日本酒類販売が通期決算を発表、倉本新社長は何を語ったのか
酒卸大手の日本酒類販売(東京都/倉本隆社長:以下、日酒販)は、2022年3月期決算を発表した。連結売上高は5129億8100万円、経常利益は22億7100円(対前年度比7.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は13億8300万円(同18.4%増)を計上。単体ベースでは、売上高4894億2600万円、経常利益は23億1700万円(同5.0%増)、当期純利益15億4700万円(同8.8%増)だった。この詳細について、同社幹部の談話にて振り返りたい。
(同社は2021年度の期首から「収益認識に関する会計基準」を適用したため、売上高の対前年度比は公表していない)
「今後の飛躍に向け、エネルギーを蓄えた1年」
田中正昭会長(22年6月29日付で取締役会長に就任):2021年度も度重なる緊急事態宣言やまん延防止など重点措置の発令を受け、新型コロナウィルスの感染に翻弄された。酒類については飲食店での提供の制限と解除が繰り返され、「業務用」にとって厳しい状況が続いた。
一方で、「家庭用」は堅調に推移した。けれども一部では、20年度の反動減が見られるなど、販売環境は厳しさを増している。
コロナ禍において、酒類を取り巻く環境の変化は大きく、19年度比で言えば、当社は酒類の売上が約8割まで減少した。もともと、「業務用」と「二次卸」のシェアが高かったこともあって苦しい状況が続いている。
21年秋の緊急事態宣言解除、制限の緩和以降、「業務用」の対象業態は回復基調となっており、明るい兆しも見えつつある。しかし、新型コロナ以外でも原材料や資源価格の高騰、円安などが消費者の生活防衛姿勢に影響を及ぼすと予想され、まだまだ不透明な状況が続くだろう。
他方、社内に目を向けると、新型コロナへの対応過程において、ここ数年間取り組んできた卸機能におけるオペレーション改革やDX(デジタル・トランスフォーメーション)化が当初の計画以上の速度で進展した。
当社の社内表彰制度である「カイゼンアワード」でも意欲的にRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の活用や紙データのデジタル化による効率化など成功事例の水平展開に取り組む事例が多数発表されている。従業員の高い改善意識のもと、全社最適の追求が進み、経費削減や業務効率化につなげることができた。また、結果として当社における働き方改革が進んだ。
その意味では、厳しい環境下ではあったが、今後の飛躍、次なる成長に向けたエネルギーを蓄えることができた意味のある1年だった。