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レシートは語る第9回 バロー、デスティネーション・ストア化の成果が如実に

 mitoriz(東京都/木名瀬博社長)は、全国に約100万人の協力モニターを擁し、日本初のレシートによる購買証明付き・購買理由データベース「マルチプルID-POS購買理由データPoint of Buy(ポイント・オブ・バイ:以下、POBデータ)」を有している。月間1500万枚のレシートを収集し、リアル消費者購買データベースとしては国内最大級の規模となる。(提携サイト含める)

 このPOBデータと協力モニター(以下、POB会員)へのアンケート調査を活用すれば、消費者から見た小売りチェーンの実態を明らかにすることができる。本連載では毎回、業界で関心の高いテーマを設定して独自調査を実施し、その結果をレポートする。

 現在、食品スーパーは、コロナ禍を経て大きく変化する消費者動向に対応する変化が求められている。また、ドラッグストアやコンビニも生鮮食品を強化するなど、業態を越えた戦いが激化している。そんななか、生鮮食品の強化を軸に、売上高を伸長させているのが、岐阜県、愛知県を中心に、東海、関西、北陸、甲信地方に店舗を展開するバローホールディングス(岐阜県/田代正美会長兼CEO:以下、バローHD)だ。直近の2022年3月期連結決算は、営業収益が7325億円となり27期連続の増収、過去最高を更新。営業利益についても212億円と、過去2番目の高水準を確保した。

 連載第9回の今回は同社の食品スーパー「バロー」にクローズアップし、消費者アンケートとレシートデータから「バロー」の強さの秘訣を探る。

生鮮品の評価で
他チェーンと差別化

 まず、バローと競合各チェーンのメーン利用者に「支持する理由」を尋ねた。今回は商圏が類似する「マックスバリュ」「カネスエ」を比較対象チェーンとしている。(調査期間:2022年7月27日~8月5日、対象者:愛知・岐阜エリア在住者、N=バロー134人、マックスバリュ130人、カネスエ121人)。

 その結果、バローでは「生鮮品の品質・鮮度がよい」「精肉・鮮魚の種類が豊富」の回答割合が高かった。生鮮品の品質、品揃えで支持を受けているようだ。また、「地元の人気店・話題の店」という点も競合チェーンと比較して評価を得ている(図表1)。

 とくに生鮮品の評価に関しては、他チェーンに10ポイントほど差を付けた。
バローHDは近年、他店舗・他業種との差別化を図るために、来店動機となる強い商品・カテゴリーを持った「デスティネーション・ストア」化を推進。その一環として、05年には「タチヤ」や、21年には「八百鮮」など、生鮮に強みを持つ企業を戦略的に買収し、生鮮強化を図ってきたことが、生鮮品で好評を得ている大きな要因と言えるだろう。

 利用者のコメントでも、「バローは品揃えがよく値段が安い」「魚がとにかく安くて美味しい」「生鮮も新鮮で加工調理をしてくれるのも魅力」「野菜、果物が新鮮で、とくに地元でとれた新鮮な野菜が売っている」といった声が挙がった。

 価格やポイント・クーポンなどの特典に頼らずとも、品質の良い商品が豊富なことから利用者からの信頼が高いことがうかがえる。

一方で量目対応を
求める声も

一方で、「野菜が大容量のみしかないときがあり、1つだけ欲しい時に困る」「刺身が大容量しかない」「大容量で売る店舗が増えているが少量でも安く買えるようにして欲しい」といった量目対応を求める声が散見された。

PB出現率は35%
品質に対する評価も

 次に、バローのプライベートブランド(PB)商品に着目する。同社では「良品廉価、リーズナブル、暮らし応援」をキーワードに掲げる「バローセレクト」、「こだわり、ちょっとした贅沢感、身近な上質商品」をめざす「バロープラス」シリーズを展開している。

