ファッションEC独走のZOZO コスメ領域でも急拡大できる「強さの源流」とは

2022/05/26 05:55
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    既成概念にとらわれないのではなく、あくまでもファッション愛の追求

    いずれもファッションを敬愛する同氏だからこその、純粋かつ理に適った発想だ。ブランドの意向とは別の値引きやツケ払いなどの施策では批判も受けたが、その目的はあくまでもファッション好きの消費者に少しでも負担なく購買してもらうこと。だからこそ、業界から反発を受けても、ファッションを愛するコアな層にはしっかりと響き、支持を大きく失うことはなかった。

    いわゆる世界観ということになるが、これらはファッションにおけるブランドのそれとは違う。前澤氏がアパレル事業者としてその一つひとつの想いを妥協なく具現化していく過程で、結果的に出来上がった結晶のようなものだ。だからこそ、ゾゾタウンはパッケージレベルからオリジナリティやワクワク感にあふれ、購入者を魅了するチカラをもつ。単にそのやり方を真似しても、同じような結果にはならないのは自明だろう。

    ゾゾコスメは今期100億突破へ

    同氏の社長退任後、2019年からあとを引き継ぐ澤田社長はその遺伝子を継承しつつ、ヤフーの強みも活かし、創業者とは対極といえる堅実な歩調でさらなる躍進を目指している。

    象徴的なのはゾゾコスメだ。肌の色を計測し似合うベースメイクの色を提案する「ZOZOGLASS」や高度なARとAI技術を駆使し、鏡を見ながら商品を試すような感覚で、様々なコスメアイテムをZOZOTOWNアプリ上で試すことができる「ARメイク」機能を提供するなど、利用者に商品の良さを最大限に伝えつつ、商品アイテムを大幅に拡充。ECモールとしての総合力をより向上させている。

    こうした施策効果もあって、同分野は順調に拡大。22年3月期の取扱高は57億円を計上した。23年3月期には、ギフトやメンズ領域へも進出し、一気に100億円の大台を視野に入れる。

     

    ZOZOは23年3月期はさらに、夏ごろをめどにコーディネートアプリ「WEAR」にフリマ機能を付与。ヤフーの強みを活かし、間口を拡大しながらテクノロジーを存分に活用してECショッピングの楽しみ方を最大化させることで、さらなる競合優位性の向上を図る。23年3月期は、売上高が9.1%増の1813億円、営業利益は3.7%増の515億円、純利益が4.1%増の359億円を計画する。

    前澤氏がつくりあげたZOZOイズムと、それを受け継いで深化させる術を知る澤田社長。ファッションを楽しむ「場」として、その購買プロセスにリアル以上の付加価値や利便性を提供できれば、いつの日かファッションECが店舗購入を脇へ追いやるパラダイムシフトが起こってもなんら不思議はない。

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