商品陳列の目的とは?業態による違いやスーパーでの売れる陳列方法も紹介!
実店舗でたくさんの商品を効率よく販売するには、人々に見せるために商品を並べ置く「商品陳列」の工夫が不可欠だ。しかし、新店舗をオープンさせたばかりの時期や、思うように商品が売れない場合、商品の基本的な陳列方法や、売上をアップさせるためのアイデアについて悩みが生じることもあるだろう。
本記事では、まず、商品陳列の目的と業態による違いを確認する。そのうえで、スーパーの商品がさらに売れるようになる7つの陳列方法と、商品陳列の改善に向けたポイントを解説しよう。
商品陳列の目的とは?
商品陳列の目的は、売りたい商品を来店した客に認識させ、購買意欲を高めることだ。スーパーマーケットなどの小売店の場合、多くの客が以下のようなことを考えながら来店し、店内で購入品目を決定している。
- 今夜は、何を食べようか?
- 今日は、何が安いだろうか?
- 今日は、おいしそうなお惣菜が売っているか? など
この消費者行動は、多くの客が来店後に店内で「目に入ったもの」や「興味を持ち、惹かれたもの」を購入していることを意味する。
店舗側が利益率の高いおすすめ商品を多く売りたい場合、客の消費者行動を促すために、陳列の工夫をすることが大切だ。後述する方法で陳列をうまく行なうと、おすすめ商品の販売数が伸び、同じ客数でも売上アップが見込めるだろう。
業態による陳列方法の違い
売上アップにつながる陳列の工夫や方法は、販売商品や業態によって違いがある。ここでは、以下の業態別に陳列方法のポイントを確認しよう。
- スーパーの陳列方法
- コンビニの陳列方法
- 本屋の陳列方法
- フリーマーケットの陳列方法
スーパーの陳列方法
スーパーでは、多様な品目を扱うため、客の動きを考えた導線設計と商品陳列をセットで考えるのが基本だ。
多くのスーパーでは、入り口から反時計回りに、以下の流れで商品を陳列している。
- 野菜・果物
- 肉・魚
- 惣菜・パン
- 牛乳
フロアの内側に陳列されているのが、以下のような商品である。
- 冷凍食品
- 飲料
- お菓子
- 保存食品 など
この陳列方法には、最初に値段が安く色合いがカラフルな野菜・果物を置くことで、客の買い控えを防ぐ効果がある。「エンド」と呼ばれる通路に面した棚には、つい買いたくなるお買い得品や新発売の商品を並べて、さらに客の購買意欲を刺激するとよいだろう。
これらの陳列方法を実践すると、客が店内を回るうちに自然と購入品目が増えていく効果が生まれる。
コンビニの陳列方法
コンビニエンスストアの場合、多くの客が弁当や飲み物など特定の商品を求めて来店する。そのため、コンビニエンスストアでは、主要な来店目的となる弁当や飲み物を奥にする動線設計を行なっている。店内をなるべく多く歩いてもらうことで、以下のような商品の「ついで買い」を促す工夫が必要だ。
- 雑誌
- スイーツ・デザート
- 栄養ドリンク など
また、客単価を引き上げるには、以下のような衝動的に買いたくなる季節商品などをレジ前に並べるのもおすすめだ。
- 揚げ物
- 中華まん
- おでん
- コーヒー など
本屋の陳列方法
書籍は、陳列方法の良し悪しが売れ行きに直結しやすい商品だ。
まず、話題性の高い新刊やベストセラーは、台の上で表紙が見えるように並べる「平積み」をおすすめする。平積みには、本の表紙デザインや帯などの視認性を高めるメリットがあるからだ。
また、たくさん仕入れた本を手にとってもらうためには、今週のランキング掲示やおすすめコーナーなどを設けるのも良法だ。特に買ってもらいたい本は、客の目線の高さに表紙が見えるように並べる「面陳列」がよいだろう。
一方、定番の単行本や文庫本などは、背表紙だけが見える形で棚に陳列する「棚差し」が一般的だ。平積みや面陳列に比べて視認性が下がるデメリットがあるが、なるべく多くの本を棚に並べたいときにはおすすめの陳列方法である。
フリーマーケットの陳列方法
