これからのリタイア予備軍には「タイム」が必要である
ここ数年、講演会に出席すると講師が“ツカミ”としてよく使っている話に、「これからの高齢者には『キョウイク』と『キョウヨウ』が必要です」というものがある。
ここでいう「キョウイク」とは教育ならず「今日、行くところ」。「キョウヨウ」とは教養ならず「今日の用事」を意味する。
「歳を取ったら自宅ばかりにいないで外出しましょう」という意味になる。
これをマネして、私なりに新しい話をつくるなら、「これからのリタイア予備軍には『タイム』が必要である」と言いたい。
「タイム」とは《退夢》という文字を当て、退職後に叶えたい夢を意味する。
サラリーマン生活に、ある程度のゴールが見えてくると、定年後の生活設計を夢想するようになる。
「リタイア後は何をしようか?」
しかし、在職中の忙しさにかまけて、ほとんどのサラリーマンは、実際に引退するまでまったくの手付かずとなり、退職後に慌てふためく結果になることが多い。
「タイム」とは、その夢を持ち、夢を叶えるために動き出そう、ということである。
平均現役引退年齢29歳と選手寿命の短いプロ野球選手は、「タイム」を持っている人たちが多いので参考にしたい。
古くは阪神タイガースで活躍したランディ・バース選手だ。引退後は、米国に戻り、酪農家・小麦農家として成功を収めている。最近なら、同じ阪神の現役、マット・マートン選手だ。引退後には、復学して実業家になることを夢として掲げている。
また、名将・野村克也さんは、監督を務めるたびに若手選手を前にして、現役以後の人生の方が長いのだから、勉強をして、貯金をして、次の夢をもつことを奨励してきた。
そう言えば、あるネットリテーラーのトップ(51)も同じような話をしていた。
「あと2年程度で会社をやめて、小売業のマーケティングの研究とノンフィクションの作品を書いてみたい」。
その実現性はともかく、51歳の彼が退職後の生活を具体的に詳細に考えていることが素晴らしい。仕事のできる人とは、何と先を見ているのだろう、と感服させられるところだ。
定年後にあたふたしない――。
人生にタイムをかけ、「タイム」することをお勧めしたい。
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