基幹システムのMicrosoft「Azure」
移行で効率化を実現
映像機器商社のエヌジーシーが、双日システムズの提案で基幹システム運用を効率化

2015/07/23 18:15

パブリッククラウド「Microsoft Azure」上で稼働する、日本の流通業に最適な純国産ERP「GRANDIT」。エンドユーザ様にご登壇頂き事例を紹介。

 企業にとってITシステムの肥大化、維持管理コストの増大は深刻な悩みだ。流通業でもオムニチャネル化などで最新のIT装備へ移行するには、大きな投資が必要になる。クラウド利用はITシステムのコスト削減には有効と言われてきた。しかし実際にはプライベートクラウドを利用した際の運用費用や、パッケージ利用でもあくまでもカスタマイズを実施するならコストはオンプレミスと大きく変わらないという事例が多い。映像システムインテグレーション、コンピューターグラフィックスソリューションを提供するエヌジーシーでは、システム改革と生産性向上を目的に純国産ERPである「GRNDIT」を使った基幹システムを、マイクロソフトの「Azure」に移行する手段を選択した。

 

パブリッククラウド「Azure」への移行でコスト削減

 

双日システムズ株式会社
エンタープライズソリューション
本部カスタマーソリューション部
GRANDIT事業開発課 課長

中野 勇 氏

 クラウドを利用する企業が増えている。しかしプライベートクラウドの場合、費用削減効果は小さく、その一方で運用管理の容易さが評価されていることが、導入企業の拡大につながっている。費用対効果に関しては、パブリッククラウドへのシステム移行で運用コストを削減するというケースが多い。しかし移行するシステムは、直接企業の機密情報に関わらないシステムというのが一般的。パブリッククラウドのセキュリティ面での信頼性の評価が低い結果だ。マイクロソフトの「Azure」はセキュリティの高さやコストの優位性、そして日本でも世界基準のデータセンターを活用することで導入事例が増えている。そこで「Azure」に基幹ERPを移行するという企業も出てきた。双日システムズでは純国産ERPである「GRANDIT」の「Azure」移行を提案する。

 「GRANDIT」は2004年GRANDITコンソーシアムが設立され、05年にVer1.1がリリースされた、「日本発の完全Web-ERP」を標榜するERPソフト。双日システムズは、そのコンソーシアム設立メンバーの1社だ。その後、「GRANDIT」はバージョンアップを繰り返し、ASPやプライベートクラウドにも対応、14年10月にGRANDIT2.2をリリースしパブリッククラウドを利用し、しかもカスタマイズに対応している点がポイント。

 

 「パッケージ標準では自社の業務フローに対応できない、とする顧客は多い」と中野氏も日本企業に特有の需要を認めたうえで、「それがクラウドERPの障害になる」とみている。そうした要望に応えたのが「GRANDIT on Microsoft Azure」である。ASPやSaaSでは実現できなかったカスタマイズも、IaaSやPaaSならば不可能ではない。それを「Azure」で実現したわけだ。

 

 中野氏は「今は“クラウドファースト”の時代。GRANDITの豊富な導入実績をベースに、クラウドを指向する顧客に積極的に提案していく」と語る。Windowsプラットフォーム上のアプリケーションで業務システムが動いている企業は多い。「.NET Framework」や「SQL Server」などのMicrosoft基盤でできているGRANDITは「Azure」との親和性が高くシステム移行を容易にする。もちろん他のプラットフォームでも利用は可能だ。そうした基盤の優位性に加えて、「GRANDIT」ならばカスタマイズに対応できるため、開発コストや運用コストの削減が可能になる。

 

そうした提案を検討し、実際に「Azure」上に基幹ERPを移行したのがエヌジーシーである。

 

双日システムズと検討を重ねる中で心理的な不安が解消

 

株式会社エヌジーシー
コーポレートサービス部

松永 みき 氏

 エヌジーシーでは、Windows Server 2003のサポート終了が迫る中で、新システムの移行として3パターンを検討した。ひとつはWindows Server 2012を導入しGRANDITも新バージョンに更新する方法。しかしこの場合は初期費用がかさむ上に、専任のシステム担当者を置くことも考えなければならない。しかも開発期間も長くなる。

 

 二つ目はデータセンターにGRANDITを預けてしまう方法。専任のシステム担当者は不要だが、移行費用とその後の運用費用が大きくなるという点で断念。三つ目は思い切ってパブリッククラウドにGRANDITを移行してしまう方法だ。「最初はセキュリティ面での不安がなかったわけではない。データセンターの見学を行ない、実際に確認することでそうした不安は解消した。また、ActiveDirectoryとの連携が可能なことなどから、生産性向上につながるシステム構築が可能になった」とエヌジーシー コーポレートサービス部の松永みき氏はAzureを選択したメリットを強調する。エヌジーシーでは、すでにOffice 365も導入しており、そうした既存インフラとの連携の良さもポイントになった。

 

 パブリッククラウドへのERP移行を決めたものの、パブリッククラウドであることで社内に疑問視する声も出た。「そうした不安を取り除くのが、移行プロジェクトで最も苦労した点」と松永氏は言い切る。社内では、これまではオンプレミスの基幹システムにデータがあり、「機密性の高いデータが、すぐそばにあるという安心感」(松永氏)があったのに対して、クラウド利用で“本当に大丈夫なのか?”という疑問や、クラウド利用が「本当にワークスタイルの変革につながるのか」という不安があったという。

 

今後、ERP以外のシステムの「Azure」移行を進める

 

 Azureはパブリッククラウドサービスに過ぎない。そのため「Azureを効果的に使うために基盤をしっかり作り上げることが必要であり、今回はそのために考えて工夫したことが確実に役立っている」(松永氏)。日本マイクロソフトやパートナー企業、双日システムズなどの協力もあり社内の説得も可能になった。

 

 その一方でWindows Server 2003のサポート終了が迫って来る。多くの企業でクラウド利用に移行する際には、サーバーの一部から順次テスト的に移行するのが普通だが、エヌジーシーの場合、基幹システムを一気に移行しなければならなかった。「後から聞いたら、日本で初めて、といわれて、その時にたじろいだ」と松永氏は笑いながら話す。それだけではない。「移行中にデータが消えたという事件があった。これは稼働中のオンプレミスの基幹システムと、テスト稼働していたAzure上のGRANDITの切り替えを忘れていただけで、それだけ移行中のシステムでも違和感なく使えたという証明にもなった」という。

 

 今後、他のシステムに関しても順次Azureに移行する計画というエヌジーシーの松永氏。Azureを選択したポイントとして、セキュリティ面の強さ、BCP面、使った分だけの従量課金でコスト削減につながること、Windowsのアプリケーションがそのまま利用できる環境が整備されていることなどをあげる。「苦労もしたけど、少しの勇気があれば移行は成功する」と笑いながら話しており、クラウド活用が確実に生産性向上に役立っているとしている。

 

 流通業でも業務の効率化を、ITシステムに負っている部分が大きい。しかもITベースのマーケティング手法が、将来的に競争力アップをサポートしていくという認識は一般的。そうなればさらにITシステムの導入、運用コストは拡大していく。新規開発余力を蓄え、タイムリーにリリースしていくためには、既存システムのコスト削減は不可欠になる。その点で、双日システムズが提案する「GRANDIT on Microsoft Azure」は、エヌジーシーの導入ケースで効果を実証していると言えるだろう。

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