売上目標1400億円 アイリスオーヤマの2014年戦略
1月9日。アイリスオーヤマ(宮城県/大山健太郎社長)グループの賀詞交歓会が開かれた(@ホテルメトロポリタン仙台)。「明るい話を聞きたければ、アイリスオーヤマの賀詞交歓会に行け!」と言われる同会合で大山社長は、どんな話をしたのだろうか?(談:文責・千田直哉)
2013年は、“アベノミクス”効果によって、低迷していた日本の景気も上向きで推移した。とくに為替が1ドル80円台から100円台に短期間で円安にシフト。この後押しもあり、株価は一挙に高騰。年初との比較では5割強の株高になった。それが日本の消費を支え、個人消費も上昇傾向にある。
長く、円安に苦しんできた輸出企業の業績は回復している。
ただし、光が眩しければ、影も濃いものだ。日本は輸出立国ではあるが、現実問題としては輸出額よりも輸入額のほうが多い。そして輸入品においては、円安はコストアップと同義だ。
それが電力料金、ガソリン、灯油、一部食材の値上げ、あるいは当社の主力であるプラスチック原料の値上げにつながり、日本国民の負担が大きくなっていることにも留意したい。
さて、アイリスオーヤマを含む20社のグループ総売上高は2672億円(対前期比7%増)で税引前利益は281億円と利益率10.5%を確保した。
アイリスUSAは、アメリカの景気が上向いたこともあり、2ケタの増収増益を達成した。ヨーロッパや韓国においても増収増益をキープした。
ただ、中国の大連アイリスは、円安で日本向けの輸出の環境が厳しく、苦しい状況にあった。
アイリスオーヤマは、大量の商品を中国・大連工場から輸入している。関連子会社の取扱商品も中国からの輸入が多く、アイリスオーヤマの国内グループ企業にとって2013年は、円安・原価アップによって厳しい1年を強いられた。
そんな逆境の中ではあるが、国内子会社のアイリスチトセやアイリス・ファインプロダクツ、ホウトク、は新規得意先を開拓、また新商品開発効果で増収増益を確保した。
一方、アイリスプラザグループが展開するネットビジネス事業のアイリスプラザは、とても好調だ。日本ではネットシフトがどんどん進んでいると実感している。
ホームセンターのダイシンは残念ながら2013年も前年割れだった。ホームセンター業界全体が前年割れ、というトレンドの中で苦戦している。
次にアイリスオーヤマ(単体)の話をしたい。
昨春、家電市場に参入し、大阪にR&Dセンターを設立した。そして家電メーカーのOBを多数、雇用しスタートを切った。家電については商品開発も順調であり、2013年はIHが需要を創造し、業界全体の売上増にも貢献した。
また、現在、力を入れている調理器具ブランドの「ベルフィーナ」も順調だ。
インテリア商品では、とくに「エアリーマットレス」が好調で商品供給が間に合わない状況が夏場以降まで続いた。TV広告を打っている商品は、計画を上回る形で推移している。また、LED照明も法人向け事業を中心にことのほか順調だ。
ただ、以前にも話した通り、当社は円が1円安くなると、8億円のコストアップになる。ということは、2012年と比較すると約100億円のコストアップを強いられたことになる。為替については先手を打ってきたつもりだが、想像を遥かに超えるスピードで円安になったことで、営業利益段階では苦戦した。
売上面で苦戦をしたのは、LED照明の中のシーリングライトだ。一昨年は、これが大ヒット。需要創造によって、一気にトップシェアを奪った。だが、昨春から大手家電メーカーの“倍返し”ともいうべき反攻を受けた。シェアを重視する彼らの前に小売相場が2割ほど一挙に下がった。
我々もシェアはキープしたいが、赤字の商売はしない主義なので一気にシェアを下げてしまった。大手の在庫調整期間は2~3か月だろう、と考えていたところ、年末まで続いた。その結果、シーリングライトの売上は対前期比で5割増を計画していたものの、逆に2割下がるという憂き目にあった。ただ、年末からは市場は落ち着きを取り戻し、我々のシェアも回復基調にある。
もうひとつは、ペット用品の主力であるペットシーツだ。これは中国・大連工場で生産しているが、円安で原価が2割近く上がった。国内メーカーとの低価格競争の中でシェアを奪われた格好だ。
このようにボリューム商品の2つが伸び悩んだが、売上高1112億円(対前期比1%増)、経常利益は110億円と経常利益率10%を死守した。
アイリスオーヤマは一昨年、昨年と商品構成を大きく変えている。実際、売上に占める新商品(発売から3年以内)比率は56%と2013年も目標の50%を達成した。
これまでの主役である園芸、ペット、収納には、さらなる頑張りを期待するが、売上全体に対する構成比は漸減傾向にある。代わりに、家電製品やインテリア、調理器具などで需要創造に努めていきたい。
2014年は、4月の消費税増税により、景気は停滞すると予想する。1月~3月は駆け込み需要で若干良いかもしれないが、4月以降はその分以上の消費ダウンになるだろう。
そのトレンドに負けないように当社は、得手とする需要創造・市場創造に専心し、アイリスオーヤマ(単体)では1400億円の売上を目指す。そのためには今年は、昨年以上にメディア露出とTV広告などに取り組み、よりブランド価値を高めていく。
それと昨春に発表したコメビジネスについては、舞台アグリイノベーション(宮城県/針生信夫社長)の工場が今年の6月に亘理町(宮城県)に竣工する。昨年秋口から、当社の角田工場を急遽模様替えをしてテスト販売を行っている。
また、昨年、アイリスフーズという会社を新設した。食品スーパーや生協を中心に積極的に販売し、新鮮パックコメの売上150億円を目指す。同時にコメ関連商品の開発を強化し、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)に対応したコメビジネスの市場創造を図っていく。
取引先の販売支援ということでは、SAS(セールス・エイド・スタッフ)を500人から800人に増員し、マネキンの活用と併せて「売った売上(=実際にレジを通過した売上)」をつくる需要を創造する。
今のところ新年の各企業のトップの予想は「明るい」というものが圧倒的だ。
ただ、私の本音は昨年と同じようなことが今年も起こるはずがないと見ている。株価が5割上がる、為替がまた2割も円安になる、ということはマクロ経済的な観点から言ってもないだろう。
正月早々、暗い話はしたくないが、2014年は、そういうことを頭に入れながら、楽観的に前向きにチャレンジしていきたい。
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