コンビニエンスストアは好調というけれど…
「コンビニエンスストア業界が好調」というのは業界内外の定説と言っていい。
《東日本大震災以降、ライフラインとしての価値を消費者が認識するとともに、各企業の努力により、「女性」「高齢者」などの新しい市場奪取に成功している》と――。
数字も残っている。日本フランチャイズチェーン協会(東京都/山本善政会長)がまとめた主要コンビニエンスストア10社の2013年の売上高は9兆3860億円(対前年度比4.0%増)。セブンーイレブン・ジャパン(東京都/井阪隆一社長)とファミリーマート(東京都/中山勇社長)が過去最多となる1500店舗の出店を計画するなど大手チェーンが出店攻勢をかけたこともあり、2月を除く各月が前年実績を上回った。
しかし、私は天邪鬼ゆえに、コンビニエンスストアの過去の既存店推移を見ながら、「本当にそうなのか?」と疑ってしまう。
それというのも、コンビニエンスストア市場は、2007年度まで8年間にわたって既存店舗はマイナス成長。2008年度に“タスポ(成人識別ICカード)特需”で7.1%伸びたものの、その反動からか2009年度と2010年度は再び前年割れを喫した。
そして、東日本大震災が起こった2011年度は、“特需”で増加。またその反動だろう。2012年度は減少している。
つまり、過去13年間のうち、“特需”のあった2年を除いて、既存店舗は割れ続けていることになる。
直近2013年度の既存店舗も対前年度比では1.1%減。コーヒーなどのカウンター商材の販売が好調だったものの、たばこ・雑誌購入者の減少が足を引っ張った。
全店ベースの客数は同4.0%増だったが、既存店ベースの客数は同1.0%減。全店ベースの客単価は605.7円(同0.01%減)、既存店ベースは596.8円(同0.2%減)とともに前年を下回るという結果になっている。
そこでコンビニエンスストア大手4社、すなわち、セブンーイレブン・ジャパン、ローソン(東京都/新浪剛史社長)、ファミリーマート、サークルKサンクス(東京都/竹内修一社長)の既存店舗実績と過去13年の傾向を照合してみた。
すると2009年度の“タスポ効果”反動減のところまでは、業界のトレンドと各企業の好不調の波が驚くほど合致していることが分かった。
しかし、2010年度以降は、業界動向とは異なる動きを見せる企業が出てきた。
セブンーイレブン・ジャパンとローソンの2社の既存店舗は、2010年度もプラス。東日本大震災の2011年度、その反動減のリスクが予想された2012年度ともプラス(ローソンは0.0%成長と横ばい)と3年連続で増加傾向をキープしているのだ。
下記の「備考」の数字を確認すればわかるように、同じ大手コンビニエンスストアと言っても、一括りではなく、2010年度以降は、企業ごとに好不調はまだら模様なのである。
しかも、2013年12月末現在での店舗数は4万9323店舗(同5.2%増)。市場が飽和に至ると言われている5万店舗は目前に迫っている。
今後、コンビニエンスストア業界は、企業間競争の激化と優勝劣敗、そして店舗の大淘汰再編時代が到来するはずだ。となれば、コンビニエンスストアという業界全体を好不調で評価することは、ますますナンセンスになるものと考えられる。
さて、冒頭の《東日本大震災以来、ライフラインとしての価値を消費者が認識するとともに、各企業の努力により、「女性」「高齢者」などの新しい市場奪取に成功している》という定説についてだ。
いまのところ、セブンーイレブン・ジャパンとローソンについては当てはまっていると言えるだろうが、業界全体としては、必ずしもそうとは言えない、ということが結論になる。
「備考」コンビニエンスストア各社の既存店舗増減(2012年度→2006年度:単位%)
●セブン‐イレブン・ジャパン 1.3、6.7、2.2、-2.1、5.2、-1.5、-1.9
●ローソン 0、5.4、0.8、-4.1、6.5、-0.8、-1.8
●ファミリーマート -1.6、4.4、-0.2、-2.4、7.1、0.9、-1.4
●サークルKサンクス ―、3.1、-1.4、-5.6、4.1、-1.8、-3.3
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