福岡のソウルフード「ごぼう天うどん」に見た、うどんの奥深さ
仕事で全国あちこちへ行くが、毎度、楽しみなのはその地で長く愛される食の定番メニュー。いわばソウルフードだが、福岡県の場合、私は「ごぼう天うどん」推しである。麺、つゆ、具、すべてが、私の住む京都のうどんとまったく別物で、強烈においしい!今回は直方市で入った店をレポートする。
ファミリーレストラン最大手のすかいらーくホールディングス(東京都/金谷実社長)は2024年10月、うどんチェーン「資(すけ)さんうどん」を展開する運営会社、資さん(福岡県/佐藤崇史社長)を買収した。
資さんは1976年創業で、当初は北九州市を中心に店舗数を拡大。その後、後継者問題などを経て18年、投資ファンド傘下となってからは九州各地、さらに大阪府、兵庫県、岡山県に進出。24年11月には関東1号店となる「八千代店」(千葉県八千代市)をオープン。25年初頭には東京・両国に出店し東京都にも上陸する予定だ。大手ファミレス傘下となったことで、さらに広域で事業展開すると観測されている。
私は以前から度々、資さんうどんを利用していた。一番通っているのは「小倉」駅から徒歩数分にある「資さんうどん魚町店」。
出張時、夕食のため寄ることが多い。最初はおでんとビール、焼酎、そしてうどんでフィニッシュするのがお決まりのコースだ。
〆はいつも「ごぼう天うどん」(資さんうどんのメニューでは「ごぼ天うどん」)。関西では見たことのないメニューで、これが“サイコー”なのですよ。麺は柔らかい中にも、ほんの少しだけコシがあり、京都と比べると汁の見た目はやや濃く、甘いながらも深みがある。極めつけが麺の上に乗っている、ごぼうの天ぷら。
ごぼうの天ぷらは、天ぷら定食の一品として出てきても全然うれしくない。だがうどんの上に乗った途端、その実力を発揮する。衣が汁を吸い、だしの旨みがごぼうに染み込んだ結果、とてつもなくおいしい具に豹変するという印象である。
私を楽しませてくれる資さんうどんだが、今回、大手ファミレス傘下となることで、個性のない味になるのではとの懸念がある。ニュースのコメント欄にも同様の声が多数寄せられている。皆、心配しているのだろう。
しかし、九州にはまだまだおいしい「ごぼう天うどん」がある、というのが今回のテーマである。
少し前、私は仕事で福岡県直方市へ行った。その時、カメラマンやコーディネーターの方と、たまたま見つけたのが「英ちゃんうどん」という店だった。外観は、よくある定食屋さんのような感じ。ほかに目ぼしいところもないので、「ここで食事をしようか」と皆の意見がまとまった。
入店すると、午後1時を過ぎても席は8割がた埋まっていた。スマホで調べると、昼時には行列ができることもあるようだ。
「結構人気があるんだな」ぐらいに思い、案内された座敷に腰を下ろした。