コラム:ソフトバンク孫社長、「時価総額安すぎる」は本当か

2019/02/12 11:00
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Liam Proud 

 

2月6日、ソフトバンクグループの孫正義社長(社長)は、計算が合わないことを嫌う。東京での記者会見で2018年10月撮影(2019年 ロイター/Issei Kato)

 

[ロンドン 6日 ロイター BREAKINGVIEWS] – ソフトバンクグループの孫正義社長は、計算が合わないことを嫌う。6日行われた同社の4─12月期連結決算発表で、孫社長は約1時間近くをかけて、自社株の時価総額が「安すぎると心から思っている」と不満を漏らした。

 

ソフトバンクグループの時価総額は約9兆円だが、これは孫社長が適正と考える額よりも12兆円も低いという。

 

だが、孫社長が尊敬する物理学者のアルバート・アインシュタインが言うように、1000億ドル近い規模を誇るビジョンファンドのような「巨大なもの」は、運動の法則をねじ曲げるのだ。

 

61歳の孫社長は、自身の時価総額算定方法を、アインシュタインが発見した相対性理論の有名な公式「E=MC2」と同様に、「複雑な現実を説明するシンプルな方程式」だと述べ、以下のように説明した。

 

まず、中国の電子商取引大手アリババ・グループや、複数の携帯電話会社、その他多数の子会社、そしてビジョンファンドについて、自社が保有している株式価値を合算する。そこから導かれる企業価値は約25兆円となる。そこから純有利子負債の4兆円を差し引けば、「フェアな」時価総額は21兆円になる、と主張する。

 

だがソフトバンクグループの実際の時価総額は、それを60%程度下回る。孫社長は会見で、この差は説明がつかないと述べ、そのギャップを埋めるために上限6000億円で自社株買いを行うと発表した。

 

だが孫社長の数式には修正すべき部分がある。

 

まず、ソフトバンクグループの保有株式の総額から2割差し引くべきだ。ヤフーなどの企業に対する同社の持ち株比率は大きすぎて、株価を暴落させずに売却することはできない。

 

次に、保有するアリババの株式価値から、さらに3割引くべきだ。バーンスタインが試算した、アリババ株を売却した場合にかかる課税額を反映させたものだ。

 

すると、ソフトバンクグループのフェアな時価総額は、14兆円程度となる。

 

孫社長の方程式では、ソフトバンクがビジョンファンドに保有する運用報酬分も含めた250億ドル相当(約2兆7000億円)の持ち分や、バランスシートに記載された約550億ドルのキャッシュ資産が、額面通りにカウントされている。

 

だが投資家は一般的に、キャッシュや投機的投資にはディスカウントを用いている。試しに40%のヘアカットをしてみると、ソフトバンクグループの時価総額は11兆円程度になる。(米共用オフィス運営ウィワークのような赤字企業に、目の玉の飛び出るようなバリュエーションで投資することに孫社長が情熱を傾けていることを考えれば、40%は妥当な数字だろう。)

 

この場合、実際の時価総額とのギャップは2兆円弱程度となる。

 

市場の時価総額が、その会社の純資産価値より16%程度ディスカウントされるのは、巨大複合企業ではよくあることだ。ソフトバンクのような巨大企業であれば、なおさらだ。

 

アインシュタインが言うように、重力は質量に比例するのだ。

 

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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