グロサリーショップ2023で語られた「リテールメディア」の最先端とは

文:平山 幸江 (在米リテールストラテジスト)
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Grocery Shop(グロサリーショップ)2023でとくに注目されたのが「リテールメディア」、そして「生成AI」だ。小売業のビジネスを変えるとの期待は大きく、それだけに熱のこもった議論が展開された。今までにないスピードでビジネスが進化する一方、課題も出てきているが、それも米小売業界は走りながら解決しようとしている。本稿ではこの2つのテーマについてリテールメディアをメーンにセッションの内容を解説していきたい。

リテールメディアは「2.0」に

 インサイダーインテリジェンス社プリンシパルアナリストのアンドリュー・リップスマン氏は、「リテールメディアはオンライン検索広告が主だった1.0の時代から、今はオンライン・店舗両方でビデオ、ストリーミングTV、店内広告等幅広いフォーマットを活用する2.0に移行した。やがて、顧客の購買行動、カスタマージャーニーにおいてライフタイムバリュー(LTV:顧客生涯価値)をどう最大化していくかという3.0に移る」と述べた。現在、メーカーなどのマーケターに利用されているリテールメディアネットワークの上位は、アマゾン(Amazon.com)とウォルマート(Walmart)が各82%(複数回答、以下同)、次いでターゲット(Target)が65%、クローガー(Kroger)が61%、インスタカート(Instacart)が53%となっている。アマゾン以外では圧倒的に食品スーパー(SM)など食品を取り扱う小売業が強く、広告主は消費財メーカー(CPG)が多いようだ。

CPGブランドが利用しているリテールメディア、トップ13
CPGブランドが利用しているリテールメディア、トップ13。上位はスーパーマーケットやCPG商品販売小売企業が占めている。
出典:ANA社データよりインサイダーインテリジェンス社が作図。講演中に投影された資料を筆者が撮影

 とはいえリテールメディアで売上を上げるのは簡単なことではない。今年3月に開催されたShop Talk2023でウォルマートの担当者が指摘したように、「既存のウェブサイトと店舗資産を使って広告枠を売ればよい、といった単純なビジネスではない」からだ。ウォルマート担当者と一緒に登壇したモンデリーズなどのCPG側からは「投資に見合う結果が必要」という声が多く上がっていた。

 このセッションから半年が経ち、リテールメディアをめぐる状況はより進化している。今回のリテールメディアのセッションでは「標準化(standardization)」と「漸進性(incrementality)」をキーワードにより具体的な課題が議論された。

重要なのは標準化と「漸進性」の構築

 モンデレーズインターナショナル社デジタルコマースヘッドのジー・チェン氏は「リテールメディアは小売企業によってそれぞれ異なるので、まず

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平山 幸江 / 在米リテールストラテジスト

慶應義塾大学、ニューヨーク州立ファッション工科大学卒業。西武百貨店勤務後1993年より渡米。伊藤忠プロミネントUSA(Jクルージャパン)、フェリシモニューヨーク、イオンUSAリサーチ&アナリシスディレクターを経て2010年より独立。日系企業の米国小売事業コンサルテーションおよび米国小売業最新トレンドと近未来の小売業をテーマに、ダイヤモンド・リテイルメディア、日経MJ他に執筆、講演会多数。

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