 調査の結果、メーン利用者の9割は「パン」「牛乳・乳製品」「冷凍食品」「清涼飲料」などいずれかの商品の購入経験があり、バローの購入レシートにおけるPB出現率は35%(22年5月~7月)と比較的高い。

 図表2は、レシート出現率の商品を順に並べたものだ。最も高いのは「VS もやし」で、「VS バロー牛乳」をはじめとした日配品が上位に続く。「野菜や日配品は品質もよくて割安」「お値段も品質もよく満足」「安くておいしい」など、コストパフォーマンスの高さが評価され、価格を重視する顧客層の支持を得ていると言える。

 また、「有名メーカー製なのに値段が安い」「無脂肪牛乳がとても美味しくて週に1回必ず購入する」「豆腐がおいしいので良く買う」といったコメントからも、価格の安さだけではなく品質のよい商品が豊富なため目的買いされていることがわかる。

商品単価は
40円以上も高い結果に

 続いて21年8月~22年7月までの3チェーンのレシートデータを分析し、その利用動向の推移を比較した(図表3)。

 その結果、「バロー」のレシート1枚当たりの平均購入個数は6.8個と最も少ないが、レシート単価、商品単価が他2チェーンと比較して40円以上も高い。
バローは、生鮮品の品質を高めることで、客単価を伸ばし、結果、全体売上高を伸ばす戦略を打ち出しており、その成果が出ていると言えるだろう。

他チェーンよりも
商品を値上げも・・・

 一方、バローの「商品単価」をみると、食品の値上げの影響を受け、21年8月と22年7月を比較して価格が約20円上昇していた。同様に他チェーンの商品単価の推移を分析したところ「マックスバリュ(-17円)」、「カネスエ(+1円)」とバローに比べて増加はしていなかった。

 競合との価格差から、メーン利用店舗から切り替えられてしまう懸念もあるが、「バローのレシートの投稿頻度」を参考にすると、一時期頻度が少し下がったものの、また回復、維持をしていることがわかる。価格に頼らずとも、品質を重視する顧客からの支持を着実に得ていることが結果に表れている。

アマゾンとの即時配送
認知率は20%弱

 コロナ禍ではネットスーパー需要が大きく拡大した。バローHDもアマゾンジャパン(東京都)と提携し21年6月から愛知県の一部エリアで最短2時間配送を開始。現在、サービス提供エリアを14市2町まで広げている。

 今回アンケートを行った全回答者のうち、バローのネットスーパーの認知率は19.5%。このうち利用したことがある人は1.4%だった。バローのメーンユーザーに絞った認知率でも26.1%、利用したことがある人は0.7%と、サービスエリアが限定的であることから実際に利用している人はまだ少数だ。

決済やポイント制度に
要望の声あり

Amazon.co.jpのWebサイト上で展開するバローのストア

 利用経験者に購入したことある商品について聞くと、重量のある「水やお茶などの飲料」といった商品や、PBで支持の高かった「冷凍食品」、「牛乳・乳製品」が上位に続き、通常店舗で購入されている商品とあまり変わらない傾向にあった。

 しかし、約半数が注文頻度を「半年に1回」と回答していることから、まだふだん使いをしている人は少ないようだ。「配送が無料になる総額が8000円と高い」「送料も取るのであまり高いと注文を辞めようかと思う」といったコメントもあり、店舗で購入するよりも割高に感じてしまうことが、利用頻度が低い要因の1つと考えられる。

 そのほか「PayPayが利用できるとよい」「カード払いでもポイントをつけてほしい」といった要望の声も挙がっていた。

 このように、価格への抵抗感や、決済やポイント制度における課題はあるものの、ネットスーパーは時代のニーズに即したサービスであり、今後改善を重ねていけば利用が浸透する可能性も大きいだろう。
 
 競争環境が激化する小売業のなかで、今後バローがどのような戦略でさらなる躍進を見せるのか引き続き注目したい。===========================================
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