リフト値とは何か?マーケティングにどう活かせる?そのメリット・デメリットを解説!
リフト値とは
リフト値とは、商品リコメンドなどの販促による売上増効果、つまりマーケティング施策の効率性を測定する指標である。リフト(lift)は、英語で持ち上げる・高揚する・引き起こす・向上させるといった意味がある。
リフト値の算式
リフト値は以下の算式で計算する。
商品AとBを併せて購入した併売取引の割合÷商品Bの買い上げ率
この算式から、商品Aが商品Bの購買率をどの程度引き上げているか?ということがわかる。販促の世界で「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」は通用しない。上記算式からもわかるように、リフト値は顧客の買い合わせに着目して販促の的を絞ろうとしている点に大きな特徴がある。
マーケットバスケット分析とリフト値
ドラッグストアチェーンやスーパーマーケットなど小売業の多くでは、レジから収集した販売データをマーケットバスケット分析と呼ばれる手法で分析している。そしてリフト値は、バスケット分析で使われる1指標である。
今では当たり前の存在だが、商品のバーコードをリーダーで読み込めるPOS(販売時点情報管理)レジが登場したのは1980年代後半だ。POSレジ導入により、商品単位の販売実績を集計できるようになり、「レシート1枚で販売がつかめる」マーケットバスケット分析は組織小売業を中心に一気に普及した。
しかし、POSレジをもってしても「誰が買ったのか」を把握することはできない。一方でPOSレジは「この商品と一緒に買われる商品は何なのか」を即時に集計できる。そして、POSレジの得意技に着目したのがマーケットバスケット分析というわけだ。
リフト値のメリット
リフト値のメリットは、より戦略的な販促活動の実現にある。つまり、棚割りや顧客動線計画にリフト値分析の結果を反映し、販促活動を効率的に展開するのだ。
特設陳列棚・特売コーナー・チラシ頒布など、特定商品の販促活動を漫然と進めても売上アップの効果は思ったように得られないことも多い。販促効果をリフトするにはターゲットを絞るべきである。では何を基準にねらいを定めるか。
「商品Aを買っている顧客は商品Bを一緒に買っている」とすれば、商品Aを買っている顧客をターゲットに絞って販促をかければ、商品Bの買い上げ率はグッと上がるはずである。ではどのぐらい上がるのか定量的に知りたいとなった時が、リフト値の出番というわけだ。
リフト値のデメリット
リフト値のデメリットとしては、“偶然性の罠”がある。たとえリフト値が高いとしても、もともとの買い上げ率が極端に少ない場合、たまたま併売が多くなることも充分ありうる。こうしたケースでは、仮にリフト値を信じて商品リコメンド施策を展開しても売り上げ増にはつながらない。
つまり分析にあたっては、リフト値そのものだけではなく買い上げ率にも注意を払う必要があるのだ。
リフト値取り組みの実例
リフト値取り組みの実例として、「おむつとビール」レポートについて紹介する。
青果売場でゴーヤの近くにゴーヤチャンプルの素を置く、精肉売場でカルビのそばに焼き肉のタレを陳列するといった販促は誰でも思いつく。リフト値が威力を発揮するのは、「意外性」だ。
「おむつとビール」レポートは、1992年にウォールストリートジャーナルの「スーパーコンピューター・マネージ・ホリデー・ストック」という記事で取り上げられた。いわく、「小売店における販売分析の結果、おむつを買う顧客は同時にビールを買い求める傾向が強いことが判明した」とするものだ。
かさばる紙おむつは、父親が1人で買いに来ることが多く、そのついでにビールを買って帰るというわけだ。販売分析結果に基づいて、某小売チェーンがおむつのそばにビールを置いたところ、売上増につながった報告もあるという。
ただし、真意のほどが不明とする声もある。しかしそれでもリフト値分析の効力を物語る逸話として今でも語り継がれている。