フェイシングとは?店頭での売れ行きはフェイシングにかかっている?!実例を交えて解説
フェイシングとは
フェイシングとは、店舗の陳列棚(ゴンドラ)に並べるアイテムと、各アイテムのフェイス(陳列する数と場所)を決めていくプロセスのことである。一般的に棚割りは、ゾーニングで売場をカテゴリーごとに区分けした後でフェイシングを行う(記事によってはフェーシングと表記される場合もあるが、本稿ではフェイシングで統一する)。
フェイシングのメリット
フェイシングのメリットは、限られた店舗面積における売上効率の最大化にある。スーパーマーケットやドラッグストアに立ち寄る顧客の多くは、最初から何を買うか完璧に決めているわけではない。ふと目に留まった商品に惹かれ、ショッピングカートに入れてしまった経験は誰にでもあるだろう。
ではどうすればカゴに入れてもらえるか。顧客の判断を決定づける大きな要素がフェイシングだ。フェイシングを通じて顧客の購買意欲を促すことができれば、狭い売場でも売上を増やすことができる。
巧みなフェイシングは、品揃えの充実にもつながる。陳列方法(商品配置・並べ方)を工夫すれば、確保できる棚が狭くても売上を増やすことが可能だ。結果として、限られた棚に多くのアイテムを並べることができるというわけだ。
日用品・食品といったメーカーの場合は、本部商談で小売サイドのメリット(見込み客アップ・客単価や粗利益改善など)につながるようなフェイシングプランを提案すれば、取引・仕入れの拡大が期待できる。
フェイシングのデメリット
フェイシングのデメリットは、人手がかかる点と現状把握の難しさにある。
人手の問題
せっかくメーカーの営業が小売との本部商談をまとめたのに、仕入れた商品に対してフェイシングがされずただ漫然と陳列するだけ、というようなケースはしばしばある。ドラッグストア・スーパー・ホームセンターなどにおいても、販売スタッフは忙しすぎて、新しく入ってきた商品を十分にフェイシングする余裕がない。
問題を解決するためには、強力なラウンダー部隊が必要になってくる。人手が足りない組織小売業は、フェイシングを代行してくれるメーカーに頼りがちだ。
現状把握の問題
フェイシングは、絶えず売場の現状を把握したうえで分析・検証し、次の新棚設置やフェース替えなどのアクションにつなげていかなければ意味がない。ところが、店舗スタッフには現状把握する余裕はないため、小売側はメーカーに対応を依存しがちだ。
ただし、小売側の要求に応えられるメーカーは限られる。各店舗状況の画像・動画による情報収集、膨大なデータのデジタル解析からフェイシング改定の提案までのIT環境は、体力のあるメーカーでなければ整備できない。ラウンダーから上がってくる、肌感覚の情報も重要だ。
まとめると、IT環境やラウンダーなどの支援体制が不充分なメーカーは小売側の要求に応えられず、必然的に取引高も落ち、戦線から消えていくのだ。
フェイシングの実例
フェイシングの実例として、ヤクルト(東京都)によるITを活用した取り組みを紹介する。
従来のフェイシングでは、データ集計などにITを使い、分析・検証面に関しては経験側に頼ってきた。しかし最近は、AI(人工知能)を通じて最適なフェイシングを判断させるような取り組みが増えてきた。
ヤクルトでは、コニカミノルタ(東京都)が開発した「ゴーインサイト」を通じ成果を挙げている。「ゴーインサイト」は、天井につるしたカメラから顧客属性・回遊動線・滞留時間・手に触れた商品といった情報を収集し、人工知能を通じて「商品をどうフェイシングすれば売り上げが最大化するか」を判断する。
大手組織小売業における乳製品飲料の商品配置を巡っては、森永製菓や明治といった大手メーカー主導で進むケースが多く、これまでヤクルトは苦汁をなめてきた。この取り組みを通じてヤクルトはフェイシング提案力に磨きをかけ、大手との戦いに打ち勝とうとしているのだ。