円高の善し悪し PART2
円高が止まらない。昨日の東京外国為替市場では、一時、「1ドル=72円82銭」と東京市場の最高値を記録した。
このBLOGでは、昨年の10月6日に「円高の善し悪し」と言うタイトルで円高について言及している。
「円高=悪」という見方が圧倒的だけれども、実際は日本屈指の経済人でも本当のところは分かっていない、という内容だ。
http://diamond-rm.net/articles/-/4090
「通貨高で破綻した国はない。だから日本は、政治が円高を逆手に取った政策を掲げ、実施すべきだ」と楽観的なのは双日総合研究所主任エコノミストの吉崎達彦さんだ。
では、流通業界の見方はどうか?
総合商社の丸紅(東京都/朝田照男社長)代表取締役副社長から2010年にダイエー(東京都)社長に就任した桑原道夫さんは次のように見解を示してくれた。
「いまの極端な円高は日本経済にとって明らかにマイナスだ。とくにグローバルな事業展開をしている企業には大きな打撃を与える。たとえば、丸紅は海外からの収益が8割に上っている。1年前は『1ドル=85円』だったものが75円になるということは、同じ連結利益額でも円換算しただけで12%目減りしてしまうことを意味する。日本の企業は、そこをベースに従業員の給与も株主への配当も決めている。消費者心理にも暗い影を落とすことになるのは自明の理だ」
「事業収益に為替ヘッジをかければいい、と考えるかもしれない。だが、現在の制度上で為替予約できるのは初めの出資金のみであり、事業収益はできないことになっている。しかも、今後IFRS(国際会計基準)が導入されると、期間損益の問題だけではなくなる。純資産に当たる包括損益に海外からの剰余金が加算されることになり、円高が進めばこれも減額してしまうことになり、財務状況が悪化してしまう」
「その結果、日本企業は本社の海外移転をせざるをえなくなるだろう。日本市場から資金がどんどん外に出て行ってしまうことは日本の企業にとっても、われわれ小売業にとってもよくない」
なるほど。円高の見方は日本経済における立ち位置によっても随分異なる、ということが分かる。
(『チェーンストアエイジ』誌2011年12月1日号では、ダイエー桑原道夫社長のインタビューを掲載します。お楽しみに)
千田直哉の続・気づきのヒント の新着記事
-
2024/09/02
魅力的な売場…抽象的な誉め言葉の意味を明確化するために必要なこととは -
2024/08/02
日本酒類販売社長が語る、2023年の酒類食品流通業界振り返り -
2024/07/03
「何にでも感激する経営者」の会社が業績が良い“意外な”理由 -
2024/06/07
経費率16%なのに?ローコスト経営企業が敗れ去るカラクリとは -
2024/05/23
キットカットをナンバーワンにしたマーケター「アイデアより大事なこと」とは -
2024/04/15
スーパーマーケット業界のゲームチェンジャー、オーケー創業者・飯田勧氏の経営哲学とは