コンセプト、看板メニュー、SNS…行列店に学ぶZ世代に支持される店の作り方

2022/09/23 05:55
    佐藤 良子
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    ハイボールと唐揚げのセットが
    ハッピーアワーでわずか“100円”

    ハイカラセット100円。淡路鶏の骨付もも肉を使うことで骨周りの旨味を味わうことができ、業者は骨を外す手間が省けるため比較的安価で仕入れることができる
    ハイカラセット100円。淡路鶏の骨付もも肉を使うことで骨周りの旨味を味わうことができ、業者は骨を外す手間が省けるため比較的安価で仕入れることができる

     同店の人気を押し上げた秘策が、「ハッピーアワー」だ。1個75g(揚げる前の状態で)という大きな骨つき唐揚げ2個と角ハイボール1杯の「ハイカラセット」を、16時〜18時限定でなんと100円で売る。

     ハイボールと唐揚げ2個分の原価を合わせると100円弱かかり、それだけでは利益が無いが、原価率6%の「お通し」(300円)と一人一皿オーダー制にすることで利益は必ず出る仕組みだ。

    「セットだけで帰る人はまずいないので、いろいろ食べていただける上に早くから席が埋まり、100円というお値打ち感が利用動機に繋る。さらにワンコインのインパクトからSNSでも発信してもらえる。人に話したくなる話題性が重要です」と石原氏。原価が高いビールを低価格にしたハッピーアワーで集客するよりも利益貢献度が高いことは明白だ。 

     さらに100円でもキンと凍らせたジョッキでハイボールを提供する細やかなサービスも忘れない。またハッピーアワーの告知についても、黒板や立て看板などでハッピーアワーの時間帯だけでお知らせする店舗が多い。これは、振り客(通りがかりの客)を集客する目的が多いためだが、同店ではグランドメニューのメニュー表に堂々と書くことで、ハッピーアワーを逃したお客に対し「次は早い時間に予約して来よう」と思わせる。100円のお値打ち感を強調して常にPRし、来店動機となる伏線を張る。

    昼だけの看板で行列店に

    ランチの「牛のカツレツ定食」。豪州産、または米国産の牛肉150gに微細なパン粉をまとわせて2度揚げし中心レアに。断面を上にして盛り付ける
    ランチの「牛のカツレツ定食」。豪州産、または米国産の牛肉150gに微細なパン粉をまとわせて2度揚げし中心レアに。断面を上にして盛り付ける

     一方、ランチにもヒットのカラクリがある。昼は「牛のカツレツ」を看板にし、「牛のカツレツ定食 並150g 1480円」や牛のカツレツハーフサイズに夜の名物、唐揚げをセットにした「MIXフライ定食ダブル 1480円」など約7品を提供している同店。昼の看板に「牛のカツレツ」を据えた理由について石原氏はこう答える。

     「SNSの検索トップは何かご存知ですか?それはネコと肉です。また神戸グルメのイメージから肉にしました。さらに、当店の唐揚げは2度揚げするためフライヤーが二つあり、そうした機器や揚げる技術を活かせる料理としました」

      “神戸”をキーワードに検索すると洋食文化のイメージから、「牛カツ」「ビフカツ」がヒットする。しかし、神戸市内の洋食店をリサーチした結果、どこも割高な価格設定のため、勝機を感じたと話す。実際に神戸の老舗グリルでは「ビーフカツレツ」が単品で1700円前後、ご飯やスープ、デザート、コーヒーなどが付くと3000円前後だ。そこで『TOKI』では主役のビーフカツレツに、ご飯、味噌汁、温泉卵、小鉢、フルーツを付けて前述の価格に設定した。

     「サラリーマンのランチとしては高いですが、買い物と観光に訪れる神戸・元町エリアの特性から“プチ贅沢”をテーマに若年層でも手が出る価格にしました。当店は夜の売上で利益を出しているため、原価をかけてお値打ちに提供できる」と話す。

     こうして同店では昼の平均客単価1400円前後で月間1441人を集客する。

     

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