海外リスク不安も日本経済に自信 賀詞交歓会で経営トップ
[東京 7日 ロイター] – 日本経団連など経済3団体や業界団体は7日、都内で賀詞交歓会を開催した。世界経済の減速懸念を受けて、株式市場が乱高下する波乱の幕開けとなった2019年。会場では海外リスクに言及しつつも、日本経済については楽観的な見方を示す経営者が目立った。
主な発言は以下の通り。
●日本経団連 中西宏明会長(日立製作所<6501.T>会長)
米中関係は多少なりとも(自社の経営に)効いてきたという実感はあるが、それが大きく景気の波を外すような形には至っていない。ファンダメンタルズは、まだ健全というのが基本的な見方だ。最近の投資に関して言うと、デジタル化の投資はどんどん増えているので、悲観的には見ていない。
ドル/円は、100円から110円の間を行ったりきたりするのではないか。日経平均は最低限2万円をキープするような相場観で運営したい。
●経済同友会 小林喜光代表幹事(三菱ケミカルホールディングス<4188.T>会長)
2月末までの米中の関係性が、一番のポイントになるのではないか。そう簡単に明るい兆しが見えるとは思えないが、一定の方向性が見えれば、株式市場は安定してくるだろう。為替も米利上げがなくなることで円高傾向は当面は続くかもしれないが、景気そのものは米中の亀裂が生じるリスクがない限りは、急に悪くなることはないだろう。巡航速度でゆったりと0.7─0.8%の成長率で進んでいくとみている。
ドル/円は104円を一部つけたので、1─2月あたりは104円をつける可能性がある。今年のレンジは、希望的観測で104円から115円。日経平均は1万8500円から2万3000円だが、2月から3月は波乱要因がある。
●日本・東京商工会議所 三村明夫会頭
よほどのことが起こらない限り、景気は潜在成長率並み、日本は1%、米国は3%前後でいくのではないか。ただ、今年の色々なリスク要因がある。米中摩擦や英国の欧州連合(EU)離脱、米議会の混迷など、影響が少なくするような手段をわれわれは一切持っていない。すべてのものを外部要因として受け止めざるを得ない。ここに何とも言えない不安がある。
相場については今年はよくわからないので、あまり言いたくないが、日経平均は希望的に2万円から2万2000円の間。
●東芝<6502.T> 車谷暢昭会長
新しい計画を作り、リスクの高い資産、振れの大きい資産は売却した。資本は厚くなり、実質無借金だ。高い収益力をつけて中長期の成長を目指す。バランスシートをみれば、劇的に変わった。海外の厳しい投資家と話しているが、計画についてはポジティブな意見をもらっているので、やりきることが大事。足元をしっかり固める。
米中問題はどこまで行くのか分からないので、両政府の良識に期待したい。大きな混乱になったら懸念はあるが、そういうことにはならないのではないか。世界経済に責任を持っている両国だ。
●パナソニック<6752.T> 長栄周作会長
米中貿易摩擦については、パナソニックも中国で作って米国で売るものがあり、生産移管などで既に影響が出ている。米中は二大市場なので、その二つがうまくやってくれないといけない。
中国市場は長期的には、米国を抜いて大きな市場になる。勝負がつくのも早いし、やりやすい市場だ。ただ米中問題がマイナスに働く。年前半は米中問題、後半は消費増税の影響が出るだろう。
●日本郵政<6178.T> 長門正貢社長
米中貿易摩擦は同盟国の日本でも日米繊維交渉で20年、鉄鋼で15年、自動車で10年かかっているのに、安保問題、覇権問題にもなっており、ものすごく長引くだろう。関税になるので物価は上がる。国際経済は貿易を通じて下押し圧力が増す。ボラティリティも上がる。
ただ、日米の問題も何とかこなしたように、現状を凍結して握り合う協定はあり得ると思う。どこかでお互いに手を握り合うことをしない限り、下押し圧力となる。ここ数年間で1番のリスクだと思う。
日本企業は海外投資ポートフォーリオをどうするか。米中だけでいいという時代は終わった。あちこちにヘッジしておかないと危ない。世界中にポートを作ることが大事。
●みずほフィナンシャルグループ<8411.T> 坂井辰史社長
基本的には世界経済は、減速リスクに向かうが、日本経済は堅調に推移すると思う。足元の貿易摩擦や金融市場も動きが荒く、時々曇るような要因を充分に想定しないといけない。ベースは堅調なので、基本は晴れ、時々曇りというのが今の見方だ。
消費増税については、色々な施策が施されているので、全体としては影響は限定的だろう。
中国の景気減速はじわじわと影響が出てくると思う。中国政府もかなり景気てこ入れを意識した策を打っているので、どの程度効果があるか留意しないといけないが、そのあたりが日本経済の下押し要因にはなる。
経済全体では、減速リスクにさらされる中、景気回復の持続性が試される年となる。
●三井住友フィナンシャルグループ<8316.T> 国部毅社長
日経平均は、1万8000円から24000円を予想している。今の株価は、下げ過ぎている。日本の企業の収益状況が、あまり低下しなければ株価は戻っていく。株価は右肩上がりとすれば年末2万4000円。ドル/円は105円から115円で、年末は110円くらいか。
中国経済が減速したら日本企業はその影響を受ける。大きく捉えると米中の貿易摩擦、覇権争いがどこまで深刻化するかということをよく経営者としてみていかないといけない。生産の適正配置を考える必要がある。
●野村ホールディングス<8604.T> 永井浩二社長
今年も基本的に緩やかな拡大が続くと思うが、読めない外的要因に注意を払う必要がある。米中の通商摩擦、覇権争いが続くだろう。英国のEU離脱問題にも注意が必要だ。
米国と中国は2大マーケットなのでああいう形で争うと全体は当然シュリンクする。全体にとってはネガティブ。ただ、国内の経済状態は悪くない。天気自体は基本「晴れ」だと思う。
相場は足もとは投資家のセンチメントに振り回される。リスクオンとオフの繰り返しは当分続くだろう。怖いというのは全然解決されていないので(振れの大きい状況が)当分続く可能性が高い。ただ、市場参加者のセンチメント落ち着けは、特に日本の株価は異常な水準なので、正常な状態に戻る。
●NTT<9432.T> 澤田純社長
日本経済は不確実性が高い。天気に例えるなら、暴風雨が来るかもしれない。ただ、基本は良い天気。足もとはいいが、台風が来るかもしれないということ。日本経済は基盤はいいが、海外要因で変わる可能性がある。
米中の影響については直接的な影響は少ないが、間接的な影響はあるかもしれない。米中は3月までモラトリアムになっているが、交渉がうまくいかずに関税が倍になり中国経済がリセッションした場合に投資がしぼんでしまうリスクがある。本当に決裂する状況になれば、一回リセッションして作り直すというとんでもない台風になる。
消費増税の影響については、場合よっては通信利用を抑えようという人がいるかもしれないが、前回の増税時は目に見えてわかるほど収入が減ったということはない。むしろ間接的に景気がしぼむことで、IT投資がされずに収入が減るということはあるかもしれない。
(企業ニュースチーム 編集:田巻一彦)