ラインロビングとは? メリットとデメリットを実例を交えて解説!
ラインロビングとは、ライン(Line:商品やカテゴリー)のシェアや売上をほかの業態からロビング(Robbing:奪う)ことをいう。具体的には、今まで扱ってこなかった商品・カテゴリーを自店に導入し、もともとその商品・カテゴリーを扱ってきた店からお客を吸い上げることを指す。

第二次世界大戦後の日本における流通業界発展の歴史は、ラインロビングの歴史でもある。「イトーヨーカドー」「ダイエー」といったGMS(総合スーパー)業態は、町の青果店・鮮魚店・精肉店さらには衣料品店といった個人商店からお客を奪って急成長してきた。
1990年代に入り、大型店進出に歯止めをかけてきた出店規制が緩和されると、ラインロビングはさらに加速した。人口の減少が始まり、高齢化によって消費意欲も落ちるなかではほかの業態からお客を奪うほかない。ラインロビングはもともとゼロサムゲームの考え方であり、長期デフレ経済にあった当時のトレンドとの相性もよかった。
最近耳にすることが増えたフード&ドラッグは、従来のドラッグストアの品揃えに生鮮食品や総菜などを充実させたラインロビングの形態のひとつと言っていい。郵便局で中元・歳暮・おせちの宅配を取り扱うのも、コンビニエンスストアの棚に卵や納豆など日配品や冷凍食品が並ぶのもラインロビングといえる。
ラインロビングのターゲットとなりうるカテゴリーは、一般的に自社内でのシェアが低いカテゴリーに絞られる。ドラッグストアでは、おおむねシェア20%がラインロビングの目安とされる
ラインロビングのメリット
ラインロビングのメリットは、限られた商圏における来店頻度の増加や既存客の買上単価アップにある。
高齢者人口の増加や自動車保有率の低下により、消費者の日常の行動範囲が狭くなるにつれ、商圏は確実に小さくなっている。業態によってその影響度合いは異なるが、たとえばドラッグストアの1店舗あたり商圏人口は1万人を切るようになってきた。地域によっては4000人を下回るところも出てきている。
狭い商圏内・限られたエリア人口の中で売上を確保していくため、ドラッグストアやコンビニが注力したのがラインロビングだ。今まで置いてなかったカテゴリーを取り扱えば、新しいお客が増える。既存客も来店頻度が増え、新しいカテゴリーを追加購入するので客単価もアップする。
ラインロビングのデメリット
ラインロビングのデメリットは、それまでの店舗オペレーションに与える影響だ。取扱いカテゴリーが増えれば、カテゴリーごとの売場スペースは縮小する。無理にスペースをつくれば見栄えも悪くなり、お客が商品を探すのにも不便だ。店頭の商品数が少なくなれば、その分、バックヤードからの補充頻度も高まり、ときには補充が間に合わず機会損失につながるリスクもある。
店舗スタッフへの負担がかかる業務負荷は、カテゴリー追加に伴う単純な業務だけではない。たとえばフード&ドラッグで考えれば、医薬品・日用品と食料品では、商品の購入サイクルが異なり、そのため受発注・在庫管理・品出しなどのノウハウも違う。売場でそのことを理解するだけでも時間を要する。
ラインロビングの実例
ラインロビングの実例として、ドラッグストア大手、ウエルシア薬局(東京都)の園芸進出について紹介する。ラインロビングにどん欲なドラッグストアだけに、取り込むカテゴリーは食品だけにとどまらない。
2021年10月にオープンした「イオンタウン幕張西店」(千葉県千葉市)は、同社がめざすワンストップショッピングを具現化する店舗として、最新設備を導入した調剤薬局、150坪の売場面積を誇る食品コーナー、そして「緑を基軸にしたライフスタイル提案」をコンセプトとする園芸コーナーを備えている。
同店の園芸売場では、培養土・肥料・除草剤・モグラ忌避剤のほか、切り花や鉢植えも幅広く取り扱う。さらに売場スタッフは、草木の育て方もアドバイスしてくれるという。