ウィズコロナ時代のショッピングセンター経営26 SCと百貨店に違いはあるのか?低迷する2業態の今後とは
百貨店が定期借家契約を採用し、取引先と建物賃貸借契約を取り交わすことを”百貨店のショッピングセンター(SC)化”と呼ぶ。しかし、SCも百貨店も経済活動においてはあまり変わることは無く、むしろ同じものであることを今号では指摘した上、コロナ禍において消費市場が低迷する中、今後の商業施設の考え方について提議したい。

SCも百貨店も顧客から見たら同じもの
今、SCも百貨店も大差ないブランドやテナントが並ぶ。異なることと言えば地下の食料品、いわゆるデパ地下か1階のコスメかラグジュアリーくらいである。
それも近年では定期借家契約を活用した百貨店企業も登場し、SCにおいても食料品の強化やラグジュアリーテナントの導入を進めておりその差は縮んでいる。
顧客にとってもCoachのバッグはCoachのバックであり、それが消化仕入れ契約なのか、建物賃貸借契約なのか、どのような契約形態で運営されているかなど特に問題にすることではない。
消化仕入れは手数料分しか売上計上されない時代
百貨店の中で大半を占める消化仕入れの制度は日本特有の商慣行である。国際会計基準(IFRS)に照らすとメーカーから百貨店は販売委託を受けたものと解されることから、既にIFRSの早期適用を行い、企業の規模感を表すトップライン(売上高や、IFRSの場合は売上収益)が激減した百貨店企業もあった。
そして今春、日本国内での会計制度における収益認識の見直しにより消化仕入れ契約での”売上”は顧客への販売額では無く、販売額と仕入れ原価の差額を手数料収入と認識することになった。この見直しは、これまで”売上”にこだわってきた百貨店経営を根本から見直すことになる。
では、SC事業や百貨店業の収益性評価はどのようにして行うのか。SCでいう売上高はテナント売上高の集計でありSCの収入では無い。百貨店での売上高も前述の通り、消化仕入れが大半を占めることから顧客への販売額は収入では無く、そもそも売上高は収益性を示す指標にはならない。
確かに高度経済成長下においては顧客への販売額(売上高)を増加させることが利益の拡大につながった時代はあったが今はそう簡単では無い。
もちろん、利益やキャッシュフローも効果を計測する指標の1つであるが、どれだけの資産を使って生み出された果実であるのか、これでは分からない。
結果、投入した資源がどれだけ効率的に活用されているのか判断する指標であるROA(総資産利益率、分子の利益には経常利益などが使われる)が事業の収益性評価に収斂される。
前の記事
ウィズコロナ時代のショッピングセンター経営25 オンラインネイティブが創る次世代SCとゲームチェンジ

ウィズコロナ時代のショッピングセンター経営27 ポストコロナがもたらす「バトンタッチ」とは
商業施設の価値を再定義する「西山貴仁のショッピングセンター経営」 の新着記事
-
2025/12/01
第128回 少子高齢化時代におけるショッピングセンターのターゲット設定 -
2025/11/18
第127回 ショッピングセンターが「フロア収支」を採用しない理由 -
2025/10/31
第126回 SC運営の成否を決める顧客の滞在時間 “装置産業”としての役割とは何か -
2025/10/17
第125回 「駅ビル」が抱えるリスクを百貨店の歴史から考える -
2025/10/03
第124回 相次ぐフードホールの開業 日本で成功するためのカギとは -
2025/09/19
第123回 「営業時間統一」という常識打破に向け、SCに求められる対応とは
この連載の一覧はこちら [128記事]
関連記事ランキング
- 2025-11-07長野県内最大「イオンモール須坂」が開業! イオンスタイルでは非食品の“専門店化”に注力
- 2025-11-18第127回 ショッピングセンターが「フロア収支」を採用しない理由
- 2025-11-06「街ナカぐらし」に寄り添う!「イオンモール仙台上杉」の館づくりを解剖
- 2025-10-21実例に見る「危ない商業施設」の見分け方
- 2025-11-13知られざる四国の激戦地・愛媛県西条市 トライアル進出で環境急変か
- 2025-11-13イズミ、ハローズ、ダイレックス……中四国最大都市・広島市の視察の仕方
- 2025-11-09新潟県初の「そよら」がオープン イオンリテールの県下での存在感さらに大きく
- 2025-12-01第128回 少子高齢化時代におけるショッピングセンターのターゲット設定
- 2025-10-03「ニュウマン高輪」がデザインする100年先の生活価値とは
- 2013-12-02年間2ケタ以上のNSCを開業!地域密着の商業集積めざす=イオンタウン 大門 淳 社長



