ビジュアルマーチャンダイジングとは?メリット・デメリットを徹底解説!
ビジュアルマーチャンダイジングとは
ビジュアルマーチャンダイジング(VMD)とは、商品の良さを視覚的(ビジュアル)に訴求する商品戦略(マーチャンダイジング)のことである。
マーケティングもマーチャンダイジングも「商品を売る」ための戦略を意味するが、マーケティングがサプライチェーン全体を包含するのに対し、マーチャンダイジングは購買調達・商品開発・量産化・広告宣伝といった上流は含まない。とくに販売現場そのものにフォーカスを絞ったのがインストアマーチャンダイジング(ISM)であり、VMDはISMの一手法として位置づけられる。
ビジュアル的な商品の訴求は昔から行われてきたが、マーケティング理論としての発祥は1944年、アメリカの販促コンサルタントがVMDの概念を初めて提唱したことに始まる。その後同国では1970年代に、商品に頼った購買意欲喚起に限界を感じた流通チャネルが店舗を舞台にした商品訴求に注力するようになった。その頃、VMDの考え方が日本にも入ってきた。
一方で、VMDの実践は意外と地道な作業の積み重ねだ。たとえばアパレルでは、多くの店舗がハンガーによる陳列に神経を使っている。具体的な事例を以下に紹介する。
- 120cmのハンガーラックに吊るす洋服は24着
- 手前から奥に向けてS→M→Lのサイズ順に並べる
- 手前には薄い色を、奥には濃い色を
- 売り込みたい商品を中心に訴求する
- アイテム別・シンメトリー・カラー分類など陳列のルールを守る
ビジュアルマーチャンダイジングのメリット
VMDのメリットは、来店率・購買率の向上および接客の効率化にある。
「店内のディスプレイが素敵で、ついつい立ち寄ってしまった」「マネキンが着ているコートがどうしても欲しくなって衝動買いした」――。こうした経験はないだろうか。前者がVMDによる来店率向上であり、後者が購買率向上だ。同時にディスプレイのビジュアル訴求は、販売スタッフの接客を助けてくれる。
アパレルにせよ家電にせよ、街中には店舗があふれている。消費者に選んでもらうため、どの店もしのぎを削っている。そこで注目されるのが、VMDである。「人は見た目で9割判断する」との意見もある。ビジュアルは消費者行動を大きく左右するのだ。
ビジュアルマーチャンダイジングのデメリット
VMDのデメリットは、「ビジュアル一本鎗」にある。VMDは商品戦略の一手法にすぎず、サンプル配布・チラシといった販促活動、総合的な商品計画(在庫・仕入・フェース替え・ボーナスリベート)と有機的に組み合わさってこそ初めて機能する。
ところが、ついついビジュアル性の高いディスプレイばかりに目がいき周りが見えなくなる…店舗の現場ではこうした過ちを起こしがちだ。結果的に、本来の目的である「お客様が立ち寄りやすい、かつ、商品を選びやすい売り場づくり」からも乖離してしまうというわけだ。
ビジュアルマーチャンダイジングの実例
VMDの実例として、良品計画(東京都)が同社の旗艦店として2020年12月にオープンした「無印良品 東京有明」をとりあげる。
住友不動産(東京都)が運営するショッピングモール「有明ガーデン」の3フロアを占有する店舗の中で、VMDの視点から注目されるのが2階の「住空間」フロアだ。細長い空間という不利なレイアウトにもかかわらず、来店客は知らず知らずのうちに奥まで誘導されてしまう。什器の配置にも最新の注意を払ったVMDのなせる業だ。そして迷い込むように奥まで入っていくと、急に視界が開けて明るい空間が飛び込んでくる。巧みな演出には驚かされる。