フリーマーケットの特徴は、個人が、洋服・アクセサリー・日用雑貨などさまざまなジャンルの商品を取り扱う点だ。フリーマーケットでたくさん売るには、以下のように商品の特徴をわかりやすく伝える工夫が必要となる。
- 値段を大きく書く
- 衣類はサイズを表示する
- サイズや値段ごとにコーナーを分ける
- 取り扱いジャンルを絞る など
衣類や雑貨が山積みになっていて、どのような物を売っている店かわからなければ、客に素通りされてしまうこともあるだろう。この問題を防ぐには、以下のように自店舗の特徴を打ち出し、まずは客に立ち寄ってもらうことが重要だ。
- ブランド服の専門店
- 大きいサイズの専門店
- 子供服を3着500円で買える専門店
- ハンドメイド雑貨の専門店 など
売れる陳列方法7選
業種別のポイントを実践しても、思うように売上が伸びない場合は、行動心理学などの考え方に基づく以下の陳列方法を試してみよう。
- ゴールデンゾーンに売れ筋を並べる
- バーチカル陳列・ホリゾンタル陳列を組み合わせる
- フェイシング・フェイス数を整える
- POPや什器を活用する
- エンド陳列を工夫する
- ジャンブル陳列を取り入れる
- 関連商品を並べる
ゴールデンゾーンに売れ筋を並べる
「ゴールデンゾーン」とは、大人の目線が留まりやすい0.7~1.5m程度の高さのことだ。本屋の項で少し紹介したとおり、ゴールデンゾーンに以下の商品を並べると、大人の来店客の目に留まりやすく、売れ行きもアップする。
- 主力商品
- 売れ筋商品
- 季節商品
スーパーマーケットのお菓子売り場の陳列にも同じことがいえる。ゴールデンゾーンに大人向けのおすすめ商品、大人の目が届きにくい足もとには子供向けの食玩などを並べるのが売上アップの秘訣だ。
バーチカル陳列・ホリゾンタル陳列を組み合わせる
商品の売上をアップさせるには、バーチカル(垂直方向)、ホリゾンタル(水平方向)の陳列で、客の選びやすさや買い忘れの予防をサポートすることも大切だ。
「バーチカル陳列」とは、縦方向に同カテゴリの商品を並べる方法である。バーチカル陳列でさまざまなメーカーの醤油を縦に並べれば、通路を歩く客の目線がどの高さであっても、醤油を見落とすことはない。
「ホリゾンタル陳列」は、水平方向に同カテゴリの商品を並べる方法だ。例えば、板チョコレートをホリゾンタル陳列で横に並べれば、客はしゃがんだり背伸びをすることなく、同じ高さの目線で商品選びをしやすくなるだろう。
バーチカル陳列とホリゾンタル陳列は、どちらが良い、悪いというものではない。バーチカル陳列とホリゾンタル陳列をうまく組み合わせることで、双方のメリットが活かせ、売上アップにつながる。
フェイシング・フェイス数を整える
主力商品を大量入荷した場合、フェイシングとフェイス数で各棚の視認性と陳列量のバランスをとることも大切だ。
「フェイシング」とは、売りたい商品と、その商品の陳列で最前面(フェイス)に並べる数(フェイス数)を決定することをいう。売れ行きの良い商品のフェイス数は多く、鈍いものは少なくと、販売量に応じた陳列にするのが基本だ。
棚の最前列には、売れ筋商品や特売品を他の商品よりも多く並べることで、視認性が高まり、売れ行きも伸びやすくなる。
また、エンドに主力商品だけのコーナーを作る場合は、ゴールデンゾーンの高さに並べる商品はパッケージ表面、それより下は横面を向けるように陳列すれば、狭いスペースを有効活用できる。
POPや什器を活用する
販売数を増やすには、POPや什器の活用で客を惹き付ける方法もおすすめだ。「POP」とは、「Point of Purchase Advertising」の略で、画用紙やポスターで作成された宣伝用素材を指す。
本屋やフリーマーケットなどでは、商品紹介で販売スタッフ手作りのPOPがよく活用されている。また、大手食品メーカーの場合、商品陳列やPOP設置の専門スタッフが各スーパーなどを回ることも多い。
目に留まりやすいという点では、棚に吊り下げられる什器などを活用するのもよいだろう。什器には陳列スペースが増えるメリットもあるため、工夫次第でさまざまな使い方ができる。
