売上高営業利益率とは?企業の財務分析で用いられる計算式や業界別の目安値を紹介!

読み方:うりあげだかえいぎょうりえきりつ
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損益計算書と貸借対照表
本業でどの程度儲けたかを知るうえで重要な指標で、数値が大きいほど収益性が高いとされる。

売上が高い企業は商品が売れているため経営上問題はないと思いがちだが、収益も高いとは限らない。企業の経営状態は本業で高い収益を上げているかで判断されるため、その収益性を判断できる売上高営業利益率が重視されている。そうはいっても、売上高営業利益率がどのような指標なのか、具体的な求め方はどうすれば良いのかと思っている人もいるだろう。

今回は売上高営業利益率とはどのような指標か、算出方法や業界別の目安値を紹介する。営業利益が伸びないときに売上高営業利益率を見直すと、経営課題を発見して解決しやすくなるだろう。

売上高営業利益率とは?

財務分析を行なううえで重要な指標が売上高営業利益率だ。売上高から売上原価・販売費・一般管理費を差し引いたものが営業利益で、営業利益の売上高に対する割合を売上高営業利益率という。本業でどの程度儲けたかを知るうえで重要な指標で、数値が大きいほど収益性が高いとされる。

利益の把握以外にも経営の状況や方向性が適正に行なわれているかを判断することもできるため、売上高営業利益率は経営面でも重視されている。売上高営業利益率が伸びていれば利益を経営資金にできるため、借入に依存しない健全な経営が可能だ。

そうしたことから、売上高営業利益率に使用される「営業利益」は、損益計算書に記載される「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「税引前当期純利益」「当期純利益」5つの利益のなかでも、特に重視されている。営業利益だけが、利息や一時的な損益など本業に関係のない項目を含まず、営業活動での稼ぐ力がわかる指標だからだ。

営業利益が多い場合は本業が好調なことを表している。反対に営業利益が少ない場合は本業赤字と呼ばれ、この状態が続くと本業を続けることが難しいことを意味する。

営業利益を高めるためには商品やサービスを改善するほか、販売費や一般管理費を見直してコストを削減する必要があるだろう。

企業が販売する商品やサービスには、付加価値商品と薄利多売商品の2種類がある。どちらの商品を販売するかによって、売上高総利益率は変化する。また、売上高総利益率は景気が良いときには上昇し、悪いときには下落する傾向がある。

さらに、業種によって利益率は大きく異なり、同じ業種でも企業ごとに差が見られるものだ。こうしたことから、この数値を分析する場合は、長期的な数値変化や同業他社との比較など多面的に分析・評価する必要があるだろう。

売上高営業利益率を求めるための計算方法

資料と電卓

売上高営業利益率を求める際は、以下の計算式を使用する。

売上高営業利益率=営業利益/売上高×100

上記計算式で使用される「営業利益」の求め方は、まず売上総利益(粗利益)を計算し、売上総利益から営業利益を求める。

売上総利益(粗利益)=売上高-売上原価
営業利益(本業での利益売上)=売上総利益-販売管理費

売上総利益は粗利益とも呼ばれ、損益計算書で最初に出ている利益だ。商品を販売してどれだけ利益を稼いだのかがわかる。製造業では「自社の製造技術が評価されているのか」、小売業では「仕入れた商品は顧客に支持されているのか」を検討する指標となる。

売上総利益を計算する際に使用する「売上原価」は損益計算書の費用項目で、企業が商品の仕入れ、製造、提供する際にかかる仕入原価、製造原価を指す。企業が収益を得るために必要な原価の合計金額で、業種により具体的内容や使用する科目が異なる場合がある。

例えば、製造業では人件費は売上原価に含まれ、販売費や一般管理費には含まれないため注意が必要だ。

売上総利益から求められる営業利益は、商品の販売やサービスの提供など、企業の本業で得た利益だ。売上総利益は「商品を作成するまでに得た利益」、営業利益は「市場で販売して得た利益」を意味する。

営業利益を計算する際に使用する販売管理費は「販売費」と「一般管理費」で、以下の項目が含まれる。これらが大きいと、営業利益が下がる原因となる。

  • 販売手数料
  • 広告宣伝費
  • 光熱費
  • 減価償却費
  • 保管費
  • 給与
  • 役員報酬
  • 不動産賃貸料

架空のX・Y社を例にして、売上高営業利益率を求めてみよう。売上高は両社ともに1億円だが、営業利益がX社は1,000万円、Y社は500万円としてみる。

X社: 1,000万円/1億円×100=10%
Y社: 500万円/1億円×100=5%

このように、売上高が同じ1億円でも、利益率が高いX社が効率よく儲けていることを意味する。この2社のように利益率が大きく異なる場合は、以下を分析する必要があるだろう。

  • 商品やサービスに問題がないか
  • 販売までのコストが多すぎないか

商品やサービスは、売上高と売上原価を見て分析する。売上高が低すぎるか、売上原価が高すぎるかのどちらかが原因のため、値付けや単価交渉の見直し、製造工程の効率化などを検討する必要がある。

ただし、値上げを行なう場合は顧客が納得しやすいように、付加価値を高めるなどの対策が求められる。安易に値上げをすると、販売数量が減少して営業利益が下がる原因にもなるためだ。

