競合他社が非家電に注力する中であえて家電に特化する! ケーズHDの勝ち残り戦略

棚橋 慶次
Pocket

寡占化進む家電量販店、ケーズの勝ち残り戦略は?

 2023年3月期は、売上高が対前期比5.7 %増/前期から427億円増の7900億円、営業利益が同3.0 %増/同12億円増の430億円、当期純利益が同5.1%増/同14億円増の300億円と増収増益をめざす。

 前期は季節要因に振り回されたが、今期は順調にエアコンなどの売れ行きが期待できそうで、上海ロックダウンの影響などを考慮しても、全店売上高および既存店売上高のいずれもプラスが見込めるようだ。出店攻勢も強気姿勢が続き、2023年3月期も新たに18店舗がオープンする計画だ。

 国内における家電販売の市場は現在7兆円台といわれているが、少子高齢化もあり今後大きな伸びは期待できない。スマートホン普及の影響によるオーディオ・ビジュアル機器の需要減少、かつては利幅の大きかったパソコン・大画面テレビの価格低下もアゲインストだ。

 大量仕入れと安売りを武器に、これまで街のメーカー系列電気店や総合スーパーなどの非家電店からシェアを奪って急成長してきた家電量販店だが、これからは量販店同士の競争はますます熾烈になっていく。コジマをはじめ、競争に敗れ吸収合併された量販店も少なくなく、家電量販店上位7社でシェアが7割を占めるほどまで寡占化が進んでいる。

 ヤマダホールディングス、ビッグカメラに次ぐ3位に食い込んでいるケーズとて、いつ飲み込まれるかわからない。しかしケーズHDは決して規模を追わない、「頑張らない経営」を真骨頂とする。競合他社と明確な差別化戦略を打ち立て、生き残りに勝負をかけるのだ。

家電特化で勝ち残る!

 その戦略の1番目が、家電商品の「現金値引き」だ。多くの家電量販店がポイント値引きによる囲い込みに躍起となるが、顧客にとっては使いづらい。対して、ケーズHDの現金値引きはシンプルで分かりやすい。

 2番目に家電商品への特化が挙げられる。家電商品の市場規模が頭打ちを迎える状況で、大手家電量販店各社は非家電商品へのシフトを急ぐ。上場家電量販店上位6社の売上高に占める非家電製品のウエートは年々上昇、直近では2割近くに達している。ドメインも、プログラミング教室など多少とも本業と関連のあるサービスから、リフォーム・日用品・さらには酒類まで、ほとんど無関係な商品にまで拡がっている。

 一方でケーズHDは、あくまで本業にこだわる。従業員にしても、雑多なものを売らされるより、家電に特化した方モチベーションが上がる。専門性に磨きをかけ、顧客に対してもよりていねいに接客できる。家電に専念するからこそ、特徴ある売場づくりにも力が入る。今期はIoTやAIといったつながる家電体験コーナーの開設を計画している。

 3番目は「安心パスポート」を核とする会員獲得だ。紙カードではじまった同施策も、現在はアプリ対応が進んでいる。安心パスポートでは、WEBチラシや限定クーポンといった情報を発信するほか、簡単な手続きで契約できる長期安心保障などアフターサービスに力を入れる。

 1947年、茨城県水戸市で加藤電気商会が開店、わずか3坪のラジオ販売店だ。設立から75年、ケーズは熾烈な競争を生き残り業界上位の座にまで上りつめた。家電販売で独自の経営方針を貫くことができるのか、今後に注目したい。

1 2

関連記事ランキング

関連キーワードの記事を探す

© 2024 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態