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上期で過去最高業績を更新したアスクル ロハコの黒字化に向けた戦略は?

法人向けオフィス用品の通販サービスや一般向けECサイト「LOHACO(ロハコ)」を展開するアスクル(東京都/吉岡晃社長)が20235月期上期決算を発表した。売上高と営業利益では過去最高を達成した同社は今後どのような戦略を描いているのか――。

BtoC事業」で8億円の利益改善

 アスクルの235月期上期連結決算は、売上高2202億円(対前年同期比5.4%増)、営業利益67億円(同0.7%増)、経常利益67億円(同0.1%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益44億円(同1.4%減)だった。経常利益、純利益は微減だったものの、売上高と営業利益では過去最高を更新した。

 事業別の業績を見ると、主力の「BtoB事業」では、売上高1814億円(同7.0%増)、営業利益75億円(同9.2%減)の増収減益だった。売上高では、アスクルが今期最大のミッションに掲げる「成長カーブを変える」を実現。カテゴリー別の売上高では「生活用品」や「MRO」などが売上の牽引役となり、いずれも2ケタの伸びを示した。営業利益は固定費の増加などにより減益となったが、1箱当たりの売上単価向上に伴う物流費比率低減などにより、計画を上回る実績を達成した。

アスクルの吉岡晃社長

 ロハコを中心とする「BtoC事業」では、売上高340億円(同2.1%減)、営業損益6億円だった。海外需要の減少とキャンペーン変更などの影響により減収だったが、利益面では収益構造が大幅に改善し、限界利益率は直近の2211月で目標としていた2ケタに到達し、赤字幅を前年同期から8億円縮めることができた。

 

「ソロエルアリーナ」のオープン化で売上増

 アスクルは255月期を最終年度とする中期経営計画で、売上高5500億円、営業利益率5%という数値目標を掲げている。「BtoB事業」での重点施策としては、取り扱い商品、在庫商品の拡大に注力。取り扱い商品1800万アイテム、在庫商品33万アイテムの達成に向け、235月期通期では、それぞれ1400万アイテム、15万アイテムの達成をめざし、計画を進めている。

 オリジナル商品の拡大も加速させる。中期目標の12000アイテム達成に向け、今期は1万アイテムに拡大する計画だ。アスクルが「2大戦略業種」と位置付ける「医療・介護」「製造業」向けの商品を中心に開発を強化していく。戦略業種向け商品には積極的に広告投資するほか、動画広告を活用するなど認知度向上に向けたウェブ販促にも取り組む。

「アスクル資源循環プラットフォーム」の取り組みから生まれた新たなプライベートブランド「Matakul」(マタクル)の「クリアホルダーからつくったクリアホルダー」

 また、中堅・大企業向けサービス「ソロエルアリーナ」のオープン化により、この上期で外部流入の売上高が27億円となった。注文単価も直接流入の1.2倍となり、「検索から流入しやすくなったことで、お客さまもいろいろな商品をワンストップで購入できるようになった」と吉岡晃社長は手ごたえを得ている。今後はこのオープン化の効果の最大化に取り組みつつ、ASKULサイトの機能改善・強化に前倒しで取り組んでいく考えだ。

 物流面では、「BtoB事業」の成長を支える「東日本最先端フラッグシップセンター」として、221121日に「ASKUL東京DC」の稼働を開始。同一方面に配送する荷物の重さ・大きさ順に連続で出庫できる「シャトルシステム」を活用するなど、生産性を高める最新の設備が導入されている。

 

ロハコでは販促や配送サービスの改善に注力

 「BtoC事業」では、ロハコで通期の黒字化をめざす。上期時点で売上総利益率は前年同期差で3.2ポイント(pt)増、変動費比率は同1.3pt減と改善が進んでおり、固定費金額も目標水準に到達。1箱当たりの売上単価も対前年同期比10.5%増と順調に推移しており、UI/UX改善と配送バー改定の効果でさらなる向上をめざす。

 また、下期では親会社のZホールディングス(東京都/川邊健太郎社長)と共同での配送サービス向上や自社販促の強化に取り組む。配送については、すでに開始している「おトク指定便」に加え、当日・翌日出荷の強化に注力する。

 ロハコの収益性は改善が進んでおり、吉岡社長によると、配送遅延の減少や配送の速さ、梱包の品質などの基本サービスのレベルが向上しているという。「直近では自社でお客さまへの販促を行いつつ、クオリティの高いサービスでリピート率を高めていきたい」と吉岡社長は力を込める。