機能性表示食品とはどんな食品?トクホとの違いやメリット・デメリットを紹介
近年では健康志向の高まりから、サプリメントや機能性表示食品を摂取する人が増えている。これらの食品は機能性や効果が表示されているため、自分に必要な機能や効果を選んで摂取することができる。しかし、なかには機能性表示食品がどんなものかを知らない人や、トクホとの違いがわからないという人も少なくないだろう。
この記事では、機能性表示食品の概要やトクホとの違い、機能性表示食品のメリット・デメリットについて解説する。
機能性表示食品とは?
機能性表示食品とは、具体的にどんな食品なのか。機能性表示食品の概要をはじめ、機能性表示食品が誕生した背景、機能性を表示できる食品の種類について紹介する。
機能性表示食品とは体に対して有効な機能性が表示されているもの
機能性表示食品とは、健康維持に効果的な機能性が表示された食品のことを指す。表示されている機能性は、販売事業者の科学的根拠に基づくものである。
ただし、機能性表示食品の対象は健康な人で、特定の栄養を補給することを目的としている。特定の栄養は得られるものの、摂取したからといって病気の治療や改善ができるわけではない。また、多量に摂取するほど効果が高まるというものでもないため、用法・用量を正しく守って摂取することが大切だ。
機能性表示食品と名乗るには、健康維持・増進に良い影響があることを、事業者が国に届け出る必要がある。したがって、健康維持効果が期待できる食品であれば、何でも機能性表示食品として名乗れるわけではない。
機能性表示食品が始まった理由
機能性表示食品は、保健機能食品の一種として2015年に誕生した制度だ。保健機能食品とは体への効果や機能性を記載できる食品のことで、トクホや栄養機能食品も保健機能食品に含まれる。
機能性表示食品が誕生する前まで、保健機能食品は「トクホ」と「栄養機能食品」のみであった。このうち、トクホの食品は国の審査を要するため数が少なく、個人のニーズに合った商品が少ないとされていた。また、栄養機能食品についても特定の栄養補給が目的で、対象となる人は限られる。
こういった状況から、「消費者のニーズに合った商品を増やし、より多くの人が健康を維持・増進できるようにしよう」と誕生したのが機能性表示食品だ。機能性表示食品は国の審査が必要ないため販売しやすく、現在ではさまざまな効果の機能性表示食品が販売されている。これにより、消費者は自分に合った商品を探しやすくなったわけだ。
機能性を表示できる食品の種類
機能性を表示できる保健機能食品には、以下3つがある。
- 特定保健用食品:健康の維持や促進に役立つ機能
- 栄養機能食品:特定の栄養素を一定の基準量を含む食品
- 機能性表示食品:健康の維持や促進に役立つ食品
特定保健用食品はトクホとも呼ばれ、特定の保健用途が表示されている。国から食品の有効性や安全性が認められており、人が両手を広げた許可マークが付いているのが特徴だ。
一方で栄養機能食品は、ビタミンやミネラルといった特定の栄養補給を目的とした食品で、国への届出や審査は必要ない。その代わり、栄養成分ごとに一日の摂取目安量に含まれる栄養成分の基準値が決められているほか、機能性だけでなく注意喚起などの表示も必要になる。
機能性表示食品の届出
機能性表食品を販売するには、国の定めるルールに基づき、食品の安全性と機能性に関する科学的根拠といった必要事項を消費者庁へ届け出る必要がある。
<提出が求められる資料>
- 当該食品に関する表示の内容
- 食品関連事業者に関する基本情報
- 安全性および機能性の根拠に関する情報
- 生産・製造および品質管理に関する情報
- 健康被害の情報収集体制
- その他必要な事項
事業者は自らの責任において、科学的根拠をもとに適正な表示を行なう必要があるものの、審査などは行なわれない。なお、消費者庁により機能性表示食品と認められている商品は、消費者庁のホームページで検索することが可能だ。
機能性表示食品とトクホの違い
3種類の保健機能食品のうち、特定保健用食品と機能性表示食品は内容が類似しており、違いがよくわからないという人も少なくない。ここでは、特定保健用食品と機能性表示食品の違いについて見ていこう。
審査の有無
先述したように、機能性表示食品は、食品の安全性や機能性に関する科学的根拠などの届出が必要だが、行政による審査は不要だ。届出の内容が消費者庁に認められれば、その商品を機能性表示食品と名乗ることができる。
これに対して特定保健用食品は、食品の安全性や機能性に関する科学的根拠の届出以外に、消費者庁を含んだ複数機関による審査も必要になる。届出番号の受理と審査通過の両方がそろって初めて、特定保健用食品と名乗れるのだ。
