客動線とは? 客単価アップにもつながる?! 徹底解説!
客動線とは
客動線とは、来店した客が店舗内でどのように動くのかを示した動線をいう。百貨店業界などでは「客導線」と呼ぶことも多いが、これは「客を導く」ことに意識が向くからからこそ産まれた造語とされている。一般的に従業員スタッフの動線は短いほど生産性が高いとされているが、客動線は長ければ長いほど売上に繋がる。
客動線は長いことも重要だが、よどみのない流れであることも忘れてはならない。袋小路などは極力なくす、曲がり角は曲線的に描くといった地道な工夫を凝らし、店舗全体にお客をいきわたらせる必要がある。
客動線と店舗レイアウト
客動線は、売場づくりの基本でもある。客がどう動くかを想定したうえで、店舗内の陳列・商品配置・販促コーナーなどのレイアウトを構築する。
回遊時間をのばす客動線モデルが構築できたら、次は「立ち寄り率」(商品の前に立ち止まる)、「視認率」(陳列商品に注目してもらう)、「買い上げ率」(商品を手に取り買ってもらう)の向上施策と連動させ、最終的に客単価をアップさせる。
客動線と人間行動科学
かつては経験則に基づく職人芸で描きこまれることが多かった客動線だが、最近は人間行動科学との結びつきが強くなっている。2002年にダニエル・カーネマン、2017年にはリチャード・セイラーがノーベル経済学賞を受賞したこともあり、行動経済学への関心は高まりつつある。
合理性に立脚した経済学と異なり、「人間は直感や感情によってときに非合理な行動に走る」面に着目した行動経済学、たとえば「ハロー効果」「プロスペクト理論」「認知的不協和」などさまざまな新理論がマーケティングの世界で活用されている。
客動線を考えるメリット
客動線を意識したレイアウトにすることで、客単価向上が期待できる。客動線が長くなればお客は店舗内をより長時間回遊することとなり、商品を目にして手に取る機会も増え、結果的に購買行動を促し客単価もアップするというわけだ。
客動線モデル構築の難しさ
客動線分析の難しさについても触れる。お客は、1つの商品を買いに来るわけではない。複数の商品をかごに入れるとき、それぞれの購買行動に相関性があるのかを洞察し、客動線モデルを構築することで、初めて客単価向上に繋げることができる。
客動線モデル構築には、販売現場における豊富な経験と同時に、行動科学・行動経済学といった理論的知見が欠かせない。客動線に関する実証データを集めたとしても、「経験と勘」だけでは行き当たりばったりの対策しか生まれない。
客動線の成功実例
客動線の成功実例として、ドン・キホーテの取り組みを紹介する。ドン・キホーテの登場以前、GMS(総合スーパー)などの店舗では、主通路は青果売場→日配品→鮮魚・食肉→グロサリーといった流れで直線的に進む客動線がベストとされてきた。
一方でドン・キホーテは、今までの王道を全く無視する「迷路」のような客動線をつくり上げた。今でこそ流通業界でも高く評価されているが、創業当初は「ぎりぎりですれ違える通路」「山積みの陳列」「入り口から全く見渡せない店内」は意表を突くというよりむしろ「ありえない」店舗レイアウトだったのだ。
誰もが知っての通り、ドン・キホーテの「迷路」は大成功した。目玉商品を奥に陳列し来客を奥まで引っ張り込む。必需品の食品フロアをわざと地下や2階に配置し、客動線を長くする。死角となるような売場には、「店員に場所を訪ねてでも手に入れたい」指名買い商品を置いておく。ドン・キホーテは店舗全体で客動線を伸ばし、購買を誘発する仕掛けを作っている。客動線を新しい視点で見直すヒントとして覚えておきたい実例だ。