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2010年度重点テーマは「インフラ活用、基本事項の徹底、新規出店」=ライフ 岩崎高治社長

2009年2月期に始まった第三次中期3カ年計画の2年目を終えたライフコーポレーション。昨年11月には、東京本社を台東区に移転。物流・基幹システムのインフラを整備し、創業50周年の目標「250店舗、売上高5000億円、経常利益100億円」に向けて万全の態勢を整えた。10年度の方針を中心に岩崎社長に聞いた。

厳しかった2009年度

いわさき・たかはる 1966年生まれ。89年3月、慶応義塾大学経済学部卒業。同年、三菱商事入社。99年、ライフコーポレーション入社、営業総本部長補佐、取締役。2001年、首都圏事業本部長、専務取締役。06年、代表取締役社長兼COO(最高執行責任者)就任。

──09年度は、これまで流通業界の中では、比較的好調に推移してきた食品スーパー(SM)にとっても厳しいものになりました。

岩崎 そうですね。当社も外部環境の厳しさとインフラ整備への投資などを織り込み、当初から減益予算を組んでいました。また、11月には東京本社(東京都台東区)の移転を実現しました。

 第1四半期は、既存店舗の客数・客単価ともに対前期比をクリアしていました。ところが第2四半期では、客数は増えるものの既存店舗が対前年実績を割り始め、第3四半期からは客数も対前期比を下回ってしまいました。

 しかしながら、お客さまが競合店舗に流れてしまっているのかと言えばそうではありません。消費マインドの冷え込みによるところが大きいようで、競争に負けているわけではありませんので、耐えなければいけない局面だと考えています。

 10年度も消費トレンドが一挙に改善するとは思えません。そこで新年度は、過去数年間にわたって対前期比プラス成長で組んできました既存店舗売上高予算をマイナスにしています。

 09年度の第4四半期以降、客数・客単価ともに底止まり感はありますが、先行きは依然不透明ですので、最悪の事態を想定して計画を組み、臨機応変に対応したいと考えています。

インフラ整備で次期成長に布石

──09年度で第三次中期3カ年計画の2年目が終了しました。この間、とくにインフラの整備は目を見張るものがあります。

岩崎 そうですね。将来への布石を打つということで、老朽化やオーバーキャパシティが問題になっていた物流センターと情報システムへの整備を図ってきました。

 たとえば近畿圏の物流インフラということでは、09年10月に「ライフ住之江物流センター」(大阪市/委託先:加藤産業<兵庫県/加藤和弥社長>)と「ライフ新天保山低温センター」(大阪市/委託先:ロジスティクス・ネットワーク<東京都/立石孝社長>)を開設しています。

2010年度の出店は巡航速度に戻す。

 「ライフ住之江物流センター」は敷地面積2万3154平方メートル、建築面積1万3671平方メートル、延床面積3万8743平方メートルの規模を持ち、加工食品、菓子、酒類の預託保管と衣料、生活関連商品の通過型センターの機能を具備しています。10年の年間取扱高は840億円を予測しています。

 現在、近畿圏には116店舗を展開していますが、150店舗までをカバーする能力があります。

 「ライフ住之江物流センター」の特徴は、店舗規模別に3パターンに分類して、カテゴリー納品を実施していることです。立ち上げ当初は、多少のトラブルがありましたが、ここにきてオペレーションは改善され、トータル物流コストの削減に寄与する手ごたえを確かにしました。

 もうひとつの「ライフ新天保山低温センター」は、敷地面積2万1077平方メートル、建築面積1万1069平方メートル、延床面積1万2645平方メートル。取扱商品は水産、農産、畜産、総菜、インストアベーカリーの原料、日配食品で、近畿圏80店舗の低温物流、農産物流に対応でき、順調に推移しています。2010年の年間取扱高は440億円を予想しており、産地から店頭まで結ぶコールドチェーンづくりの拠点としての役割も期待しています。

 また、この3月に70店舗まで対応可能な「ライフ堺低温センター」(堺市/委託先:ロジスティクス・ネットワーク)が稼働。さらに2010年11月までに鮮魚や精肉、一部総菜を扱うプロセスセンター(PC)の「ライフ南港プロセスセンター」(大阪市)を拡張し、近畿圏150店舗のPC商品に対応する体制を構築します。

基幹システムを再構築

──10年度は、首都圏物流の再構築も実施していくことを発表しています。

岩崎 大きなフレームは、近畿圏の物流体制と同じです。

 10年10月に「(仮称)ライフ松戸総合センター」(委託先:菱食<東京都/中野勘治社長>)を千葉県松戸市に稼働させます。敷地面積2万218平方メートル、建築面積1万4138平方メートル、延床面積3万4201平方メートルで常温物流として預託在庫機能を活用したカテゴリー納品および南部拠点への小分け商品供給を行います。

 また、低温物流では2温度帯による品質管理、農産物の産直仕分けスペースの設置などの特徴があります。

 加工食品など約6200アイテムを扱い、年間取扱高は、980億円を予定しています。

 なお、既存の「ライフ栗橋総合物流センター」(埼玉県)はPCに転用し、「ライフ栗橋プロセスセンター」として首都圏120店舗にPC商品を供給できるよう機能強化を図ります。

