KKRパートナー/プライベート・エクイティ・グループ マイケル・カルバート
ダラーゼネラル再生の立役者に聞く!“障壁”を取り除けば、ヒトは前進できる
──その先は、社内の改革が必要になると思います。ただ、「伝統的な小売業」の場合は内部に問題を抱えていて、旧来のかたちから脱却できないケースも多いのではないでしょうか。
カルバート 企業内部において、再生のために重要な要素は、企業風土や企業文化です。消費者に目を向け、革新性を持って自ら変化を遂げていくような企業風土が必要です。
ショッパーズ・ドラッグ・マート社は当初、非常に大きなコングロマリッドの一部だったため、従業員のクリエイティビティ(創造性)が“窒息”状態になっていました。だからこそ、巨大な親会社から切り離して独立させて初めて、社内にあったクリエイティビティが息を吹き返したのです。
──日本の企業の同様のケースを考えると、企業風土の改革というのは非常に難しい課題のように思えます。
カルバート もちろん易しいことではありません。企業風土を改革するためには、何よりリーダーシップがものを言います。ビジョンを持ったリーダーが先頭に立ち、正しい方向性を打ち出す。これが大事ですね。ショッパーズ・ドラッグ・マート社の結果には、非常に満足しています。
──リーダーシップのある人材を、KKR側が用意するということですか?
カルバート 場合によっては、外部から追加的な人材を募ることもありますが、多くの場合、リーダーシップを持った人材は、既存の組織の中にいます。ただ、改革を始める前までは、“手を縛られて”いた。まずは彼らに「自由」を与えることが大切です。
人間というのは目的を持って働くことに喜びを感じます。プライベート・エクイティ・ファンドの仕事のひとつは、従業員に「自由」を提供することによって、その企業の目的を達成できるように支援することです。KKRの仕事は企業を経営することではありません。あくまでも経営チームをサポートするという立場です。
──企業の進むべきビジョンが決まり、経営者も決まりました。事業再生の次のステップとして、従業員のモチベーションを高めるために、どのような方法が考えられますか?
カルバート 確かに、従業員のモチベーションを高めるためには、金銭的なインセンティブも有効ではあります。ストックオプションのような金銭的なインセンティブもあるでしょう。
しかし、それだけではなくて、人を鼓舞する心理的なインセンティブも大事にしています。「新しいものをつくり上げていくんだ」という興奮や意欲、熱意を高めることが、事業再生には不可欠です。