クロスマーチャンダイジングとは?クロスマーチャンダイジングのメリット・デメリットを徹底解説!
クロスマーチャンダイジングとは
クロスマーチャンダイジング(以下:クロスMD)とは、カテゴリは異なるが関連性のある商品を組み合わせて売場に陳列することである。関連する商品をまとめて陳列することで、後述のクロスMDの例に挙げるように、顧客に連鎖的に「気づかせる」「思い起こさせる」「考えつかせる」という意識を呼び起こす効果が期待できるためである。これにより、来店顧客の購買意欲を活性化、売上増大を図るのが目的である。カテゴリーの異なる商品の組合せにスタンダードな方法は無く、店舗独自の意向やメーカーとの連携で決定されるなど様々である。
なおクロスMDとは、マーチャンダイジングにおけるひとつの手法である。マーチャンダイジングとは、「小売業における販売活動全般をカバーする商品化計画」を指し、クロスMD以外にも、ビジュアルMDやライフスタイルMDなどが提唱されている。
クロスマーチャンダイジングメリット
顧客側、店舗側それぞれにクロスMDのメリットがある。
- 顧客側のメリットとしては、食品では店舗が提案する関連商品で献立のバリエーションの「気づき」や、様々な食材や調味料の買い忘れなどが防止できる。また食品と調理器具や日用品、耐久消費財との組み合わせの提案が家事の効率化や空きスペースの有効な使い方、ゆとりの生活などの発想を促すこともある。なお、幅広い関連商品が揃っている場合には、ひとつの売り場で買い物の用が足りることもあり、利便性の高さも顧客側のメリットのひとつになる。
- 店舗側のメリットは、関連商品の陳列で顧客の購入意欲を高め購入商品点数が増加、客単価のアップが期待できる点である。なおクロスMDのメリットを実現するためには、標準的な商品カテゴリーにクロスさせる「気づき」などを誘導するキーワードが必要となる。キーワードの選定と関連商品の選出には、ID-POSデータの活用、バスケット分析と呼ばれる顧客の購入パターンなどの分析が重要なポイントとなる。
クロスマーチャンダイジングデメリット
- 顧客側のデメリットとしては、多様な商品の陳列を見て、想定外の買い物をするケースがある。また、専門の売場を回らずに陳列された関連商品を購入するなど、顧客自身の意向から外れた買物になるリスクもある。
- 店舗側のデメリットは、クロスMDの売り場作りに費やした労力と時間に見合う結果が得られない場合である。自店舗の標準カテゴリーを超えた商品を組み合わせ、その棚割りや欠品防止のチェック、在庫確認など、手間と労働時間がロスとなるためである。
クロスマーチャンダイジングの事例
ここでは、クロスMDを代表する例と、これまでに実施されている例を紹介する。またクロスMDの推進で注目されているデータについても紹介する。
クロスMDの代表例
過去の代表例としては、1980年代に米国のジョンソン・アンド・ジョンソンが行ったベビーローションのクロスMDが挙げられる。ベビー用品売場に置いていたベビーローションを、「大人のあなたにも優しい」というPOPを付けてスキンケアコーナーに陳列するという販売施策を同社が小売店に提案、売上を6倍に伸ばしたという例である。
国内でも1990年代にカゴメ(愛知県)が精肉店と連携した「鶏肉のトマト煮用ソース」で、メーカーと小売事業者とのクロスMDの例が見られる。最近では雪国まいたけ(新潟県)とユニ・チャーム(東京都)の「きのこと鮮度保持のためのキッチンシート」、コカ・コーラ(東京都)とハウス食品(大阪府)が「ソフトドリンクとカレー」など、店頭でメーカー同士がコラボするクロスMDの例も見られるようになっている。
小売事業者も独自にクロスMDを展開している。2010年の段階でも「カット野菜とドレッシング、加工肉を加えた商品陳列」、「料理やカレーと一緒に調理器具も陳列」などの例が流通業界の専門誌でベストプラクティスとして紹介されるなど、幅広いクロスMDの展開が紹介されている。さらに今日では食品関連商品に限らず、家電量販店でもグルメや美容などの生活テーマに関連する商品の売場が設けられており、幅広い業態でクロスMDの展開が見られる。
クロスマーチャンダイジングの検証データ
クロスMDの効果を測定する手段に、同時併買分析などと呼ばれるバスケット分析がある。小売店で、顧客がバスケット(買物カゴ)に入れて一緒に購入した商品の組み合わせを分析する手法である。一般に来店目的となる商品を軸として、サブカテゴリーとなる関連商品で分析軸を構成する。なおバスケット分析のためには、顧客情報が紐づけられたID-POSデータの整備も必要となる。なおポイントカードを買物履歴として紐づけ、クロスMDの検証データとしての活用も進められている、