食品数の違い
機能性表示食品は、消費者が自分に合った商品を選択できるように作られた制度であるため、さまざまな機能性と商品の種類が存在する。
一方で、特定保健用食品は開発コストが大きくなりやすいほか、審査に通過するまでの時間も長い。このことから、特定保健用食品を販売できる企業は大企業などの一部に限られ、機能性表示食品と比較すると、機能性の種類や商品の数が圧倒的に少ない。
マークの違い
機能性表示食品に消費者庁許可のマークはなく、商品に「機能性表示食品」という文字だけが表示されている。そのため、パッケージの文字や表示と混合しやすく、アピール力は高くない。
一方、特定保健用食品には消費者庁許可のマークがある。円形の中心に両手を掲げた人のマークが描かれており、見れば一目で特定保健用食品だとわかる。
機能性表示食品のメリット
機能性表示食品のメリットは、大きく分けて以下の3つが挙げられる。
科学的根拠に基づく機能が期待できる
機能性表示食品に表示されている機能は、商品を販売する事業者の責任において科学的根拠が証明されているため、信頼性が高いといえる。また、審査がないとはいえ、その機能性は消費者庁にも認められており、一定の効果が期待できる。
商品選定時に判断基準として使用できる
機能性表示食品には食品の機能性や効果が表示されているため、その食品が何に良いのか、どんな人に向いているのかを簡単に知ることができる。これにより、複数の商品のなかから、自分にとって最適な商品を選ぶことが可能だ。また、購入してから「この商品ではなかった」と後悔することも少ないだろう。
商品によってさまざまな働きがある
機能性表示食品は、体にさまざまな働きをする食品が多数登録されているため、自分の体調や期待する効果によって商品を選べるメリットがある。
<機能性表示食品に期待できる効果の例>
- ストレス・疲労感の緩和
- 関節の痛みを和らげる
- 体脂肪を減らす
- 血糖値の上昇を抑える
- 血圧の上昇を抑える
- 腸内環境を整える など
その他、機能性表示食品は消費者庁の公式サイトから調べることも可能だ。食べたい食品や届出番号で検索することもできるため、自分に適した商品を探す際にも便利である。
機能性表示食品のデメリット
機能性表示食品を摂取するうえでは、以下のデメリットも理解しておく必要がある。
実際の機能を行政がチェックしていない
表示されている機能性や安全性は、販売事業者の調査資料によるものであり、行政が審査しているわけではない。したがって、販売事業者にとっては手軽さがあるが、利用者にとっては確証が持てないというデメリットがある。機能性表示食品を選ぶ際は、食品の機能性や効果のほかに、販売事業者の信頼性も確認することが大切だ。
登録するために費用や時間がかかる
トクホほどではないにせよ、機能性表示食品として登録するには、それなりの時間と費用がかかる。
<機能性表示食品の登録の流れ>
- 機能性表示食品としての対象可否を確認
- 安全性の確認
- 衛生管理体制・生産体制の構築
- 健康被害防止と被害拡大の防止対策
- 安全性試験の実施
- 機能性や効果に関する論文の提出
- パッケージへ表記
- 販売する60日前までに消費者庁へ届け出る
このうち、安全性試験の実施には1年ほど、提出資料の作成には1ヵ月以上を要するのが一般的だ。さらに、安全性に関わる対策や安全性試験には費用もかかるため、中小企業にとっては少しハードルが高い制度といえる。
機能性表示食品を摂っていれば健康になるわけではない
機能性表示食品の効果には個人差があり、人によってはまったく効果を実感できない可能性もある。また、多く摂取すれば効果が高まるというものでもない。機能性表示食品を過剰摂取すれば逆に健康被害が発生する可能性もあるため、摂取目安量を順守することが重要である。
健康を維持・増進するには、バランスの取れた食事や適度な運動、十分な休息を心がけたうえで、機能性表示食品を上手に取り入れるのがポイントだ。
まとめ
機能性表示食品は、健康維持や増進に効果的な食品の機能性を表示できる制度で、その機能性は販売事業者における科学的根拠に基づいている。
一見トクホと混合しやすいが、機能性表示食品は行政による審査が必要なく、販売事業者は手軽に販売することが可能だ。それ故、機能性表示食品はトクホに比べて機能性の種類や商品の数が多く、利用者も自分に合った商品を選びやすい。
ただし、摂取による効果には個人差があるほか、過剰摂取すれば逆に健康被害が発生する可能性もある。機能性表示食品を摂っていれば健康になるわけでもないため、バランスの取れた食事や適度な運動、十分な休息を心がけたうえで、機能性表示食品を正しく摂取することが効果的だ。