商品経営に徹して強力なDSと伍して戦える高質SMモデルをつくる=いちやまマート三科社長
──いちやまマートの大きな特徴は、「商品を軸に据えた経営」にあります。
三科 そのとおりです。小売業ならばいちばんに商品にこだわらないといけないと思います。当社では日常の食事に関わる商品を取り扱っていますが、競合店と差別化が図れる商品を集められるか、または開発できるかが生命線です。
とどのつまり、お客さまから存在価値を認めていただける根本は「商品」にあると思うのです。競合店と同じNB商品を取り扱って価格競争だけをしているのならば、「今日はこっち」「明日はあっち」と、毎日の特売価格でお客さまが動いてしまうだけです。そこに当社の存在価値を見出すことはできません。
──それでも、いちやまマートは4割引の冷凍食品をはじめとして、NB商品の「毎日がこの価格」といったエブリデイ・ロー・プライス(EDLP:毎日安売り)にも力を入れています。
三科 オリジナルの商品にこだわりますが、それだけで競争に勝つことは難しいと考えるからです。
当社は比較的高単価な「こだわり商品」を多く取り揃えており、安価な商品の販売にはあまり力を入れてきませんでした。競争環境が緩やかな時代は売上も利益も確保することができましたが、そうはいっていられなくなりました。
現在は、競合するDSが取り扱っているNB商品は、売価を合わせるようにしています。これは県外初出店になった諏訪店(長野県:11年4月開業)での取り組みが発端になっています。
──長野県諏訪市は、西友(東京都/スティーブ・デイカスCEO〈最高経営責任者〉)やバロー(岐阜県/田代正美社長)、オギノ(長野県/荻野寛二社長)、西源(長野県/西村源一郎社長)、綿半ホームエイド(長野県/下島憲秋社長)などが食品の苛烈な低価格競争を繰り広げています。
三科 諏訪市は山梨県よりも価格競争が激しいエリアです。当社は諏訪店でDS対策を実験し、成功事例を山梨県の既存店に広げていっています。
そのポイントはDSの安売りにも真っ向から対応することです。だから、競合店がNBを安売りしているのならば売価を合わせます。「『こだわり商品』があるから、NB商品を安くしなくてもお客さまは来てくれるはずだ」とは考えていません。DSの攻勢を受けて、NBの安売りをしなかったために大きく客数を減らしてしまった「高質SM」企業は枚挙にいとまがありません。DSの低価格には真正面から対応しなければならないのです。