インド市場のキーワードは「Small is big」
1998年にインドに行った。
デリー、アグラ、ジャイプールのゴールデントライアングルを周遊するというツアーに乗り、マハラジャ(藩主)が住んでいた建物を改築したホテルに泊まるという大名のような旅だった。
パキスタンとの関係が緊張していた時期故の格安ツアーだったからだが、道中、路上生活者や物乞いなど、市民の貧しさばかりに目を奪われ、嫌な気分で帰国した。
そのインドがここにきて消費地としても生産地としても注目を集めている。
12月7日に、日本小売業協会主催の「インド最新流通セミナー」(@日本商工会議所)が開かれたので採録したい。
現在、インドの人口は11億8000万人であり、中国に次いで世界第2位。年率1.15%で人口増加しており、2030年には世界第1位になると言われている。
注目したいのは、平均年齢だ。日本の48歳、中国の37歳に対して、インドは29歳。人口の50%以上が25歳未満、65%以上が35歳未満と若い国である。
年収150万円~600万円の中間層が1億8000万人にまで増え、凄まじい消費力を見せるようになったものの、BOP(ボトム・オブ・ピラミッド)の貧困層も全体の60%を占めており、国民全体が潤っているわけではない。
ところが、単純計算で7億1000万人もいるから、この貧困層の需要は侮れない。
最近のインドは、「Small is big」と言われているほどだ。「貧困マーケットが大市場だ」という意味である。
この層に向けて、シャンプーや洗剤などは小容量パックが販売されており、実際に売れている。現在の収入では、1ボトルを丸ごと購入することはできないが、1ルピー(約2~3円)くらいの価格の小分けならBOPでも購入できるということで商品化されたものだ。
BOPの携帯電話はプリペイド式が主流で、100~200ルピーのモバイルチャージカードが良く売れているという。
また、2000~3000ルピーするブランド物のジーンズなどは、リボルビングの支払い形式で自分の収入よりも背伸びしながら購入するのだという。
もちろん、将来を展望すれば、貧困層は永続的に貧困層なわけではない。
英語が公用語の1つであるインドは、欧米企業のコールセンターなどの有力なアウトソーシング先だからだ。
たとえばスイスのUBS(正式名称:UBS AG)がインドにアウトソーシングの事務所を設立しただけで、1万人単位の雇用が発生している。その職場のビルが建ち、周辺には社員寮としての高層タワーが建設され、社員が住むようになる。そこに街が生まれ、商業施設が誘致される、などということは日常茶飯事だ。
先進各国が不況にあえぐなかで2010年度も9%の経済成長を見込むインドの爆発力には、全世界が注目せざるをえなくなるだろう。
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