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売上高5000億円超、宅配に占める割合は約25%に! 生協の冷凍食品販売戦略

 食品宅配市場の拡大を背景に、生協では宅配事業の成長戦略の1つとして、冷凍食品事業の強化を打ち出している。新しい食生活スタイルが定着する中で冷凍食品の需要は根強く、商品力強化と物流・生産体制の整備で、冷凍食品市場でのシェアを高める方針だ。

在宅時間増で一気に拡大
調理冷食がけん引

日本生協連冷凍食品部の長門哲也部長(写真右)、神津茜美氏(写真左)

 一定期間保存でき、計画的に利用できる冷凍食品は、週1回定曜日配達の生協宅配に適したカテゴリーであり、物流、配送のコールドチェーンの確立を進めてきた。生協宅配の冷凍食品事業は、全国生協の宅配供給高(小売業の売上高に相当)2兆円1000億円うち約25%、5000億円強に達する。

 2010年頃まで横ばいだった冷凍食品事業は、冷凍食品市場の拡大で成長基調となり、20年はコロナ禍の影響で一気に拡大した。

 日本生活協同組合連合会(以下、日本生協連)が発表した冷凍食品事業(コープ商品)の21年度供給高は584億円(20年度比100.2%)と過去最高となった。また、冷凍食品市場の拡大期以前の05年度との比較では1.5倍と大きく拡大している。

 冷凍食品事業の分類別動向では、全体供給高の約6割を占める調理冷食(麺類、米飯類、スナックなど)が同103.6%とけん引した。畜産(唐揚げ、焼き鳥、ハンバーグなど)は、東南アジアでの主力品の製造停止が影響し前年割れとなった。冷凍野菜は20年度の急伸の反動で、またアイス冷菓は冷夏の影響で同じく前年割れとなった。

子育て世帯向けの
冷凍食品も好調

子育て世帯から支持を高める「きらきらステップ&キッズ」シリーズ商品

 冷凍食品分野では、生協が独自に開発した子育て世帯向け「きらきらステップ&キッズ」も好調に推移している。17年に幼児食期向けに発売した「きらきらステップ」は21年に409%(17年比)、20年に発売した歯が生えそろった後の幼児向け「きらきらキッズ」は196%(20年比)と大きく伸長した。

 「離乳食期から6歳頃まで、食に対する悩みを解消し、子育てがより楽しくなるような商品をめざしてスタートした」(日本生協連冷凍食品部の神津茜美氏)とし、冷凍食品から飲料、レトルトパウチ食品など広がっている。シリーズの5周年を迎える今年は、記念イベントや新商品開発で「きらきらステップ&キッズ」の認知アップをめざすという。

組合員目線で核商品づくり
環境対策、コスト改善も重点

 21年度の概況について日本生協連冷凍食品部の長門哲也部長は「需要増による配送体制のキャパオーバーや海外工場でのクラスターなど、商品供給を制限せざるを得ない状況もあった。しかし、在宅時間の増加を背景に調理冷食が牽引し、好調に推移した」と話している。供給制限などによるチャンスロスは冷凍食品の供給の2%と見ており、22年度は、複数工場の配置や会員生協の物流インフラ整備で安定供給をめざす。

 また、22年度の重点政策として①核商品づくり=組合員目線でブラッシュアップ、②コスト改善=原価の上昇傾向に対し、商品設計見直し、③価値訴求型=おいしさや価格のほか、使い勝手、健康ニーズ、環境配慮型の商品開発追求など、商品力アップに取り組む。

冷凍物流の再編
キャパ対策とアイテム拡大

21年11月に稼働したコープこうべの「見津が丘冷凍集配センター」(兵庫県神戸市)
1日最大35万点をピッキングする最新鋭の冷凍専用センターである

 こうした冷凍食品事業の動向を受け、会員生協や事業連合では、要冷の宅配物流基盤整備が進んでいる。この1年を見ると、コープこうべの「新冷凍集配センター」(兵庫県神戸市)、福井県民生協の「要冷物流センター」(福井県福井市)を新設。さらにコープデリ連合会は冷凍専用では生協最大規模の「印西冷凍センター」が今年6月にリニューアル稼働する。

 今後は、パルシステム連合会や、東都生協、生活クラブ連合会、コープ九州事業連合なども要冷物流センターの新設・リニューアル計画を進めている。大幅な受注増に対応した物量キャパのアップと商品アイテム数の拡大が狙いだ。

 近年の生協の宅配事業の動向では、ドライグロサリー分野がほぼ横ばいに対し、冷蔵を含めた要冷食品が事業成長をけん引している。食品宅配の市場が拡大し、競争が強まるなか、要冷品事業が成長のカギを握る。