──インフラ整備のもうひとつの柱は基幹システムの再構築です。

岩崎 そうですね。当社の旧基幹システムは、ホストコンピュータを基盤に構築されており、拡張性はなく、レスポンスも遅く、災害対策や内部統制などへの対応も不十分でした。

 そこで、日本ユニシス(東京都/籾井勝人社長)さんと連携して、ウインドウズを基盤とするフルオープン化のシステムを導入し、商品系、管理系などのシステムを刷新しています。

 今後は、加工食品などの自動発注システムや総菜の原料換算発注システムなど店舗オペレーションにかかわるシステム開発にも当たっていきたいところです。

基本事項を徹底する

──もうひとつ。10年度は、社内に対しては、「基本事項の徹底」を訴えています。

岩崎 現在、従業員に話しているのは、景気が悪くなったからといって急に新しいことを行うのではなく、これまでわれわれが積み重ねてきたことは間違っていないのだから、しっかりとやっていこうということです。

 気持ちのよい接客、清潔な売場、安心して買っていただける商品の提供など、地道な積み重ねが、地域一番店をつくる近道なのでしっかりやればいいと思います。

──たとえば、接客を向上するためには何をしてきたのですか?

岩崎 さまざまな方法があると思いますが、いちばん初めに手をつけなければいけないのは意識改革です。「接客が大事」であることを、従業員の方が心底理解できていないと、接客は結局、形骸化してしまうからです。

 突き詰めるなら、事あるごとに同じ話を繰り返し、店舗単位、店長連絡会、チーフ会議、トレーナーによる教育など縦横斜めの組織を使って、接客の重要性を話して理解してもらうしかありません。

 その土台ができたところで、技術論としての接客教育に進むというかたちを採っています。

 意識改革は時間もかかりますし、効果も歴然とはしませんが、一生懸命やってもらっていると思いますし、合格点には達していると思います。

 ただ、これで満足はしていませんので、さらなる向上を図っていきたいと考えています。

出店は巡航速度に戻す

──出店については、どんな計画を持っていますか?

岩崎 当社は、1990年代に“怒涛の出店”ということで8年間に132店舗を開業しました。次の2000年代は内部充実に当てました。10年代の第三次中期経営計画では、出店を巡航速度に戻そうということで、3年間で32店舗の計画を描きました。

 実績は、08年度が7店舗、09年度が9店舗。10年度は8店舗を計画していますので合計24店舗になります。

 ただし、巡航速度ということでは、年間10店舗程度は出店していきたいところです。物件自体はとくに近畿圏に多く、首都圏にも多数出てきています。

 契約済みやほぼ決まった物件数は現状でも20件くらいはあります。

 ですから、あとは業績を勘案しながら、アクセルとブレーキを踏み分けることになると思います。

 標準店舗は売場面積500坪でアイテム数は1万くらい。競合環境や立地にもよりますが、必要商圏人口は半径500mに5000世帯。可能であれば、400坪規模で衣料品や生活雑貨売場も付加し、駐車場をしっかり確保するのが理想形です。

 09年度は売場面積が約160坪の吉祥寺南店(東京都)を開業しましたが、これは居抜き出店であり、当社の基本パターンではありません。

──09年6月に改正薬事法が施行され、第2類、第3類の大衆薬が取り扱いやすくなりました。

岩崎 当社でも、採算ベースに乗りそうな店舗を選び、登録販売者による医薬品の販売を実施しています。導入した店舗の売上は確実にあがっていますが、全店舗の半分程度の展開というところです。

──ネットスーパーの取り組みは考えていますか?

岩崎 当社のお客さまが流出してしまう可能性はある市場だと注意深く見ています。しかしながら、多くの方が自らネットで注文されるようになるのは、まだもう少し先だと考えています。

 その前に来るのが、個別配送の問題ですから、こちらのほうには現在取り組んでいるところです。

 ネットを自由に使いこなせる方がもっと増えた場合には、リアル店舗にとって代わる可能性がありますので、ネットスーパーの研究には力を入れて行きたいところです。

──一方で、商品政策的に言えば、強みは何で発揮していくのですか?

岩崎 これはバランスが重要だと考えます。価格と品質の関係で言えば、品質ばかりでも価格ばかりでもいけません。お客さまの値ごろ感を追求した商品の品揃えをめざしており、他社よりも高くなければよいと考えています。もちろん鮮度については徹底することが当たり前です。

──第3四半期決算発表時の業績予想では、営業収益4740億円(対前期比2.4%増)、営業利益87億円(同23.8%減)、経常利益83億円(同25%減)、当期純利益40億円(同26.6%減)と発表しています。11年度に50周年を迎えるに際しての目標数字はありますか?

岩崎 11年度に250店舗、売上高5000億円、経常利益100億円が目標になります。これまでお話ししてきた政策を実施することによって、確実に目標を達成させたいと考えています。