福岡のソウルフード「ごぼう天うどん」に見た、うどんの奥深さ

2024/12/31 05:55
森本 守人 (サテライトスコープ代表)
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仕事で全国あちこちへ行くが、毎度、楽しみなのはその地で長く愛される食の定番メニュー。いわばソウルフードだが、福岡県の場合、私は「ごぼう天うどん」推しである。麺、つゆ、具、すべてが、私の住む京都のうどんとまったく別物で、強烈においしい!今回は直方市で入った店をレポートする。

福岡のソウルフード「ごぼう天うどん」

 ファミリーレストラン最大手のすかいらーくホールディングス(東京都/金谷実社長)は2024年10月、うどんチェーン「資(すけ)さんうどん」を展開する運営会社、資さん(福岡県/佐藤崇史社長)を買収した。

 資さんは1976年創業で、当初は北九州市を中心に店舗数を拡大。その後、後継者問題などを経て18年、投資ファンド傘下となってからは九州各地、さらに大阪府、兵庫県、岡山県に進出。24年11月には関東1号店となる「八千代店」(千葉県八千代市)をオープン。25年初頭には東京・両国に出店し東京都にも上陸する予定だ。大手ファミレス傘下となったことで、さらに広域で事業展開すると観測されている。

 私は以前から度々、資さんうどんを利用していた。一番通っているのは「小倉」駅から徒歩数分にある「資さんうどん魚町店」。

出張で定期的に足を運ぶ九州・小倉
小倉駅から徒歩数風の距離にある「資さんうどん魚町店」

 出張時、夕食のため寄ることが多い。最初はおでんとビール、焼酎、そしてうどんでフィニッシュするのがお決まりのコースだ。

 〆はいつも「ごぼう天うどん」(資さんうどんのメニューでは「ごぼ天うどん」)。関西では見たことのないメニューで、これが“サイコー”なのですよ。麺は柔らかい中にも、ほんの少しだけコシがあり、京都と比べると汁の見た目はやや濃く、甘いながらも深みがある。極めつけが麺の上に乗っている、ごぼうの天ぷら。

 ごぼうの天ぷらは、天ぷら定食の一品として出てきても全然うれしくない。だがうどんの上に乗った途端、その実力を発揮する。衣が汁を吸い、だしの旨みがごぼうに染み込んだ結果、とてつもなくおいしい具に豹変するという印象である。

 私を楽しませてくれる資さんうどんだが、今回、大手ファミレス傘下となることで、個性のない味になるのではとの懸念がある。ニュースのコメント欄にも同様の声が多数寄せられている。皆、心配しているのだろう。

 しかし、九州にはまだまだおいしい「ごぼう天うどん」がある、というのが今回のテーマである。

 少し前、私は仕事で福岡県直方市へ行った。その時、カメラマンやコーディネーターの方と、たまたま見つけたのが「英ちゃんうどん」という店だった。外観は、よくある定食屋さんのような感じ。ほかに目ぼしいところもないので、「ここで食事をしようか」と皆の意見がまとまった。

福岡県直方市で見つけた「英ちゃんうどん」。昼時には行列ができる

 入店すると、午後1時を過ぎても席は8割がた埋まっていた。スマホで調べると、昼時には行列ができることもあるようだ。

 「結構人気があるんだな」ぐらいに思い、案内された座敷に腰を下ろした。

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記事執筆者

森本 守人 / サテライトスコープ代表

 京都市出身。大手食品メーカーの営業マンとして社会人デビューを果たした後、パン職人、ミュージシャン、会社役員などを経てフリーの文筆家となる。「競争力を生む戦略、組織」をテーマに、流通、製造など、おもにビジネス分野を取材。文筆業以外では政府公認カメラマンとしてゴルバチョフ氏を撮影する。サテライトスコープ代表。「当コーナーは、京都の魅力を体験型レポートで発信します」。

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