配膳ロボにセルフレジ…すかいらーくHD、接客の魅力残す絶妙DXの進め方
すかいらーくHD(東京都/金谷実社長)は、5月に発表した第一四半期決算で前年比64億円増の黒字達成を報告。併せて、中期事業計画(最終年度2027年12月期)で国内300店舗の大量出店計画を示した。コロナ前は200店舗の大量閉店を強いられたが、ポストコロナで満を持しての反転攻勢だ。とはいえ、人手不足は飲食業界の慢性的課題。そうした中で同社が活路を見出すのは、テクノロジーを最大限に活用した、人との“ハイブリッド接客”による超効率化だ。
接客の魅力を削がないDXのさじ加減
コロナ禍、来店客が激減し、閉店も相次いだ飲食業界。厳しい状況下でも、「コロナ禍はいつか終わる」と耐え抜く動機はあった。だが、人手不足だけは本質的な課題として、重くのしかかっていた。
長時間労働、低賃金、クレーム対応、教育体制、少子高齢化など、理由はさまざまだが、接客業は人が根幹。それだけに、人手の課題は難易度と比例して解決の優先度が高い。例えば事務作業なら、AIなどに大幅シフトすることで、人の代替もできる。だが、接客は単純にAIでよしとはいかない。
業界でも先進的にデジタル・トランスフォーメーション(DX)化を推進する同社のテクノロジー活用戦略は、その意味で接客のコア部分をぎりぎりまで残しつつ、その魅力を最大化する絶妙のさじ加減で着々と進められている。
最初に配膳ロボ導入に着手したあたりが、それを示している。注文した料理を届けることは、人であれロボットであれ、顧客満足度に大きな影響はない。いかに早く、間違いなくテーブルに運ばれるかが、最大の肝だからだ。
実際の導入効果も測定している。それによるとランチタイムのピーク時の回転率は2%アップ、従業員の歩行数は42%、片付け完了時間は35%がそれぞれ減少し、フロアにおける生産性の向上に十分といえる貢献をしている。