コンセプト、看板メニュー、SNS…行列店に学ぶZ世代に支持される店の作り方
ハイボールと唐揚げのセットが
ハッピーアワーでわずか“100円”
同店の人気を押し上げた秘策が、「ハッピーアワー」だ。1個75g(揚げる前の状態で)という大きな骨つき唐揚げ2個と角ハイボール1杯の「ハイカラセット」を、16時〜18時限定でなんと100円で売る。
ハイボールと唐揚げ2個分の原価を合わせると100円弱かかり、それだけでは利益が無いが、原価率6%の「お通し」(300円)と一人一皿オーダー制にすることで利益は必ず出る仕組みだ。
「セットだけで帰る人はまずいないので、いろいろ食べていただける上に早くから席が埋まり、100円というお値打ち感が利用動機に繋る。さらにワンコインのインパクトからSNSでも発信してもらえる。人に話したくなる話題性が重要です」と石原氏。原価が高いビールを低価格にしたハッピーアワーで集客するよりも利益貢献度が高いことは明白だ。
さらに100円でもキンと凍らせたジョッキでハイボールを提供する細やかなサービスも忘れない。またハッピーアワーの告知についても、黒板や立て看板などでハッピーアワーの時間帯だけでお知らせする店舗が多い。これは、振り客(通りがかりの客)を集客する目的が多いためだが、同店ではグランドメニューのメニュー表に堂々と書くことで、ハッピーアワーを逃したお客に対し「次は早い時間に予約して来よう」と思わせる。100円のお値打ち感を強調して常にPRし、来店動機となる伏線を張る。
昼だけの看板で行列店に
一方、ランチにもヒットのカラクリがある。昼は「牛のカツレツ」を看板にし、「牛のカツレツ定食 並150g 1480円」や牛のカツレツハーフサイズに夜の名物、唐揚げをセットにした「MIXフライ定食ダブル 1480円」など約7品を提供している同店。昼の看板に「牛のカツレツ」を据えた理由について石原氏はこう答える。
「SNSの検索トップは何かご存知ですか?それはネコと肉です。また神戸グルメのイメージから肉にしました。さらに、当店の唐揚げは2度揚げするためフライヤーが二つあり、そうした機器や揚げる技術を活かせる料理としました」
“神戸”をキーワードに検索すると洋食文化のイメージから、「牛カツ」「ビフカツ」がヒットする。しかし、神戸市内の洋食店をリサーチした結果、どこも割高な価格設定のため、勝機を感じたと話す。実際に神戸の老舗グリルでは「ビーフカツレツ」が単品で1700円前後、ご飯やスープ、デザート、コーヒーなどが付くと3000円前後だ。そこで『TOKI』では主役のビーフカツレツに、ご飯、味噌汁、温泉卵、小鉢、フルーツを付けて前述の価格に設定した。
「サラリーマンのランチとしては高いですが、買い物と観光に訪れる神戸・元町エリアの特性から“プチ贅沢”をテーマに若年層でも手が出る価格にしました。当店は夜の売上で利益を出しているため、原価をかけてお値打ちに提供できる」と話す。
こうして同店では昼の平均客単価1400円前後で月間1441人を集客する。