イオングループが掃除、洗濯、炊事、買物などをお手伝い
カジタク(東京都/澁谷祐一社長)という会社がある。
2008年8月、伊藤忠食品(大阪府/濱口泰三社長)の出資を受けて同社のグループ傘下に入った企業――。
漢字を当てると、きっと「家事宅」と書くのだろう。
事業内容は、①家事支援サービス(掃除/洗濯/炊事/買物/世話)のスタッフ派遣、②東京都内23区全域での宅配・巡回機能、③全国での家事支援サービスネットワーク、④コールセンター、⑤顧客データベース、構築・運用ノウハウである。
とくに注目したいのは、家事支援サービスを『家事玄人(カジクラウド)』としてパッケージ化し、百貨店や食品スーパー、ドラッグストアなどで店頭販売していることである。
「お店で買える手軽な家事支援サービス」を生活者に提案。そのきめ細かいサービスと斬新な企画力により近年大きく成長している。10年9月期の売上高は5億7300万円。
そのカジタクが2011年4月28日にイオン(千葉県/岡田元也社長)の子会社で店舗やマンションなどの清掃・施設管理を行うイオンディライト(大阪府/堤唯見社長)の子会社になることが決まった。
イオンディライトは2010年9月、マイカル子会社のチェルトを合併、2011年2月期の売上高は対前期比21.8%増の1709億円、営業利益は同20.7%増の120億円と業容を拡大している。
高齢社会がどんどん進展する日本にあって、家事代行サービスの潜在需要は非常に大きく、今後さらに大きなものになっていくはずだ。
実際、数年前から、この需要の拡大を見越して、多くのホームセンター企業や一部食品スーパー企業などが、生活者の自宅へ赴き、商品を届けたり、電球の付け替え、家具の取り付け、組み立て・修理、不用品の回収、作業代理などのサービスを提供し始めている。
ところが、生活者サイドには、他人が自宅に入り込むことへの不安やいくら請求されるかわからない価格に対する不信があった。
そうした観点から言えば、全国に8000店舗を展開するイオングループがこのビジネスに参入する意味合いは大きい。
“イオン”というコーポレートブランドは消費者に深く浸透しており、自宅訪問や手伝いを手放しで任せるには充分の信頼性があるからだ。
今後、イオンは、家事支援サービス事業から派生するありとあらゆる商品――。たとえば、掃除、洗濯、炊事、買物に関するすべての商品をユーザーから購入してもらえるようになるかもしれない。
その先に見えてくるのは、「ゆりかごから墓場まで」という人生の全需要に関するイオングループのシェアアップである。
いまは、地味で目立たない存在ではあるけれども、カジタク事業の買収はさまざまな可能性を秘めていると見る。
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