ラサール インベストメント マネージメント 代表取締役兼CEO 中嶋康雄
商業者の方にわれわれをもっと活用してもらいたい
リテールリスクを取る勉強も始めた
──百貨店の不振が続いている。都心の一等地の立地は投資対象として魅力的ではないか?
中嶋 私見だが、確かに百貨店という業態を見ると、疑問視されている向きもあるが、都心でハイセンスな高額商品を扱うという商売は決してなくなるものではない。その意味では、新しい商売のかたちが生まれてくるものと推測できる。
これまで、百貨店をはじめとするリテーラーは、自社のバランスシートを使って、土地や建物を所有してきた。しかし、イオンもイトーヨーカ堂も、今 や他社のバランスシートを活用(=オフバランス)するようになっている。そうした状況変化の中で、われわれのような投資家がどんなかたちで絡むことができ るのかが、これからの課題だ。
実際に、われわれは「トリアス久山」や「千歳アウトレットモール・レラ」(北海道)では、マスターリース型で誰かに貸し出す形式ではなく、リテールのリスクを取りながら投資するという勉強を少しずつ始めている。
──それは、具体的にはどういうことか?
中嶋 たとえば、「千歳アウトレットモール・レラ」では、不動産事業の西武プロパティーズ(東京都/田島幸夫社長)と商業施設企画のプロッド(東京都/田中紘之社長)の2社と委託契約を結び、運営面でのアドバイスをもらう格好で、SCの業績を向上させている。
われわれはバランスシートを持ったフルサービスのリテーラーにはなりえない。しかし、ただ投資をするだけというのでは、リテーラーにも受け入れてもらえないはずだから、もちろん、社内には商業の経験を持つ複数の優秀なスタッフがいる。
われわれも単に資金の提供者だけではなくなってきている。だから、商業者の方々には、もっとわれわれを活用して欲しいと思う。
マルチテナント向け物流施設に期待
── 一方、サプライチェーンマネジメントが声高に叫ばれる中で、流通業界の物流に対する需要は大きなものになっている。
中嶋 案件はとぎれない。資金マーケットがほとんど機能していない状況でも、テナント、物流業者、卸売業などの商業者の「物流効率化」熱はずっとあついままだ。
たとえば、景気が非常に悪いと言われる直近の半年間でも、われわれは約3万坪の新しい契約を物流業者やリテーラーと交わした。そのトレンドは、「効率化」の一言だ。3~4つあった物流センターを1カ所にまとめたいといった類の要望が多い。
物流のマーケットは、伝統的に需要と供給が均衡しており、バランスが崩れることはなかった。しかし、ここ数年間は、先に物流施設を建ててしまうという流れだったので、オーバーストアならぬ、オーバーウエアハウスのような状態が続いていた。
現状は、オーバーサプライで、新規開発はストップしているが、需要はとぎれることなく続いているので、このアンバランスは2年ぐらいかけて調整されるはずだ。