エンド陳列を工夫する
エンドには、通路に面している特徴から、客が通過するときに目に留まりやすい効果がある。エンドを売上アップにつなげるには、衝動買いにつながりやすい以下のような商品を置くのがおすすめだ。
・ 主力商品
・ 話題の商品
・ 特売品 など
ジャンブル陳列を取り入れる
ジャンブル陳列とは、カゴのなかに商品をあえて雑多に入れる陳列方式だ。ジャンブル陳列をすると、お得感を強くアピールできる。そのため、スーパーマーケットなどでは、安価なカップ麺やセール品などをジャンブル陳列していることが多い。
また、フリーマーケットやスーパーの見切り品などには、「全品100円セール」などのPOPをつけて、安さをアピールしてもよいだろう。
関連商品を並べる
一般の陳列では、商品のジャンルごとにスペースを変えるのが原則だ。しかし、客の買いやすさを考えると、以下のようにあえて異なるカテゴリの商品を同じコーナーに置き、同時購入を促すと、「ついで買い」の効果が期待できる。
- 豆腐売り場に、醤油と刻みネギを並べる
- 肉売り場に、から揚げ粉や焼き肉のタレを並べる
- ヨーグルト売り場に、新製品のフルーツソースを並べる など
商品陳列を継続的に改善する方法
商品陳列は、一度やれば終わりというわけではない。商品陳列の効果性を高めるには、継続的な改善を通じて、自店舗や顧客ニーズに合う陳列方法を模索する必要がある。商品陳列の改善では、以下の2点を実践しよう。
- 他店の陳列方法を参考にする
- データ検証を重ねる
他店の陳列方法を参考にする
現状の陳列方法で売上や販売数がそれなりにアップしても、さらに良い方法がある可能性も考えられる。そのため、自社の陳列方法を改善するには、定期的に同業他社のやり方を確認し、良さそうなところは積極的に取り入れる姿勢が大切だ。
同業他社の店舗では、売上に大きく影響する以下の陳列方法をチェックするとよいだろう。
- 季節商品をどのように魅せているか?
- エンドにはどのような商品を並べているか?
- どのような催事イベントを開催しているか?
データ検証を重ねる
例えば、新製品の同じお菓子を売る場合、家族連れの多いスーパーマーケットと、単身者の多いコンビニエンスストアでは、選択する陳列方法は大きく異なる。陳列方法と売上の関係性にはいくつかのセオリーはあるが、実際は、業態や品ぞろえなどによって臨機応変に対処する必要があるのだ。
そのため、売上や客単価のアップを目指して陳列方法を改善するときには、自店舗にとって最善の方法を追求することが大切になる。改善のプロセスでは、以下のPDCAフレームワークを回すことを意識するとよいだろう。
- P(Plan・計画):自店舗や商品に合った陳列方法を計画する
- D(Do・実行):計画した陳列方法を実践する
- C(Check・評価):販売データから陳列方法の効果性を確認・評価する
- A(Action・改善):評価の結果を通して、今後どうすべきかを考える
評価では、陳列方法以外の条件を可能な限り同じ状態で比較することが大切だが、商品の売れ行きは、SNSなどによる話題性や天候などの条件で変わってくる。最善の陳列方法を見つけるには、短期的ではなく中長期的にPDCAを回し続ける必要があるだろう。
まとめ
自店舗の売上をアップさせるには、商品陳列の工夫を通して、客に売りたい商品を認識させたり、購買意欲を高めたりする取り組みが必要だ。商品陳列にはいくつかのセオリーがあるが、実際の正解は、業態や取扱商品によって変わってくる。
商品陳列で大切なことは、本記事で紹介したような方法を実践して終わりではなく、PDCAを回しながら継続的な改善を続ける姿勢だ。PDCAを回すときには、各商品の販売データを通して、自店舗の陳列方法を客観的に分析する必要があるだろう。
また、現状のやり方で良い効果が得られない場合は、ライバル店の陳列方法をチェックし、良さそうなアイデアを自店舗に取り入れる柔軟な姿勢も大切だ。