自らの手で陳腐化させる
大きな売上と利益を上げている既存店舗にリニューアルのメスを入れることはなかなかできないものだ。
何もしなくとも売れており、利益を上げているわけだ。投資は無駄に思えるだろうし、工事期間中は店舗を閉鎖しなければいけないかもしれない。そこから生じる販売機会ロスを考慮すれば、順当な判断と言えるだろう。
ただ、いまは儲かっている店舗ではあっても、イノベーションを怠れば、競争力は日ごとに低下していく。
そこに競合企業が最新型店舗で攻め入ってくれば、状況は一変。一気にピンチに追い込まれてしまうことは必至だ。
マーケティングの父、フィリップ・コトラーは『コトラーのマーケティング・コンセプト』(東洋経済新報社)のなかで次のように書いている。
《「製品が駄目になる前にどうして手を加えなければならないのだ」。
あらゆる競合他社が当該製品を研究し、弱点を発見しようとしている。競合他社が改良する前に自ら改良することが重要だ。他社が自社製品を陳腐化させる前に自らの手で陳腐化させるべきなのである。》
上の「製品」という言葉を「店舗」に置き換えてみると、儲かっている既存店舗に手を入れないことがいかに愚策であるのかが見えてくる。
儲かっている時にこそ、万全のチェックが必要だ。いま儲かっている既存店舗にこそ、イノベーションのメスを真っ先に入れたい。
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