「売らない店」の構成比4割突破のマルイ 急ピッチで進める「3重の収益構造とは」

2021/12/23 05:55
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    上期の新規出店テナントのうち85%が「売らない店」

    上期の既存店の状況は、昨年同時期に比べると改善した。「池袋マルイ」の取扱額は前年同時期に比べ31.4%増、「博多マルイ」でも44.5%増と、都心・地方ともに増えた。しかし、コロナ前の2019年上期と比較すると、上期の取扱高は69%の水準にとどまり、大きく回復したとは言えない。

    同社加藤浩嗣CFO(最高財務責任者)も「(コロナの感染拡大が始まった)昨年は異常な一年だったので、上期の数字と単純に比較することは難しい。緊急事態宣言が解除された10月以降も、今のところリベンジ消費は期待した程度ではなく、従来のようなアパレルの大規模出店も考えにくい。コロナ禍で変化したライフスタイルに沿ったトレンドを掴むことが重要だ」と話し、業態の変化の必要性を訴えた。

    アフターコロナの世界を見据え、丸井が取り組むのが体験型店舗を主体とする「売らない店」を入口にした「小売×フィンテック×未来投資(共創投資・新規事業投資)」の三位一体戦略だ。

    「売らない店」とは、D2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)ブランドなどネット企業を誘致し、店舗を単なる販売の場としてではなく、デジタルネイティブ世代とのタッチポイントとして捉え、オンラインとオフラインを融合した「体験型」のプラットフォームだと位置づける。

    上期に新たに出店した109のテナントのうち、85%を「売らない店」が占めている。20218月にはD2Cの人気メンズスキンケアブランド「BLUK HOMME(バルクオム)」が、新宿マルイ本館に初のリアル店舗を出店した。現在、売らない店は全売場面積の43%を占めており、20263月期にはこの数字を70%まで高める構えだ。

    もっとも、近年は他百貨店でもD2Cブランドの誘致が進んでいる。丸井は競合から抜きん出るために、①ブランドからの家賃収入、②カード発行による長期収入、③未上場のブランドに出資(未来投資)し、IPO(新規株式公開)時に得る株式売却益と、3重の収益構造を構築することを目指す。

      

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