100円のボールペンを探しているお客に 1000円の商品を買ってもらう方法とは

成田直人

Milan Markovic/istock
Milan Markovic/istock

 僕が30万円ぐらいのパソコンを販売したときのことです。お客さまにショッピングクレジットというローンを組んでもらいました。その時、100円のボールペンを渡したら、「お前ふざけんな!」と怒られたんですね。

 「これから30万円の決済をするのに、どうしてこんな安いボールペン出してくるんだ。30万円に見合ったボールペンを持って来い!」と言われたのです。その時は店長から3000円ぐらいのよい感じのボールペンを借りてことなきを得たのですが、「なるほど、すごく失礼なことだったんだな」と気づかされました。

 このように、「(お客さまに)渡した時に失礼じゃない」という価値が1000円のボールペンにはあります。また高いものなので雑に扱わない、「だから、なくしにくい」という価値もあります。

お客さまに「1000円のボールペンが必要」と思ってもらう話の流れとは

 次に考えることは、「4色ボールペン+シャープペン」にはどんな価値があるのか、です。100円のボールペンは単色です。何色も必要だったとすればかさばるし筆箱が必要になる。1000円のボールペンは筆箱いらずです。

 さらに、1本で複数の色を使い分けられるから、メモを取る時に情報の整理がしやすいという価値もあります。5つ目は、書き味がなめらかで、メモをする時にかすれないという価値があります。

 今まで挙げた「なくしにくい」「渡した時に失礼じゃない」「筆箱がいらない」「複数色で情報整理しやすい」「メモする時にかすれない」といった点は、いずれもカタログには書かれていない価値です。100円の単色のボールペンと比較をした時に、顕在化する価値が、商品価値です。

 この価値に気づく上で必要なのが、「現状確認」と「潜在ニーズを顕在化する」ための質問です。

 例えば以下のやり取りを想像してみてください。

「どんなお仕事をされていますか?」

「営業の仕事をしています」。

「お客さまにペンを渡すことはありますか?」

「ええ」

「では、100円のボールペンと1000円のボールペンを同時にお渡しして、『どっちのペンを渡されて嬉しいですか?』

「それは、1000円でしょう」

 とまあ、こんな感じの展開になるわけです。つまり、お客さまに「そのシチュエーションなら、選ぶべきは1000円だよね」「こっちの方が高級感あるよね」と思わせることが大事なのです。その方がお客さまは腹落ちするわけですね。

 では、「なくしにくい」という価値を顕在化するにはどうしたらいいでしょう。

 以下のやり取りを想像してください。

「お客さま、普段ボールペンはどれくらいの頻度で購入されますか?」

「なくなったら買う感じかな」

「どれくらいの頻度でなくされますか?」

「そうですね。月に何回か、買いに来ていますね」

 ボールペンを買うためだけに何回もお店に来るのは、すごく面倒なことです。あなたも、使いたい時にボールペンが手元になくて焦ったり、イライラしたことってないですか?

 そこで、「いま僕たちが扱っているボールペンは1000円しますが、木製なので指なじみもよく、使い勝手もいいです。なにより、愛着がわくので、皆さん大切に使って下さり、なくしにくいですよ」とお客さまに言えるわけです。

 そう言われると、お客さまからは「毎回買いにいくのは実際面倒だしな。じゃあ今回は1000円のものを買ってみようかな」と思ってもらえるかもしれません。このように潜在ニーズが顕在化することで、商品の価値が高まり、「買ってみようかな」となるわけです。

 自社やこの商品・サービスはどんな価値を提供できるのか、どんな価値をお客さまに訴求すれば購入してもらえるのかを明確にしていきます。

 そのうえで、潜在ニーズを顕在化し、お客さまに「行動に移してもらう」ための質問を考え、設計していく必要があるのです。

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