合わせてきめ細かなMDを展開する、「あなた好みに合わせます」というものです。具体的には、立地タイプ別に5タイプ、ベーシックからアッパーまでの4グレードの掛け合わせで、計20タイプで品揃えやMDを分けようとしています。ただ、少し複雑すぎるのでもう少し整理したほうがいいかなと思っているところです。

 地域に合わせた店づくりについて、8月にオープンしたマックスバリュ北1条東店(レポートはこちら)を例にとると、単身者と若いファミリーが多く、所得も感度も高い方が多いという商圏特徴を持ちます。そのため、総菜とインストアベーカリーの品揃えを大幅に増強して即食需要に応えるとともに、こだわり商品や健康志向に対応した品揃えを重視したところ、非常に好調なスタートを切っています。

機動的な出店のため、小型店を開発

──業態の垣根を越えた食市場争奪戦が顕著となるなか、異業種との差別化策について教えてください。

出戸 利便性を提供するECやドラッグストア業態に対して、「おいしそう」「ライブ感」といった五感に訴える売場づくりをキーワードに差別化しています。つくっているところが見えるオープンキッチンに、おいしそうに見える照明やシズル感の訴求、できたての提供などを行っています。またECは購買・検索履歴に応じたレコメンドを行っていますが、当社の場合は商圏を徹底的に分析して、その結果を地域のお客さまにレコメンドする方針です。

 DSのザ・ビッグの場合は“驚き”をお客さまに訴求します。商品を絞り込み、お買い得な商品を提案し、テンションが上がる、買物スイッチが入る売場をめざしています。

──SMの店舗規模について、これまでの売場面積2000㎡クラスから変化があるのですか?

出戸 2000㎡のSMをつくろうと思うと、敷地面積で3000坪必要ですが、この規模の物件はなかなか出てきません。前期は売場面積2000㎡クラスを2店舗出したのですが、それは約3年ぶりの出店となりました。そこで安定的な出店を行うため、現在はその半分程度の敷地面積でできないかと考え、今回の北1条東店では敷地面積1600坪、売場面積1600㎡クラスのコンパクトタイプにチャレンジしています。年内に出店するもう1店舗と合わせ、2店舗で実験していきます。

 敷地面積が小さくてすむため、これまではあまり出店できなかった札幌市の都心に近いエリアでも物件を見つけやすくなりました。これにより毎年1~2店舗出店していく考えで、とくに人口が密集する札幌市内での出店を増やしていきます。

 同時にドミナントエリアへの出店も継続していきます。札幌以外の5エリアもまだまだ出店の余地は多く、2019年度に売上高1460億円をめざします。

──改装についてはいかがですか?

出戸 店舗年齢を10歳に若返らせることを目標に、毎年全店の1割にあたる8~9店舗を定期的に改装しています。今14歳ぐらいですので、1割ずつ改装していけば目標に近づく計算です。改装により、SMは五感に訴える売場づくり、DSはシンプルかつきれいで、驚きのある売場づくりを、それぞれ実現していきます。

「既存店売上高は、お客さまの支持と現場の元気を示すバロメーター」

既存店割れは96カ月中わずか2カ月

──マックスバリュ北海道といえば、既存店売上高がずっと成長し続けていることで評判です。定期的な改装に加え、何によってそれを実現し続けているのでしょうか?

出戸 トライ&エラーを繰り返してきたことにつきます。実は当社は03年から10年まで既存店売上高が割れ続け、負け組SMでした。縮小均衡に歯止めをかけるため、10年に新業態のザ・ビッグをスタートし、11年に企業トータルで既存店の前年割れが止まりましたが、SMは割れ続けていました。それがようやく止まったのは12年のことです。1店1店の課題を積み上げ、それを解決する施策を一つひとつ打っていくとともに、好調企業の共通項を探し出し、その施策を実行、それにドミナント出店と店舗年齢の若返り等を組み合わせるということを、愚直に行った結果です。

──直近96カ月中、わずか2回しか既存店割れがないというのは驚異的です。

出戸 かつて店長達は「人口が減っているのだから売上は上がるはずがない」という言い訳を口を揃えて言っていたものでしたが、今では「昨対を割ったら恥ずかしくて店長会議に出られない」と言うまでに意識が変わり、自信が付いています。

 2年ほど前に厚別店を改装しました。増床はせず改装だけだったのですが、商圏分析をして新しいMDを実験的に投入した結果、70%も売上高がアップしました。これは感度の高い商品へのニーズがあるにもかかわらず、それを当社の店が対応していなかったため、お客さまがほかの店に逃げていたのです。この成功体験も、従業員の多くに自信を与えることになりました。

 よくぞ、ここまで立ち直った、それが率直な思いです。

既存店売上を伸ばし続ける

──差別化MDはグロサリーだけでなく生鮮、それも総菜が軸になります。インストア加工だけでなく、アウトパックの質を高めることも大事だと思いますが、その点で取り組まれていることはありますか?

出戸 すべてをインストアでつくりきることはできません。インストアをベースにしながら、売れるアウトパックをどうつくるかということも継続的な課題です。有力企業の売れ筋商品を集め、ベンチマークし、試作してモニターテストを行い、販売するというサイクルを継続的に行っています。このサイクルの最適化を行うことで、アウトパックで安定した品質の商品を提供することを実現していきたいです。

──改装を強化するというお話ですが、どういう体制で取り組んでいるのですか?

出戸 改装サポートグループという専門部署があり、マネジャー以下5名で、アンケートから来店調査、売場づくり・オペレーションのサポートまで行っています。

──お客をさらに囲い込むマーケティング施策として何か取り組みたいことはありますか?

出戸 優良顧客の購買履歴を分析しています。優良顧客が購入しているCランク商品を削ると、そのお客さまは逃げてしまうわけですので、そういったことをきめ細かく分析し、改装に生かしていきたいと考えています。

──最後に、出戸社長が重視する指標について教えてください。

出戸 営業利益なども大事ですが、いちばんは既存店売上高です。既存店売上高を伸ばし続けると元気が出ます。やはりわれわれは小売業ですから、お客さまに喜んで買っていただくことが存在意義ですし、元気の源なのです。

 既存店売上高はずっと伸ばし続けているので、クリアすべき前年のバーはどんどん上がっているわけですが、より魅力的な店づくりを行い、売場を研鑽し続けることで既存店売上高を成長させ続けていきたいと考えています。

 

 

>>他のインタビューを見る