ファミリー向け室内遊園地は「子どもの多い国」で再成長=イオンファンタジー社長 土谷美津子
「真似が難しい」ソフトの充実で差別化
──中国、アジアで競合する企業はありますか。
土谷 今のところありません。そもそも日本でも、子どもに特化したファミリー向けの施設はあまりありません。大人、ヤングアダルト向けのアミューズメント施設ではなく、子どもに特化している点が当社の特徴です。
当社の強みは、遊具が安全で清潔なこと。こうした衛生管理を徹底していることに加えて、ソフトを充実させることで差別化を図ってきました。たとえばオリジナルキャラクターの「ララちゃん」と「イオくん」のショーやイベントは子どもたちに大変な人気です。土日はショーを見るための行列ができるほどです。
もちろん、いずれ真似をする企業が出てくるでしょう。しかし遊具は真似できるかも知れませんが、ショーなどのソフトはなかなか真似できません。そこに当社の強みがあると考えています。
現在はこうした衛生管理とお客さまへのホスピタリティの高さをブランド化しているところです。
──郊外店舗は約300坪ということですが、現在のプロトタイプはどのようなイメージでしょうか。
土谷 郊外店舗の場合、全体の3分の1が遊び場です。これは「30分でいくら」というように時間課金制で遊ぶことができるスペースです。残りの3分の2が、乗り物やゲーム機のスペースです。日本では遊び場のほうが、乗り物やゲーム機のスペースと比べると坪効率が悪いのですが、中国やマレーシアでは2つのスペースの坪効率は同じぐらいです。
乗り物やゲーム機のコーナーは、日本とは運営方法が異なります。
日本ではゲーム機に直接、貨幣を投入して利用しますが、中国やマレーシアでは代用貨幣の「トークン」を買って、それを投入して遊びます。機械1台1台を集金して回る手間がないので、オペレーション上はそのほうが効率的です。
──中国やアジアでは、日本のゲーム機が人気だと聞きます。国内店舗の中古ゲーム機を再利用するなどの取り組みもありますか。
土谷 これも法規制の問題があり、日本から中国やベトナムへ中古のゲーム機を持ちこむことができません。マレーシアはその規制はありませんので可能ですね。
日本のゲーム機も相当、入っていますが、ゲーム機すべてを日本と同様にすると遊び方がわからないものもたくさんありますので、現地のゲーム機も導入しています。お客さまの中には日本のゲーム機に詳しい方もおり、不思議と「太鼓の達人」(バンダイナムコ ゲームス)に「新曲が入っていない」と言われることもありますね(笑)。
──遊び場のスペースは日本に比べて坪効率がよいということでした。何が支持されているのでしょうか。
土谷 遊び場のスペースでは、ショーなども開催しています。当社はこれを「エンターテインメント」と呼んでいます。そのエンターテインメントのリーダーが、子どもたちを上手に盛り上げて、一緒にダンスをしたり、旗上げ体操をしたりします。コミュニケーションはもちろん現地語ですが、こうしたダンスの曲の歌詞は日本語のままです。子どもたちは普通にそれを覚えて踊っています。
──エンターテインメントを強化するためには、子どもたちの盛り上げ役となるリーダーの育成がカギになると思います。人材の確保や教育体系についても日本でのノウハウを活用していますか。
土谷 海外でもリーダーには日本と同様の教育を実施しており、社内の資格制度を設けています。もともと子どもとダンスが好きで応募してきているので、モチベーションの高いスタッフばかりですね。
目標は2015年までに中国で100店舗、東南アジアで70店舗
──子ども向けの室内遊園地は、大人向けのゲームセンターと比べると坪当たりの売上高は低くなります。収益構造で日本との違いはありますか。
土谷 そうですね。ただ、デベロッパーからは「SCにファミリー層を集客したいから」という理由で当社に出店要請がきます。そのぶん、家賃条件は比較的よい条件で出店することができています。
また、中国やマレーシアでは、日本にあるようなクレーンゲームは少なく、「乗り物」が中心となっています。そのため景品の原価がかかりませんので、そのぶん日本よりも利益率が高くなります。
日本の店よりも売上高自体は低いのですが、設備投資も日本の半分、かつ利益率も高い。そのため早期に投資回収できています。
──2015年までに中国で100店舗、東南アジアで70店舗を計画していますが、今後の出店計画を教えてください。
土谷 2015年までに中国で100店舗、東南アジアで70店舗という目標は、達成できると思います。
東南アジアではマレーシアとタイ以外にも、今後も積極的に進出していきたいと考えています。単純にGDPからみれば、インドネシアなどは魅力がありますね。