販売にコストがかかりすぎている場合は、販売費及び一般管理費を見直す。顧客管理や経理処理などの事務体制や、広告・宣伝に無駄がないか検討が必要だ。また、保険料や賃料など固定経費を見直すと、販売管理費を効率的に削減できる。

【業界別】売上高営業利益率の目安値

業界別の売上高営業利益率を紹介する。数値の高さだけにとらわれず、同じ業種の値に近い範囲内にあることが重要だ。以下の数値は中小企業庁の「中小企業実体基本調査令和元年確報」によるものである。

順位 業種 営業利益率(%)
1 学術研究、専門・技術サービス業 10.59
2 不動産、物品賃貸業 10.11
3 情報通信業 4.94
4 建設業 4.85
5 サービス業 4.81
6 宿泊業、飲食サービス業 4.60
7 製造業 3.86
8 生活関連サービス業、娯楽業 3.69
9 運輸業、郵便業 2.56
10 卸売業 1.72
11 小売業 1.65

出典:3.売上高及び営業費用(1)産業別・従事者規模別表|中小企業実態基本調査令和元年確報(平成30年度決算実績)(訂正済み)確報(訂正済み)

利益率の高い業種は、不動産、物品賃貸業や学術研究業だ。高利益率の業種は、「厚利少売」の販売戦略を取っているのが特徴だ。厚利少売は、少数の商品やサービスしか取引しないが、商品に付加価値を付けて売値を高く設定し、多くの利益を生み出す。

商品が売れれば利益が高いが、その分商品を販売する難易度は高くなる。また、付加価値に魅力がなければ購入されないため、質の高いサービスが求められるだろう。

不動産業は不動産を安く買って高く売り、その差額を利益にする。値段設定を高くできるため、売買件数が少なくても高収益を上げることが可能な「厚利少売」だ。しかし、安い不動産物件には安い理由があることも多く、必ずしも買い手が付かない可能性もある。

また、不動産業は不動産の賃貸でも収入を得られる。賃貸は利回りを高くすれば利益率も高まり、借り手がいれば継続的に安定した収益を得られるだろう。しかし、不動産物件は原価が高額のため、資金の回収には長い時間がかかる。

「厚利少売」の反対語は「薄利多売」で、利益の薄い商品やサービスを大量に販売して利益を稼ぐことを意味する。薄利多売は「利益が少ない商品」を「大量に売る」両方が成立するものを指すため注意しよう。

多くの顧客が獲得できるのがメリットだが、大量の商品を仕入れ・製造する必要があり、在庫を抱えやすいのがデメリットだ。大量の商品の保管費用や運搬費用などのコストも発生しやすく、仕入れ値によって販売価格が影響を受けやすい特徴がある。薄利多売の業種では、商品やサービスの販売量を増やすことにより、利益率の改善が可能だ。

小売業や卸売業のビジネスモデルは薄利多売に該当し、中小企業のなかでも利益率が低い業種だ。小売業は消費者に商品を販売し、卸売業は小売業者やほかの卸売業者に商品を販売する点で異なるが、仕入れた商品を販売するという形態は同じだ。

商品を自社で製造せず流通させるビジネスのため、商品による差別化は難しく価格競争に巻き込まれることが多い。仕入れのコストダウンには限界があるため、今後の売上上昇が予想される商品を他社に先駆けて仕入れることで、価格競争を避ける業者も少なくない。

高い売上高営業利益率を記録している企業の特徴

ビル群

売上高営業利益率が高い企業の特徴は2つある。効率的な営業が実現されており、良い品質の商品やサービスを提供していることだ。

効率的な営業を実現している

営業利益率が高い企業はコスト抑制に工夫をしており、効率的な営業を行なっている。効率的な営業が実現できると、結果的に販売費や一般管理費の抑制に結びつく。近年ではインターネットを用いた営業が増えており、人件費や広告費、交際費などの販売費や一般管理費を抑えた営業の効率化を成功させている。

また、インターネット販売をすれば実店舗が不要になり、事務所家賃や水道光熱費、保険料などの一般管理費を抑制できる。リモートシステムの導入で、電話などの通信費を削減することも可能だ。

品質の良いサービスや商品を提供している

品質の優れたサービスや商品は、それだけで付加価値が付くため売値を高く設定できる。品質の良さは機能面だけとは限らず、パッケージやデザインの高級化、新たな用途、材料の高品質化など品質改革の工夫はさまざまなものが考えられる。

品質を高めて付加価値を高めれば他社商品との差別化が図れ、高品質の商品を求める顧客が増加する。高価格商品が多く売れれば売上が増加し、売上高営業利益率も高まるだろう。

また近年では、IT技術やロボットなどの利用により、商品の製作コストなどを抑えて利益率を改善するケースも多い。産業用ロボットは人に代わり、工場での加工や組み立て、洗浄など多くの作業を自動で行なえるため、品質の安定や生産性の向上も可能だ。

まとめ

今回は売上高営業利益率とは何か、計算式や業界別の利益率の水準を解説した。経営を効率化・安定化させるには、売上高営業利益率を正しく把握して、効率的な営業や質の良い商品やサービスを提供する必要がある。

利益率は高いほうが良いとされているが、業界水準に近い適正な数値であることも大切だ。数値が高すぎる場合は利益の追求ばかりが重視され、労働環境や顧客サポートなどでトラブルが発生することもある。数値が高いからといって安心せずに、経営体制や商品、サービスを見直すとよいだろう。

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