アマゾンの新サービスに世界が衝撃!ブロックチェーンが小売業界に革命を起こす
前回の記事では、米国においてスターバックスやホールフーズ・マーケットといった大手企業が暗号資産(仮想通貨)による決済サービスを導入することで、決済市場に大きな変化がもたらされることを紹介した。暗号資産の根幹技術であるブロックチェーンを活用することで、決済だけではないさまざまな小売店向けサービスも登場している。
アマゾンのブロックチェーンサービスが誕生!
米アマゾンは4月30日、独自開発したブロックチェーン・プラットフォームを、クライアント企業が活用できるサービス「アマゾン・マネージド・ブロックチェーン(AMB)」として提供することを発表した。
同サービスは「アマゾン・ウェブ・サービス(Amazon Web Services:AWS)」が提供するもので、ユーザーとなる企業はAWSが開発した分散台帳を活用することで、安全で安価、そして透明性の高いデータベースを構築できる。
ここで、ブロックチェーンについておさらいしておこう。
ブロックチェーンとは、インターネットに接続された「不特定多数のコンピュータ」が互いのデータをチェックしながら暗号化されたデータ通信を行う。噛み砕いて言えば、ハッキングされにくく、透明性の高いデータを共有できるようになる仕組みだ。インターネット上の複数のコンピュータが同一の記録を持つため、「情報の改ざん」を防ぐとともに「大きな自社サーバーを所有し、エンジニアを雇って管理する」といったような設備投資や人的コストも必要ない。
そのためブロックチェーンは、通貨はもちろん、透明性と安全性が要求される商品の取引記録にも適している。具体的には、産地偽装の防止や、サプライチェーンの最適化による効率的な商品の納入管理などへの活用が期待されている。
AMBでは、クライアントの要望に合わせ、オープンソースのブロックチェーンシステムである「ハイパーレジャー・ファブリック(Hyperledger Fabric)」や「イーサリアム(Ethereum)」のどちらかを活用したブロックチェーン・ネットワークを提供しており、すでにネスレやフィリップスといった大手メーカーで導入が進んでいるという。
米小売業界で広がる「ブロックチェーンによる商品追跡」
このようなブロックチェーンサービスを展開するのは、アマゾンだけではない。
IT大手のIBMはすでに500社以上の企業に対し、自社ネットワークを活用したブロックチェーン・サービス提供している。米食品スーパー大手のアルバートソンズ(Albertsons)は今年4月、IBMが提供する食品追跡に特化したブロックチェーン・プラットフォーム「フードトラスト(Food Trust)」活用し、食品の産地から販売店までの流通経路をブロックチェーンで管理することを発表した。同サービスは、すでに米小売大手のウォルマート(Walmart)が活用している。
また、米マイクロソフトのクラウドコンピューティングプラットフォーム「マイクロソフト・アジュール(Microsoft Asure)」でもブロックチェーンが提供されており、証券取引所のナスダック(NASDAQ)などで活用されている。
IT企業が提供するブロックチェーンのメリットは?
ブロックチェーン技術は、暗号資産の元祖である「ビットコイン」の根幹技術であることは周知の事実だ。
ビットコインは、取引記録が次々に生成され、それを巻き戻して改変することができない仕組みとなっている。つまり、ブロックチェーンで記録をしておけば、生産元で記録した情報を後から改ざんすることができないのだ。
世界的にニーズが高まるブロックチェーンだが、ブロックチェーン分野のエンジニア人材は世界的にも非常に希少であり、自社開発は極めて困難である。こうした背景から、今後もエンタープライズ企業を対象としたブロックチェーン・サービスは、IT巨大企業が主導しながら拡大し続けていくだろう。