年末年始に考えたい 現場ではすでに浸透している! BYOD推進には情報漏洩対策が必要不可欠
新型コロナウイルスの流行による大きな環境変化を受け、店舗サービス業は非接触対応や業務効率化による収益力の強化などを目的に、デジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組む動きが活発化しています。企業内にもDX推進室などの部署が誕生し、DXへの取り組みが速度を増してきているようです。本記事では、店舗内のデジタル化を進めるうえで注目されている「BYOD(Bring Your Own Device)」について解説します。
店舗内では“勝手BYOD”が当たり前という現実
BYODとは、従業員が所有する個人のスマートフォンなどのデジタルツールを業務に活用すること。企業はデジタルデバイスへの投資を抑制できるほか、スピーディに情報を伝達することができるなどのメリットがあります。
しかし、BYODを活用するにあたり、セキュリティ対策が不十分だと情報漏洩につながるおそれがあります。そのため、安全性を担保しながら利便性を高めることが必要です。日本ではBYOD活用がそれほど進んでいないと考えられていますが、実態はどうでしょうか。具体的に、BYODの現状とこれからの対応を見ていきましょう。
図1のグラフによると、店舗で働く従業員の半数以上が個人のスマホやアプリを業務にも使っていると回答しています。LINEの個人アカウントなどを使用して、従業員でグループをつくり、そこで業務情報のやりとりや、シフトの調整などをしているのです。すでに多くの店舗サービス業ではこのような“勝手BYOD”がなし崩し的に普及しつつあり、本部からは情報のコントロールが利かず、前述した「情報漏洩リスク」という観点では、非常に危険な状態にあるのです。
紙での情報伝達は不便すぎる
本部は店舗業務への個人スマホやアプリの使用を禁止している場合が多いにもかかわらず、どうしてここまで“勝手BYOD”が浸透しているのでしょうか。
その主な理由の1つが、アナログ的情報伝達手段の効率の悪さです。現在の店舗内の情報伝達の多くは、図2のように、本部からの指示が店舗のPCに届き、店長はその指示をほかの従業員へ紙などのアナログな手段で伝えています。メールの添付ファイルを開き、印刷して、貼り出し、指示を実行し、報告する。こういったアナログの情報伝達には、リアルタイム性に欠け、時間コストがかかり、効率が悪くなるといったデメリットが存在します。
店長も従業員も仕事以外の日常では当たり前にスマホで情報共有しているのに、仕事となると店舗内の情報共有手段が古い場合が多く、圧倒的に不便なのです。よって、ふだんと同じような利便性を追求すると、禁止とわかっていながらも“勝手BYOD”を選択してしまいます。本部もこの状況を認識していますが、ほかに効率的な代替手段を提供するのが難しいため、黙認していることが多いのです。