マッキンゼーの戦略提言、日本の食品小売業が進出すべき国はここだ!

解説・文:船石 智彦(McKinsey and Company パートナー)、櫻井 康彰(McKinsey and Company パートナー)、李 婧怡(mckinsey-and-company-アソシエイトパートナー)
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「ポスト・コロナ」のニューノーマルが定着するなかで、小売業界では巣ごもり需要等による業績回復が見られる一方、人口減少に伴う中長期の消費停滞・減速は免れない。全3回の本連載では、マッキンゼーが考える日本の小売業の中長期的な成長のカギを解説。初回となる今回では、ベトナムを中心に東南アジアへの進出について論じる。

文化的親和性が高い東南アジア

 日本の人口は2030年までに1.2億人を下回り、40年には1.1億人程度になることが予想される。構造上でも、生産年齢人口の割合は現時点の60%程度から40年には54%程度まで落ち込む見込みである。

 そうしたなか、マッキンゼーはスーパーマーケット(SM)やディスカウントストアなど日本の小売企業にとっての中長期的な成長機会として「①東南アジアを中心とした海外進出」「②デジタルを活用した新しい事業モデルの創造」「③環境・サステナブルを起点としたバリューチェーンの革新」という3つの「成長テーマ」に着目している。本稿では①について解説していく。

ベトナム ホーチミン
マッキンゼーが考える日本の小売業の中長期的な成長のカギを解説。初回となる今回では、ベトナムを中心に東南アジアへの進出について論じる。(i-stock/holgs)

 グローバル小売市場は19兆ドルで、過去5年間に年率5%で成長し続けている。なかでも、日本とは文化的親和性が高く、安定成長を続ける一定規模のある市場として当社が注目しているのが東南アジア市場だ。東南アジア全体のECを含む小売市場規模は5700億ドルだが、インドネシア、ベトナム、タイ、フィリピン、マレーシアの5カ国でその90%を占めており(図表❶)、攻めやすい市場となっている。

図表❶東南アジア各国の店舗形態別市場規模(2021年)

 日本に対するイメージ調査では、「日本食」や「日本発ブランド」に対して「健康的」で「高品質」といったポジティブな印象を持たれている。2000年代の「日本食ブーム」もあり、最近はイオン(千葉県/吉田昭夫社長)、セブン&アイ・ホールディングス(東京都/井阪隆一社長)、パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(同/吉田直樹社長)などの日本のプレーヤーが市場に参入し、ロピア(神奈川県/髙木勇輔代表)の海外店舗開業も間近となっているが、アジア他国の企業の勢いも強く、東南アジアにおける日本小売のプレゼンスはまだ高いとはいいきれない。

ベトナムの成長性にチャンスあり

 東南アジアのなかでもとくに面白い市場がベトナムである。タイ・マレーシアが成熟市場になりつつあるなか、次の成長市場は

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