ホームデポと《サーチエンジン・オプティマイゼーション》
EC(電子商取引)を利用する多くのお客は、グーグルやヤフーなどの検索エンジンを使い、どこかのサイト(=企業、店舗、商品)にたどり着くという購買行動を取る。
そこで多くのサイトは、《サーチエンジン・オプティマイゼーション》を活用している。《サーチエンジン・オプティマイゼーション》とは、検索エンジンを運営する企業に料金を支払い、お客がある「キーワード」を打ち込んだ時に、検索結果の上位に自社のサイトが表示されるようにする、というものだ。
《サーチエンジン・オプティマイゼーション》を活用するに当たってもっとも大事なことは、「キーワード」の設定だ。自社と自社の店舗、自社で取り扱う商品(サービス)を連想させる「キーワード」をお客に打ちこんでもらえなければ、この機能自体が無意味になるからだ。
この課題を解決するために、多くの企業は、社内に辞書を抱えている。
どういう「キーワード」で自社が展開する商品(サービス)を探しに来てもらえるのかを予想して、とにかく思いつくままに書き出していく。ポイントは単語を膨大に集めることだ。
「キーワード」は、自社の取扱商品(サービス)の増加や時間軸で変わっていく可能性があるから、随時、メンテナンスをしてアップデートしなければいけない。
もうひとつの方法はメタタグに様々な「キーワード」を入れたり、URLを少し工夫したり、検索エンジン企業の算法(アルゴリズム)を予想しながら、サイトのアクセス数を上げることだ。
この《サーチエンジン・オプティマイゼーション》を利用し、検索エンジン会社に料金を支払っている企業のひとつに世界最大のホームセンター企業ホームデポがある。
ところがホームデポは、上記に挙げた2つの「キーワード」収集方法を実践していない。
なぜなのか、を説明する前に、少しホームデポについて記しておきたい。
ホームデポは、全米(プエルトリコ、米領バージン諸島を含む)、カナダ、メキシコ、中国などに約2200店舗を展開するホームセンター企業である。平均売場面積は、約9500㎡(+ガーデン売場約2000㎡)で、ここに4万アイテムを揃える。それに加えてネット販売では、実に25万アイテムを展開している。
ホームデポが扱う商材は、家電(Appliances)、バス(Bath)、建築資材(Building Materials)、装飾(Decor)、ドアと窓(Doors & Windows)、電気(Electrical)、フローリング(Flooring)、キッチン(Kitchen)、照明&天井ファン(Lighting & Ceiling Fans)、木材&複合材(Lumber & Composites)、アウトドア(Outdoors)、ペンキ(Paint)、配管(Plumbing)、ストレージ&オーガニゼーション(Storage & Organization)道具&ハードウエア(Tools & Hardware)――と実に幅広い。
しかも、それらの商品をDIY(Do it yourself:購入して自分で取り付け)はもちろん、BIY(Buy it yourself:購入して取り付けは業者)やSIY(Supervise it yourself:商品選択も取り付けも業者)など多岐にわたる手法で販売している。
つまり、これらを組み合わせた商品や工事を含むサービスがホームデポの売り物であり、それぞれのカテゴリーや商品を浮かび上がらせる「キーワード」は莫大な量に上り、それらを設定するには、大変な労力を要してしまうことがわかる。
たとえば、「自宅の床をタイルに張り替え、床暖房を入れる」という工事をしたいお客を想定した場合は、「床 タイル 床暖房」の「キーワード」くらいはすぐに思いつくかもしれない。しかし、実際のお客は、想定内に収まるほど単純ではない。
逆に可能な限り、お客を先回りする「キーワード」を用意しておけば、ECでは同業他社に対して優位性を保てる。
ではホームデポはいったい、いかにして「キーワード」を集めているのか?
実は、同社のホームページ(HP)内に検索エンジンを設けているだけだ。
HP内の検索エンジンの活用でお客は、自分が必要とする商品を比較的簡単に探し出すことができるようになる。
一方のホームデポは、HP内の検索エンジンを「キーワード」の収集に使っている。
結果として、自動的に辞書ができ上がるという寸法だ。
まさに一石二鳥である。
そして、集めた単語集の中で、もっとも利用頻度の高いワードから順に並べ替え、「キーワード」に引っ掛かるようなURLサイトをつくり、それをグーグルやヤフーのような検索エンジンの《サーチエンジン・オプティマイゼーション》を活用することで上位に浮上させている。
たったこれだけのことで、ホームデポの社員は呻吟して「キーワード」を捻り出したり、上位に来るものを予想したりしなくてもよい、という仕組みになっているのだ。
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